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複雑性PTSDとはどんな病気!?いじめや虐待との関係、特徴、症状について

最近メディアでも聞く機会が増えた「いじめ後遺症」という言葉。いじめられた経験がその後の生活に対しても悪影響を及ぼすとして注目されていますよね。

いじめ後遺症という病名はないものの、形式的にはPTSDと似た概念を持ち、早期の治療が必要になります。またいじめ後遺症は、ここ最近になって登場した名称ですが、考え自体は昔からある複雑性PTSD(Complex Post-Traumatic Stress Disorder)と重なる点が多いです。

今回は複雑性PTSDとは何か、いじめや虐待との関係性、どういった症状が表れるのかということを見ていきたいと思います。

複雑性PTSDとは

複雑性PTSD(Complex Post-Traumatic Stress Disorder)とはHermanによって提唱された概念で、一般的なPTSDと区別するためにC-PTSDと表記されることがあります。

トラウマ研究の権威であるBessel van der Kolkが複雑性PTSDと似た概念で、特定不能の極度ストレス障害(通称DESNOS:Disorder of Extreme Stress not otherwise specified)の概念を提唱していますが、複雑性PTSDと類似性が高く取り立てて区別する必要はないと思いますので、同様のものとして説明します。

複雑性PTSDについてどのようなものかを表しますと、長期間続いた虐待やいじめなどが原因となって生じた心的外傷が背景となって、普段の生活がうまく送れないような症状が表れたり、認知的にも人格的にも以前と比べて著しく変化したりするのが特徴です。

またあらゆる領域で危険があると感じ、誰を信じていいのか分からない、また自分自身さえも信じられない状況に陥ってしまうのも複雑性PTSDの特徴と言われています。

一般的に知られているPTSDと同様の症状が見られますが、PTSDが心的外傷的出来事となるものがその時だけ起こった限定的であることに対して、複雑性PTSDではそのような体験が長期間続き、反復的かつ慢性的であることに違いが見てとれます。

そのため家庭内での虐待行為、学校などでのいじめが長い期間に渡って繰り返されることで、複雑性PTSDを招いてしまう可能性があるのです。

複雑性PTSDの症状

PTSDの三大症状と言われている「再体験(フラッシュバック)」、心的外傷的出来事を想起させるものに対する「回避行動」、そして「過覚醒症状」に加え、複雑性PTSDは、反復的かつ慢性的なトラウマ体験からの解離症状や感情制御の困難、持続的な無力感や無価値感などの症状が見受けられます。

特に複雑性PTSDの症状として特徴的なのが離人感や現実感消失を伴った解離症状です。

精神医学や心理学の分野における<解離>という言葉を簡単に言うと、自分であるという感覚に異常をきたしている状態を指し示します。

感覚に異常をきたしてしまうことで記憶と結びつける能力に影響が出てしまい、時に正常な記憶と結びつくはずであった出来事がバラバラに離れた状態になってしまうことがあります。

普段の生活のなかでも、どこかへドライブした時、あるいは自転車で買い物に行った時、考え事をしながら運転していると途中の細かいルートを覚えていない人も多いかと思います。このようなケースは軽い解離性を伴った行動です。

ただし道中のルートを覚えていなくても出発した場所や目的地がはっきり覚えているのであれば、事を大きくする必要もなく、人間の脳の仕組みとしてそのような現象が見られる程度におさめて、過度に心配する必要はないでしょう。

しかし精神疾患レベルの解離症状では、記憶に関して大きな隔たりが生まれてしまい、日常生活を送るうえで大きな障害になってしまいます。

例えば、離人感や現実感消失を伴った解離症状ともなると、自分自身の存在を第三者目線から眺めているような感覚、何かを持つ手も自分の手のように感じられなくなってしまいます。現実なのか夢を見ているのかはっきりとせず、目の前に霧がかかったような自分だけどこか違う世界にいるのではと思うくらい現実的な感覚が失われてしまいます。

解離については、解離性健忘や離人感・現実感消失症などが属する解離性障害群の扱いになることもありますが、複雑性PTSDはこういった解離性障害群、そして境界性パーソナリティ障害や回避性パーソナリティ障害が属するパーソナリティ障害群などとオーバーラップしていることが往々にしてあります。

それだけ複雑性PTSDというのは見過ごすことのできないものなのです。

特に、複雑性PTSDの症状を呈しているのに、境界性パーソナリティ障害と診断され、治療が上手くいかないケースも往々にしてあります。境界性パーソナリティ障害を疑う前に、複雑性PTSDの可能性を疑うことも必要だと思います。

