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広場恐怖症とはどんな病気!?症状、原因、治療法について

皆さんは開放的な空間は好きですか。

広い公園や開けた場所などは気持ちが開放的になり、ひとつの癒し効果になりますよね。ところがあまりに開放的な空間ゆえ、かえって逃げ場がないように感じ、強い恐怖感を抱いてしまい自ずとそのような場所を回避してしまう人も中にはいます。

今回紹介する広場恐怖症はまさに開放的な空間に恐怖を感じ、さらに人々が集まる場所やすぐにその場から逃れない空間においてパニック発作といった症状が表れるのが特徴です。

広場恐怖症はパニック障害と似た症状を表すことから同類として捉えることもありますが、パニック障害の存在が認められなくても診断されることがあり、『DSM-5』では広場恐怖症はひとつの独立した精神疾患として認識されています。

今回は広場恐怖症に焦点を当てて、広場恐怖症の原因、症状、治療法などについて分かりやすく述べていこうと思います。

広場恐怖症とは何か

広場恐怖症の歴史は思いのほか古く、文献を辿ると1872年にWestphalが、広場に出ると強い恐怖に襲われ外出が困難であるという男性の症例報告が最初ではないかと言われています。もちろんこの報告は海外の事例であり、日本において広場恐怖症のような症状が確認されるのはもっと後になってからです。

日本人は文化的に見ても「広がり」に対する脆さが指摘されています。公共の場で自分がどのように振舞っていいのか、どのような行動を取っていいのか分からず戸惑ってしまい、その結果、終始周りと同じような行動を取る傾向にあります。

そのためなのか、開けた場所や公の場に対する恐怖心が海外の人よりも強く、広場恐怖症自体が当たり前の存在であったり、文化に根付いた文化結合症候群(文化依存症候群)として捉えられたりして、広場恐怖症自体が心の病気だと認知されるまでに時間がかかったのではないかと推測されます。

ところで広場恐怖症というのは字のごとく開けた場所や空間、誰もが集う公共の場所に対する恐怖を指し示しますが、それだけではなく「その場から逃れられない」という拘束性や閉鎖性も含んでいます。

広場恐怖症について『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』を見ると以下のような基準を持って診断されます。

  1. 以下の5つの状況のうち2つ(またはそれ以上)について著明な恐怖または不安がある
    • 公共交通機関の利用(例:自動車,バス,列車,船,航空機)
    • 広い場所にいること(例:駐車場,市場,橋)
    • 囲まれた場所にいること(例:店,劇場,映画館)
    • 列に並ぶまたは群衆の中にいること
    • 家の外に1人でいること
  2. パニック様の症状や,その他耐えられない,または当惑するような症状(例:高齢者の転倒の恐れ,失禁の恐れ)が起きたときに,脱出は困難で,援助が得られないかもしれないと考え,これらの状況を恐怖し,回避する
  3. 広場恐怖症の状況は,ほとんどいつも恐怖や不安を誘発する
  4. 広場恐怖症の状況は,積極的に避けられ,仲間の存在を必要とし,強い恐怖または不安を伴って耐えられている
  5. その恐怖または不安は,広場恐怖症の状況によってもたらされる現実的な危険やその社会文化的背景に釣り合わない
  6. その恐怖,不安,または回避は持続的で,典型的には6カ月以上続く
  7. その恐怖,不安,または回避は,臨床的に意味のある苦痛,または社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き起こす
  8. 他の医学的疾患(例:炎症性腸疾患,パーキンソン病)が存在すれば,恐怖,不安,または回避が明らかに過剰である
  9. その恐怖,不安,または回避は,他の精神疾患の症状ではうまく説明できない―例えば,症状は,「限局性恐怖症,状況」に限定されない,(社交不安症の場合のように)社交的状況のみに関連するものではない,(強迫症の場合のように)強迫観念,(醜形恐怖症のように)想像上の身体的外見の欠陥や欠点,(心的外傷後ストレス障害の場合のように)外傷的な出来事を想起させるもの,(分離不安症の場合のように)分離の恐怖,だけに関連するものではない

-American Psychiatric Association(高橋三郎、大野裕、染矢俊幸ほか訳)『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』医学書院より引用-

広場恐怖症は広い場所だけではなく囲まれた場所、行列や群衆の中にいることも恐怖や不安を感じる対象になります。

また広場恐怖症は、炎症性腸疾患やパーキンソン病といった身体的疾患、加齢を伴う身体の変化によって生じる症状の結果によって引き起こされることもありますが、『精神疾患・メンタルヘルスガイドブック: DSM-5から生活指針まで』によれば、広場恐怖症の多くが35歳までに発症し、性別で見ると男性より女性の方が発症しやすいことが確認されています。

パニック障害と広場恐怖症の関係性について

パニック障害と広場恐怖症には強い関係性があります。

パニック障害が重症化してしまうと、ほとんどの交通機関をひとりで利用することができなくなったり、近所のスーパーやコンビニなどに行く際にも付き添いなしでは外出できなかったりします。ではどうしてこのようになってしまうのかと言うと「予期不安」が深く関係しているからです。

予期不安というのは、「パニック発作で死ぬかもしれない」という恐怖感情に支配されることで、「再び同じような体験をしてしまうのではないか」という不安に駆られる状態を指し示します。

予期不安が高まることで、当事者は「特定の場所や状況」を回避するような行動を取りますが、この特定の場所や状況というのが広場恐怖症の症状を引き起こす広い場所や囲まれた場所、行列や群衆の中なのです。もっともパニック障害では、広い空間や囲まれた場所に対する恐怖を「広場恐怖」と呼ぶことが多いですが、広場恐怖症も広場恐怖も本質的な部分では全く同じです。

