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不安障害にもつながる愛着障害について

愛着障害(アタッチメント障害)という言葉を聞いたことがありますか。

愛着障害の前に、「愛着」という言葉についてですが、心理学や教育学の分野で用いられる用語で、子どもがある特定の人に接近を求め、その人と一緒にいることで安心した感じを持つことを指し示します。

特に子どもは1歳半ぐらいまでに母親に対して強い愛着を示し、適切な愛着を築くことでその子どもが大人になったときに、健全な社会行動ができるようになります。

しかし全ての子どもが母親との間で適切な愛着を築くことができないケースもあります。そのような場合、今回のテーマである愛着障害に陥ってしまっている可能性が考えられます。

愛着理論とは

愛着障害を知る前に、愛着理論について説明したいと思います。

愛着理論とは、Bowlbyが提唱した理論で、乳幼児と母親の間にある愛着は子どもの情緒発達に影響を及ぼし、また子どもにとっては生存のための機能を果たすものであり、そのような愛着システムを動物行動学や発達心理学、システム理論などの領域からの知見を踏まえて理論付けたものとして有名です。

子どもがいる親にとっては馴染みの光景だと思いますが、乳幼児は不安を感じた時に母親に対してすごく接近を求める行動を取ります。泣いたり、近寄ってきたりと、何かしらのシグナルを発します。

このような行動が起きる背景には、安心、安全、保護を得ようとするからであり、そしてそれを確かなものにするために母親とのスキンシップを強く求めます。

また乳幼児は生後1年ほどで、愛着を抱く対象者を階層別に分類し、自身の恐怖や不安の程度、対象者の利用可能性を考えて、特定の順序に従って対象者を求めるようになります。

そのため序列としては母親が最も高いところに位置していますが、母親が身近にいなかったときには、その次の序列である父親に情緒的な安心や安全を求めて行動を起こします。

乳幼児は母子間の相互作用や交流を通じて、母親との関わり方、それに伴う情緒の表し方のモデルを形成しますが、このモデルは「内的作業モデル」と呼ばれており、発達に伴って安定性を増し、ひとりの人間としての社会的な行動や対人関係の土台となるものになります。

愛着理論を提唱したBowlbyは、愛着システムと対極的な位置にある探索システムにも着目しています。

乳幼児が母親から離れて探求活動できるのは、母親が情緒的な基地の役割を果たしているからであり、母子間の安定した愛着が、子どもが主体性を持って活動するエネルギーになっているのです。Bowlbyの愛着理論を発展させたAinsworthは、このような母親の情緒的な基地のことを「安全基地」という言葉で表現しており、さらなる愛着理論を展開しました。

そのため、母子間に適切な愛着が形成されていない場合は、子どもの怪我や母親自身の見捨てられ不安から、母親が子どもの探索活動に対して抑制するような姿勢をとってしまったり、子ども側もまた不安な感情に支配されてしまったりするのです。

しっかり形成された愛着は、どんなに遠くに離れていても、どんなに時間的に遮られていても、変わらずに維持されます。それだけ愛着というのは軽視することができないものなのです。

子どもの愛着パターンについて

Bowlbyの愛着理論を発展させたAinsworthはストレンジ・シチュエーション法によって、子どもの愛着(アタッチメント)の質を分類しています。

ストレンジ・シチュエーション法というのは、1歳から1歳半までの子ども対象に、プレイルームにおいて母親と子ども、そして見知らぬ人が参加して、途中で母親が抜け子どもと見知らぬ人が一緒になったり、その後母親と子どもが再会したりと、このような一連の流れを繰り返し行い、子どもの反応を観察するやり方です。

この実験方法によって、子どもの愛着の質は安定型、回避型、アンビバレント型(両価型)、未組織の4つに分類され、未組織については後に、Main&Solomonによって未組織・無方向型と表現されました。

安定型を示した子どもは、明確なアタッチメント行動を見せ、母親と分離した時には、母親を呼び、追いかけ、探し、再会した時には幸せそうな反応を示し、スキンシップを求め、まもなくして落ち着きを取り戻します。

回避型を示した子どもは、安定型とは対照的に明確なアタッチメント行動を見せることなく、母親と分離しても、母親を呼び止めるために泣いたりすることもなければ、追いかけたりすることもなく、遊び続けます。また再会しても、母親を避けやすく、スキンシップを求めることもありません。