複雑性PTSDになってしまう原因

一般的に聞くPTSDもそうですが、自身の生命を脅かすような出来事に遭遇しても、そのことが心的外傷的出来事になる人もいればならない人もいます。

その背景には生まれつきの気質、価値観、文化的な土壌、行動スタイルなどが関係していますが、複雑性PTSDに関して言えば最も重要なのが置かれている環境です。

やはり複雑性PTSDは長期間続く虐待やいじめなどが原因となって生じるケースが多いため、いじめや虐待がなければその発症リスクは低いと言えます。

いじめや虐待が短期間で解消し早いうちに当事者の心の傷を癒すことができれば、物事の認知的な側面、その人の人格そのものを大きく変化させずに済みます。

また蓄積された心の傷が結果として認知的にも人格的にも悪影響を及ぼし、様々な症状となって表れ人生の質を著しく低下させてしまうことは分かっていますので、周囲の対応としても、寄り添う姿勢を見せて安心感を提供することが求められるでしょう。

いじめの問題は十把一絡げに語れるものではありませんが、いじめを受けた側の心の問題という視点で語れば、このような複雑性PTSDを発症して、対人関係に対して恐怖感や不安感を募らせ、自己評価の低下や自己肯定感の乏しさを招き、その後に人生に大きな影を落とすようなことになってしまいます。

また虐待に関しても、親から虐待を受けた子どもが大人になって結婚して子どもが生まれた時、その子どもに対して虐待する傾向があることが研究で分かっています。いわゆる虐待の連鎖です。

虐待の連鎖をどこかで食い止めなければ、第二、第三の犠牲者が生まれてしまいます。本来であれば家庭というのはひとつの居場所であり、安らげる空間でなければいけないのです。

ここ最近、家庭でもなく学校でもない第三の居場所を提供するサポートが増えてきています。いじめや虐待に関する問題は山積しているものの、そのようなサポート体制が虐待やいじめを受けた人の避難先となり、ひとつの対応策になっていると思います。

複雑性PTSDやトラウマについてもっと知りたい人のために

複雑性PTSDやトラウマに関する情報というのは、うつ病やその他の精神疾患と比べて少ないと感じている人も多いのではないでしょうか。

情報が少ないことで、当事者の家族や友人もどのように接したらいいのか分からない、当事者もこの苦しみからどのように回復していったらいいのか分からないというケースが多々あると思います。

そのような時、複雑性PTSDやトラウマをテーマに扱った本を読むことをおすすめします。

私も一冊持っていますが、水島広子先生の『対人関係療法でなおす トラウマ・PTSD:問題と障害の正しい理解から対処法、接し方のポイントまで』という本は、平易な文章で、分量もそれほど多くなくちょうど良い厚さの本です。

トラウマの基本的な知識、治療法のひとつとしての対人関係療法の紹介、身近な人の接し方など、トラウマ治療に必要な知識がつまっています。

近くの図書館にあると思いますので、ぜひ手にとって読んでみてはいかがでしょうか。

今回、複雑性PTSDについて見ていきました。

原因となるものには、いじめや虐待といったことが関係しており、その結果、解離症状や感情制御の困難、持続的な無力感や無価値感などの症状が表れてしまいます。その他にも、いじめや虐待を我慢した結果、人を頼るということを知らない、他者との間に人間関係が上手く築けない、対人関係における忌々しい記憶からひきこもり状態になってしまうことも十分あります。

複雑性PTSDの症状を抱える人の中には、いじめの呪縛から何年経っても解放されず、心はまるで氷のように他者を寄せ付けないほどの冷たさを持っている人もいます。

それゆえ症状が改善するまでの過程は一筋縄ではいかないことが多いと思います。しかし心から安心できる居場所の確保がなければ治療は上手くいきません。どうしても周囲のサポートが必要なのです。

多くの人は複雑性PTSDについてあまり知らないと思います。私自身もPTSDという言葉は以前から知っていたものの、複雑性PTSDという概念があることは知りませんでした。

今メディア等で「いじめ後遺症」という言葉で、いじめられた経験が人生の質を低下させてしまうことについて紹介していますが、内容自体は複雑性PTSDと変わりありません。入口は違ってもどういう症状が見られるのか、背景に隠れているものは何か、こういったことを知っているのと知らないのとでは接し方も大きく変わってくるでしょう。

この記事を通じて、一人でも多くの人が複雑性PTSDの存在について知っていただけたら嬉しい限りです。

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