ただしパニック障害を患っているからといって必ずしも広場恐怖が表れるわけではなく、また広場恐怖症に関してもパニック障害の存在が認められなくても診断されることがあります。『DSM-5』では広場恐怖症とパニック障害がそれぞれ独立した精神疾患として扱われていることから、一応、両者は別々の精神疾患として成立していると言えます。

ところで当サイト内では○○恐怖と表記されているものもあれば、○○恐怖症と表記されているものもあります。

この使い分けとしては、精神疾患の分類を取り扱う『DSM-5』などを参考に、ひとつの精神疾患の下位に属しサブタイプのような扱いができる場合には○○恐怖とし、独立した精神疾患として扱われている場合には○○恐怖症として区別しています。

しかし言葉の表記が微妙に違っていても本質的には同じであり、治療法も大きく変わるものでないので同様に扱っても問題ないと思います。

広場恐怖症になってしまう原因

広場恐怖症の原因は未だ知られていません。

ただ直接的な原因は分かっていないものの、「複数の要因が関与しているのではないか」というのが現代医学での共通認識です。

広場恐怖症の発症を高めてしまうリスク要因として、生まれつき不安や恐怖を感じやすい気質のうえに、心配性や悲観的な考え方が身についてしまっている状態、過保護や過干渉、虐待などの生まれ育った環境、親の死といった逆境体験などが考えられます。

また広場恐怖症は遺伝的な関係性が強く、広場恐怖症の人たちの約6割の親が同様の症状を持っていることが示されています。この理由については、親の行動様式が子どもにも反映されていたり、気質自体が似ていたりするからです。

広場恐怖症は遺伝的要因や環境的要因などが相互に関係し合い、脳の部位や神経伝達物質に影響を及ぼし症状が表れていると言えるでしょう。

また広場恐怖症はパニック障害との結びつきが強いので、パニック障害が悪化していく流れで広場恐怖症の症状を呈することがあり、パニック障害そのものというのも見過ごすことはできません。

パニック障害のリスク要因には仕事や勉強、家事などによる肉体的ストレスや精神的ストレスの蓄積が存在しています。見えないストレスの蓄積が予期せず突然パニック発作を引き起こしてしまう可能性がありますので注意しなければいけません。

広場恐怖症の主な治療法

広場恐怖症は不安障害のひとつなので、治療法の候補としてはお薬によるものと心理療法が考えられます。

具体的に見ていくと、お薬によるものではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)といった抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬などを使用して不安症状を抑えていく方法が挙げられます。

どのお薬を服用するかは本人の症状や体質、そして年齢などが考慮されます。当事者側が知っておくべき留意点としては、SSRIやSNRIの誤った使い方によって、さらなる不安感や焦燥感、衝動性、錯乱状態、消化器系の症状などを呈することがあります。またベンゾジアゼピン系抗不安薬では長期使用による依存性の危険も指摘されています。

お薬を服用する場合は自己判断による減量や中断は避け、必ず主治医と相談のうえ最適な服用を心掛ける必要があります。

一方、心理療法では認知行動療法や曝露療法(エクスポージャー法)などが候補になります。

認知行動療法については心理療法の中でも主流になってきているので、その言葉を一度は耳にした人も多いと思いますが、認知行動療法というのは、モノの捉え方や考え方の歪みを直していき、現実的で柔軟な捉え方を身につけて不安を上手にコントロールすることを目的とします。

曝露療法(エクスポージャー法)は認知行動療法の治療プログラムの一環となっていることもありますが、単独で用いられることもあります。

曝露療法(エクスポージャー法)では、あえて自分の恐怖や不安となっているものに身を置き、慣れさせて成功体験を獲得することを目的とします。小さな不安から徐々に大きな不安へと段階的に不安を感じる状況を作り上げて不安に対する免疫力をつけていく段階的曝露、不安に対する曝露は一度だけでは効果が期待できないので何度も同じ状況を繰り返す反復曝露、この2つのタイプの曝露をベースに行っていきます。

また広場恐怖症がパニック障害の延長戦上にあることから、身体がパニック発作を起こしやすい状況になっているのであれば、症状そのものに目を向けることよりも、身体のコンディションを把握することが治療を円滑に進めるうえで大切になってくると言えます。

もちろんどの治療法にも一長一短はあります。また当事者一人ひとりの背景が違うため、適宜治療を組み合わせて自分に適した治療が良い結果を生むでしょう。

広場恐怖症はパニック障害と併発することもあり、「広場恐怖症」という言葉は知らなくても症状については知っている人が多いのではないかと思います。

広い場所だけではなく囲まれた空間、行列や群衆の中にいることに対して著しい恐怖や不安を感じ、通学や通勤に支障が出たり、スーパーやコンビニでの買い物が困難になったりと、当たり前の日常生活が送れなくなってしまうのが広場恐怖症の厄介なところだと言えます。

また広場恐怖症はパニック障害同様、比較的女性に多く見られる精神疾患でもあります。そのため美容院に行けない、ショッピングに行けない、映画館や劇場に行けないというのは生活の質を著しく低下させる要因にもなり、ひいては抑うつ状態やうつ病に繋がる危険性があります。

広場恐怖症の症状が改善していく過程では、周囲の支援や援助というのが必要不可欠になります。とは言っても、現状では周囲の理解不足というのが往々にしてあります。

心の病気はその特性上分かりづらいものがありますが、当事者の抱えている苦しみや辛さに真摯に寄り添える人が増えることを切に願います。

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