不安障害を主なテーマに、その症状や原因、治療法などについて、当事者や家族だけではなく、不安障害そのものを知らない人に向けて正しい認識や理解を目指して情報を発信しています。

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不安障害の人に多い非定型うつ病について

近年のストレス過多な時代に伴い、うつ病を患う人も年々増え続けています。

世界保健機構(WHO)の将来予想によれば、2030年には大うつ病が虚血性心疾患や脳血管障害を抑えて、健康的な生活に支障をきたす疾患の第1位にランクインされており、今もそうですが、今後も私たちの生活を脅かす存在になっていくと思われます。

世間的に見てもうつ病に対する認知度が年々高まっていますが、その一方で、従来の古典的なうつ病(大うつ病性障害)とはまた違ったタイプのうつ病も登場しており、従来型と一線を画して「新型うつ病」や「現代型うつ病」という言葉で、様々なメディアで報じられています。

ただ注意しなければいけないのが、精神医学的には「新型うつ病」や「現代型うつ病」というのはある種のゴッタ煮に状態で、様々なうつ病の特徴が一緒くたにされてしまい、そこには健康的なレベルの怠惰や逃避行動までもが含まれているのです。

また病名としても「新型うつ病」や「現代型うつ病」という病名は存在せず、言葉だけが独り歩きしている状態でもあり、「うつ病に対する誤った知識を助長しかねない」と警鐘を鳴らしている医師や専門家も数多くいらっしゃいます。

現状、新型うつ病と呼ばれるタイプには「非定型うつ病」、「ディスチミア親和型うつ病」、「未熟型うつ病」、「逃避型うつ病」などが確認されていますが、その中でも「非定型うつ病」は不安障害と併発することも多く、不安障害に伴ううつ病のケースでは、この非定型うつ病の可能性が高いことが指摘されています。

今回は、不安障害の人に多い「非定型うつ病」とは何か、その特徴や症状、主な治療法について見ていきたいと思います。

非定型うつ病の主な特徴

はじめに非定型うつ病の主な特徴から見ていきます。

聞いたことがある人も多いと思いますが、従来の古典的なうつ病になりやすい病前性格として「メランコリー親和型」というのがあります。

メランコリーとは「憂鬱な、晴れ晴れしない気分」を表す言葉ですが、ドイツの精神医学者であるTellenbachは、「メランコリー親和型」の性格を、秩序を重んじ、規律を守り、真面目で勤勉、几帳面、物事に熱心、責任感が強い、他者配慮があるといった特徴を示すものとし、またこうした性格の持ち主はうつ病になりやすいことを提唱しました。

人間関係の秩序であったり物事の規律であったり、決められた道をその通りに進まないと納得できない人なので、社会的な構造の変化に乏しく、突然のリストラや家族との別れなどの身の回りの変化をきっかけに抑うつ状態になってしまうケースが多く見受けられます。

そのため発症年齢は比較的、若年層よりも中年層に多く見られます。

また責任感や他者配慮があるので、他人に気を遣ったり、困った人を見かけては手を差し伸べて、自分が出来る以上のことを引き受け、しまいには身動きが取れなくなってうつ病の症状を呈することも往々にしてあります。

その一方で、非定型うつ病になりやすい性格としては、親の言うことを良く聞く「いい子」タイプに当てはまるような性格の持ち主です。

具体的には、幼少期の頃から親の顔色をうかがうような生活を送ってきたことで、自己主張に乏しく、容易に人に甘えられない、弱みを見せない、などの性格傾向を示します。また周囲に気を遣いすぎている面もあり、「他人にどう思われているのか」を気にしたり、相手の何気ない一言にも過敏に反応したりするところもあります。

まとめると以下の内容になります。

  • 小さい頃から「いい子」という看板を背負ってきた
  • 相手を気にするあまり自己主張が乏しい
  • 容易に人に甘えられない、頼ることが出来ない
  • プライドが高いので弱みを見せることが出来ない
  • 「他人にどう思われているのか」ということを気にする
  • 相手の言葉に傷つきやすい
  • 他者配慮がある

こうした性格を持った人が社会に出て働き始めると、職場の人からは、すごく気の利く「いい人」という体で見られ、高い評価を得ることができます。

しかし仕事でミスをしてしまい、上司から注意を受けたり、取引先やお客からクレームがあったりすると、本人にとってはすごく精神的なストレスになってしまい大きなダメージとして残り続けます。一度傷ついた心は簡単には戻らず、人から褒められても「本当に相手はそのように評価しているのか」と疑うようになったり、今までの人間関係や対人関係に臆病になったりしてしまうのです。

非定型うつ病の場合、従来のうつ病とは違い若年層で多く見られ、その中でも20~30代の女性の割合が非常に高くなっているのも特徴です。

若年層に多く発症する背景にはいくつかの要因がありますが、言われているものとしては、生育環境がその要因のひとつにあります。社会構造の変化から従来の価値観とはまた違った価値観の中で育てられ、また親子関係に見ても、幼少期からなるべく親の手を煩わせないように過ごしてきたというのがあります。