アンビバレント型(両価型)を示した子どもは、母親と分離した後に最も強い苦痛を表し、激しく泣くというのが特徴的です。再会しても、子どもを落ち着かせることが難しく、母親とのスキンシップを求めつつも、叩いたり蹴ったりと攻撃的な姿勢を取ります。

未組織・無方向型を示した子どもは、先述したいずれのパターンで見られる行動を示さず、安定型のように母親に近づいていくそぶりを見せながらも途中で方向転換して母親から遠ざかったり、短い時間で行動が定まらずころころと変わったり、観察者が見ても不可解な行動パターンを示します。

未組織・無方向型についてはその後、さらなる研究が進んだことにより、他の3つのタイプとの類似点が色々と確認され、表記の違いは見られるものの、結果的には子どもの愛着パターンとして「安定型」、「不安定-回避型」、「不安定-アンビバレント型」、「未組織型」の4つのパターンが確認されています。

  • 安定型…明確なアタッチメント行動を示し、母親にスキンシップを求める
  • 不安定-回避型…アタッチメント行動を示さず、母親にスキンシップを求めない
  • 不安定-アンビバレント型…母親にスキンシップを求めるものの、攻撃的な態度や姿勢を示す
  • 未組織型…行動が定まらず、不可解な行動を示す

大人の愛着スタイルについて

幼少期の愛着スタイルというのは、まだ完全に出来上がったものではありません。

相手によって愛着のパターンが異なることも多く、成長過程で養育者が変わったり、同じ養育者でも接し方が変わったりすることで容易に変化します。

そのため幼少期の愛着の傾向というのは、固定化させていないという意味で愛着スタイルとは呼ばずに、ひとつの愛着パターンとして、大人とは一線を画すよう区別させています。

そして年齢を重ね、母親や父親、祖父母など、様々な愛着を抱く対象者との交流を積み重ねて、その人の愛着パターンが固定化され、次第に愛着スタイルとして確立されていきます。

大人の愛着スタイルは、その人自身の幼少期の頃に親からどのような接し方をされたのか、親との関係はどうだったのか、などの過去の愛着の質を思い出させる、成人愛着面接法によって調べることができます。

愛着の形成と発達には養育的な要因が大きく影響しているものの、一方で生まれつきの気質といった遺伝的な要因も考慮する必要があります。ただ愛着の世代間伝達というのがこれまでの研究によって支持されており、成人愛着面接法の有効性も同様に支持されています。

この方法によって大人の愛着スタイルは、「安定・自律型」、「軽視型」、「とらわれ型」、「未解決型」に分類することができます。

また愛着の世代間伝達により、「安定・自律型」の親は「安定型」の子どもを、「軽視型」の親は「不安定-回避型」の子どもを、「とらわれ型」の親は「不安定-アンビバレント型」の子どもを、「未解決型」の親は「未組織型」の子どもを、それぞれ持ちやすい傾向にあります。

大人の愛着スタイルについてもう少し詳しく見ていくと、「安定・自律型」の人は、幼少期の頃の親との愛着に関して肯定的な体験を持っており、適切に愛情を受けたことを認識しています。

また仮に子どもの頃に愛着のある人との死別や別れを経験していても、自己内省的にそのような出来事を思い出せることは、新たな愛着を感じる人との間での質の良い関係を獲得している可能性が高く、このようなタイプもまた「安定・自律型」として考えられています。

「軽視型」の人は、幼少期の頃の親との愛着に関してほとんど記憶がなく、さらに人生におけるアタッチメント行動の重要性をほとんど認めていないのが特徴です。

「とらわれ型」の人は、幼少期の頃の親との愛着に関して所々、一貫している部分もあれば矛盾する部分もあり、色々なものが複雑に絡み合っているのがこのタイプです。子どもの頃に抱いていた親に対する印象も、良い印象とあまり良くない印象が混在しており、どっちつかずの語りが多く見受けられます。

「未解決型」の人は、自身の語りや思考、感情経験の描写が破綻している傾向にあり、心理的に何か大きなトラブルを抱えているのが特徴です。まとまりのない、無方向な内容になりつつあるものの、その内容のなかには過去に極端な喪失があったり、ネグレクトや虐待といったトラウマを抱えていたりと、未だ心理的に解決されていない問題を他の人よりも多く保持している傾向にあります。

  • 安定・自律型…幼少期における親との愛着が良好
  • 軽視型…幼少期における親との愛着が希薄もしくはほとんどない
  • とらわれ型…幼少期における親との愛着に関してどっちつかず
  • 未解決型…幼少期における心理的な問題を未だに解決できていない状態

愛着障害とは何か

母子間の安定した愛着が、子どもが健全に発達する過程においても、将来子どもが大人になった時に主体性を持って活動するためにも必要不可欠であることは言うまでもありません。

しかし時として、母親をはじめとした養育者から虐待を受けたりネグレクトされたりして、本来最も愛着を感じたい人に対して愛着すら感じられないような環境で育つことも少なからずあります。

そのような愛着形成に必要な心理的かつ情緒的な相互作用のある環境を「母性的養育環境」と言いますが、Bowlbyは母性的養育環境が失われている状況を「母性剥奪(マターナル・デプリベーション)」と呼び、その後、愛着という観点から、愛着の不形成、愛着の崩壊を問題視しました。

つまり狭義的な意味での「愛着障害」とは、親からの虐待やネグレクトなどにより、特定の人に対する愛着が損なわれた状態、あるいは愛着欲しさに見境もなく誰にでも愛着するような行動を取る状態を指し示します。

『DSM-5』では、対人交流が制限されポジティブな感情が乏しいケースは「反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害」、見慣れない人に対するためらいもなく、過度に馴れ馴れしい振る舞いをしているケースは「脱抑制型対人交流障害」という診断名が設けられています。

ただ狭義的な愛着障害を抱える子どもの愛着パターンは「未組織型」を持つタイプですが、このタイプではない「不安定-回避型」や「不安定-アンビバレント型」のタイプを持つ人もまた、人間関係や対人関係において回避的な姿勢や不安な態度を見せることもあり、実際に学術的にも対人不安という感情について愛着理論から理解することの重要性が指摘されています(Vertue,2003)。

こうした愛着という観点から、現代の人が抱えている諸問題と結びつけて考えるという意味で、精神科医である岡田尊司先生は「愛着スペクトラム障害」を提起しており、こちらはもう少し広い意味で考えられています。

狭義的な愛着障害と広義的な愛着障害があり混乱してしまうとは思いますが、子どもの愛着パターンそしてそれに対応する大人の愛着スタイルを理解すると、捉えやすくなるのではないかと感じます。

愛着障害が生まれる背景にあるもの

愛着障害が起きてしまう背景には養育環境と生まれ持った気質が大きく関係していますが、これまで蓄積された研究から、概ね養育者を含む養育環境の影響が大きいことが確認されています。

これまでも虐待やネグレクトが愛着の不形成や崩壊に繋がることを指摘しましたが、明らかな虐待やネグレクトがなくても、愛着の対象者となる親が不在になりがちになってしまうことで、愛着の形成に問題が生じてしまうことがあります。

愛着の形成には臨界期と呼ばれる時期が存在しており、この時期に特に母親と分離してしまうことで、後々、愛着障害に発展していく可能性が高いといわれています。

臨界期は生後半年から1歳半の期間と言われていますが、生まれてまもない時期から愛着の形成は始まっているという研究結果もあります。

つまりおおむね1歳半までの期間に母子の間に適切な愛着を形成することが望ましく、できない場合は不安定な愛着パターンや回避的な愛着パターンになりやすいということがいえます。

さらに臨界期を過ぎても油断はできません。子どもが2~3歳ぐらいの時期には、母親から離れることに対する不安が高まる時期でもあり、この時期に無理やり母親から離されると分離不安が強く残ってしまう可能性があります。

臨界期を過ぎても、愛着形成から分離不安までの一連の流れの中で、子どもとしっかり向き合う姿勢が大切なのではないかと思います。

愛着障害の改善法・克服法について

愛着障害の根底には、愛着の結びつきの脆さや深い傷があります。そのような結びつきの脆さや傷を修正していくことが、症状の改善、ひいては克服に繋がっていきます。

そうしたなかで、親との関係性を取り戻すというのが大きなポイントになってきます。

ただ、本来であれば親と一緒になって改善や克服を目指すのが好ましいものの、現実的には、愛着障害を抱えた人の親もまた不安定な愛着を抱えていることも多く、子どもに対して否定的な態度を取るような親では、傷を修正するどころかどんどん深まり、回復も遠のいてしまいます。