非定型うつ病の主な症状

非定型うつ病もうつ病の一種なので、気分が落ち込むといった抑うつ症状というのがあります。しかし以下に示すように、まったく違った症状を呈することがあるのです。

気分の反応性

従来の古典的なうつ病では、仮に本人にとって良いことが起きても気分は良くなることはありません。また本人にとって悪いことが起きても、今以上に気分が落ち込むということはなく、気分の反応性に乏しいが特徴です。

一方で非定型うつ病では、本人にとって良いことが起きた時というのは気分が持ち上がり、悪いことが起きると今以上に気分が落ち込んでしまうという、気分の反応性が高いのが特徴です。

過食や過眠

うつ病といえば「寝つきが悪い」、「早朝に覚醒して睡眠が足りない」、「熟睡感がない」といった不眠にまつわる症状がかなりの割合で見られますが、非定型うつ病では時間があれば何時間も寝てしまうという、過剰な睡眠に陥る傾向があります。

また食欲に関しても、従来のうつ病では、食欲がなくなり体重が減ってしまうことがしばしばありますが、非定型うつ病では、食べると気分が落ち着くということもあり、食欲を満たすまで食べてしまう傾向にあります。特に甘いものを好んで食べるので、体重が増えてしまうこともあります。

対人関係上の拒絶過敏性

非定型うつ病の本質とも言っていい特徴に拒絶過敏性というものがあります。

ここでの拒絶過敏性というのは、他人の些細な言動に対して過剰に反応してしまうこと、また相手が自分のことについて悪い印象を持つことを極端に恐れてしまうことを指し示します。

非定型うつ病は不安障害と併発することも多く、その背景に、この拒絶過敏性がリスク因子にあることを指摘している研究グループ(New South Wales大学グループ)もあります。

拒絶過敏性を持っていることにより、人間関係がスムーズに築けない、社会的な責任を放棄しやすい、過度なアルコールや違法薬物などの使用に走ってしまう恐れもあるだけに、注意しなければいけません。

鉛様の麻痺

まるで鉛のように手足が重くなり、動けなくなってしまうというのも非定型うつ病にみられる特徴のひとつです。

ただ従来のうつ病では、継続的に全身の倦怠感や疲労感があるのが特徴ですが、非定型うつ病では、自分にとって嫌なことが起きた時ほど倦怠感や疲労感がどっと押し寄せて、体が動けなくなってしまうことが往々にしてあります。

まとめると以下のような症状が非定型うつ病の症状と言えます。

  • 気分が落ち込む、憂鬱な状態に陥る抑うつ症状
  • 気分の反応性が高い
  • 過食や過眠
  • 対人関係上の拒絶過敏性
  • 鉛様の麻痺

非定型うつ病の主な治療法

従来のうつ病の治療といえば、十分な休養とSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)といった抗うつ薬による治療が一般的です。

非定型うつ病もうつ病の一種なので、同じ種類のお薬が処方されますが、ただ従来のうつ病と違い、お薬の効き目があまり期待できないという報告が多々あります。

効き目が期待できないというと語弊があるかもしれませんが、どんなお薬にも副作用があり、そのお薬の「効果」と「副作用」を天秤にのせて考えると副作用の方が勝ってしまうということです。

また気分の反応性が高い非定型うつ病は、概念的には双極性障害にも類似する点があることが指摘され、臨床の現場でも非定型うつ病と双極性障害を明確に区別することが難しく、躁状態を呈する双極性障害に対して不用意に抗うつ薬を使用すると病態が悪化してしまう恐れがあるため、同様に非定型うつ病に対しても同じようなことが言えます。

そのため、お薬だけでの治療ということではなく、併せてモノゴトの考え方の偏りを修正するための認知行動療法などの心理療法を行っていく必要があります。

さらに非定型うつ病の場合、従来のうつ病と違い、自分の好きなこと、興味があることについてはやる気が起きますので、ある程度、周囲の励ましがあったほうが症状の改善に繋がりやすいというのもポイントです。

不安障害やパーソナリティ障害と合併しているケースも少なくないことから、症状をつぶさに確認してより適切な治療に結びつけることが求められるでしょう。

従来の古典的なうつ病の先入観を持って非定型うつ病を捉えてしまうと、症状が長引く要因になりかねません。

しかし非定型うつ病もうつ病の一種であることから、当事者側としても気分の落ち込みに苦痛を感じ、以前のような日常生活に戻りたいと願っています。

現状、非定型うつ病に対してはメディアが伝えているゴッタ煮状態の「新型うつ病」をイメージする人も思いのほか多いのではないでしょうか。「甘えている」、「人間的に未熟」、「うつ病とは似て非なるもの」など、病気とはかけ離れている印象を持ち、適切な対応が取れていないと思います。

正しく理解するためにも、表面だけではなく具体的な中身、ここで言えばどのような特徴や症状が見られるのか、どういった経緯で発症しやすいのか、などを知ることが必要でしょう。

今回紹介した非定型うつ病の特徴や症状はあくまでも典型例で、もちろん例外もあるとは思いますが、概念的なものは知ることができたのではないかと思います。もちろんひとつの記事の情報を鵜呑みにするのではなく、複数の情報を得て、そのうえで適切な治療、早期の回復に繋げてほしいと思います。

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