なので、親の代わりとなる人の存在が欠かせません。

ではどのような人が親の代わりとなる人なのでしょうか。

ここで重要になってくるのは、「安全基地」としての役割を果たせる人なのかどうかということです。生存するための親代わりではなく社会的な親代わりになってくれる存在の人です。

安全基地というのは、Ainsworthが表現した、母親の情緒的な基地を指し示しますが、もう少し具体的に説明すると、不安や恐怖を感じた時にすぐに頼ることができて、守ってもらえるような居場所でもあり、また外の世界を探索する時にはいつでも帰れるような基地的な役割を果たします。

良い安全基地になりうる人というのは、だいたい以下のような特徴を持っています。

  • 相手の主体性を尊重
  • 束縛や拘束をしない
  • 安全基地となる人自身の心が安定
  • 相手を傷つけるようなことをしない
  • 相手の状況を察する感受性が高い
  • 相手に要求に応える応答性が高い
  • とにかく何でも話せる間柄である

愛着障害の改善・克服には、良い安全基地になりうる人の存在というのは重要で、場合によっては親子以上の役割を果たしてくれます。

ただもともと不安定な愛着を抱いてしまっている人が良い安全基地になる人を探すというのは一苦労だと思います。そのような場合は、愛着障害に詳しい専門家に委ねるのもひとつの手です。

また愛着障害を抱えている人は、愛着スタイルからも分かるとおり、未解決の愛着問題を抱えていることが往々にしてあります。その問題を解決することで、さらなる回復の兆しが見えてきます。

愛着に関わる問題としては、たびたび登場していますが幼少期の頃の親からの虐待経験、親が再婚相手に愛情が移ってしまい育児放棄になったこと、親が自分よりも他のきょうだいばかりに愛情を注いでいたこと、親と死別してしまったことなどが挙げられますが、問題を未解決のまま大人になってしまうと、愛着障害として、対人関係や人間関係に暗い影を落とすようなことになってしまいます。

このような問題を解決するためには、本来であれば満たされるはずであった愛情を充足してあげて、幼少期の頃の不足を取り戻すことが大切になってきます。

例えば、幼い頃にできなかった、甘えたり、我がままを言ったりするという行動は愛情を満たす行動になります。回復の最初の一歩としてこうした行動は有意義なものになっていきます。

そして今に至るまで背負ってきた重い荷物を降ろし、過去との和解を果たして自立を目指していくことで徐々にではありますが、改善していくことが期待できます。

愛着という概念の歴史を紐解けば、今回登場したBowlbyやAinsworthだけではなく、Harlowのアカゲザルの用いた動物実験など、複数の領域において愛着の大切さ、安全基地の必要性について明確に示されています。

幼少期の頃の母親と子どもの愛着形成というのは、その子どもが大人になり、どんなに遠くに離れていても、どんなに時間的に遮られていても維持し続けるもので、愛着の絆というのはそう簡単に破られるものではありません。

しかし逆に、愛着形成が不完全だった場合は、自分以外の人間に対して信頼することができなくなったり、一方で過剰すぎるほど依存してしまったり、安定した人間関係や対人関係が築けなくなってしまうことが容易に起こってしまいます。

不安障害やパーソナリティ障害の背景には愛着に問題がある可能性も指摘されており、愛着が様々な精神疾患に影響を及ぼしている可能性もあり、広い意味で愛着障害を軽視してはいけないでしょう。

ネットやテレビ、新聞などを通じて、幼い子どもが親からの虐待や育児放棄の被害に遭うという痛ましい事件を見る機会もあると思います。また10代の子どもたちが居場所を求めた結果、事件に巻き込まれてしまうというケースも目立つようになり、その背景には愛着というものも少なからず関わっているのではないでしょうか。

便利な社会になるにつれて、どこか人間らしさが失われつつあるように思えてしまうのは、もしかしたら愛着の結びつきが弱くなっている可能性があると思います。今一度、愛着について考える機会が必要なのかもしれません。

参考文献


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