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不安障害と適応障害の違いは!?症状、原因の違いを分かりやすく

スペインでプレーしている柴崎岳選手が移籍後に不安障害の可能性があるという報道がありました。この報道で不安障害という心の病を初めて知った人も意外といるのではないかと思います。

ただ彼のケースを見ると、移籍先での食事や文化の違い、そして環境や気候の違いなどからくる生活スタイルの急激な変化に身体が適応できなかったことによる適応障害に近い症状に悩まされたのではないかという見方もできると思います。

報道に寄せられたコメントの中にも、飲み水の問題や時差による自律神経の乱れを指摘するものもありました。

さらに言えば適応障害の症状に見舞われていた期間が比較的短く、その後は環境に適応したように思えます。何と言っても移籍後の活躍により、スペイン2部に属するテネリフェから1部のヘタフェへの移籍が決まり、一流プレーヤーが揃うフィールドに柴崎選手は足を踏み入れたわけですからね。

柴崎選手がどうして不安障害の可能性があると言われたのか、考えられる理由については後ほど述べますが、そもそも不安障害と適応障害は同じものなのか、それとも違うものなのか、症状や原因はどういったものがあるのか、分かりづらい部分も多いと思いますので、今回、不安障害と適応障害を対比させながら特徴的な症状や原因などを見ていきたいと思います。

適応障害とは

適応障害は心の病のひとつですが、ちょうど健康と病気の境目に位置する病気でストレス社会の現代では比較的多く見られます。

そのため、うつ病と診断するまではいかないものの、うつ状態に近く、不安感やイライラが消えない、頭痛や吐き気がする、気分がすぐれず会社や学校に行けないなどの症状を訴えることが多いです。

DSM-5によると以下のような診断基準が設けられています。

  1. はっきりと確認できるストレス因に反応して,そのストレス因の始まりから3カ月以内に情動面または行動面の症状が出現
  2. これらの症状や行動は臨床的に意味あるもので,それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある
    • 症状の重症度や表現型に影響を与えうる外的文脈や文化的要因を考慮に入れても,そのストレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛
    • 社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の重大な障害
  3. そのストレス関連障害は他の精神疾患を基準を満たしていないし,すでに存在している精神疾患の単なる悪化でもない
  4. その症状は正常の死別反応を示すものではない
  5. そのストレス因,またはその結果がひとたび終結すると,症状がその後さらに6カ月以上持続することはない

-American Psychiatric Association(高橋三郎、大野裕、染矢俊幸ほか訳)『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』医学書院より引用-

つまり適応障害を簡単に言うと、ストレスを引き起こす要因がはっきりしていて、それに伴って何らかの身体的症状が表れ、日常生活に支障をきたしてしまっている状態と言えるでしょう。

不安障害も症状を引き起こすストレス因を持っていることもありますが、目立ったストレスがなくても発症することがあります。現に不安障害のひとつであるパニック障害は、本来ならば落ち着けるような自分の部屋にいても突然パニック発作が襲ってくることもあります。

そのため適応障害の場合であれば、今置かれている環境を変えることで症状が良くなることがあります。仕事や学校に行くと症状が表れるものの、遊びや趣味の世界などでは症状が表れず元気に振舞うことができるというのも適応障害の特徴です。

適応障害の原因

適応障害の原因についてもう少し詳しく見ていくと、置かれている環境による外的要因からくるものと、性格からくる内的要因からくるものが考えられます。

外的要因には、経済や社会情勢の変化、結婚や出産、夫の両親との同居などといった日常生活の変化、進学や留学などの学習環境の変化、就職や転勤、昇進などの職場環境の変化が挙げられます。

一方で内的要因には、その人のストレス耐性の弱さ、またストレスに直面した時の処理能力の低さなどが挙げられますが、ストレスを感じやすく対処が上手くいかないという人が持つ特徴としては、傷つきやすい、物事の切り替えが下手、完璧主義、責任感が強い、困りごとを相談できる相手がいないなどが見受けられます。

この外的要因と内的要因が相互作用することによって適応障害を発症してしまいます。

ところで適応障害というと、単なるわがままで自分からその環境に合わせられない不適応な人がなるようなイメージを持たれますが、必ずしもそうではありません。むしろその環境に対して何としてでも適応しようと本来の自分の姿を偽ってでも過剰に合わせようとする、いわば真面目なタイプがその対象になることが多いのです。

昨今、デジタル化やサービス化が進み、末端の人にしわ寄せがきていることを実感している人も多いと思います。

例えば宅配や運送業を例にとると、ネットショッピングが当たり前の世の中、日々膨大な量の荷物を届けなければいけませんが、サービスの一つとしてスピード配送や時間指定配送などがあります。こういったサービスを普段から何気なく利用している人も多いでしょう。しかし過剰なサービスは時には労働者を苦しめることも少なくはありません。

荷物が時間通りに届かなければクレームがあったり、時間通りに届けたのにも関わらず不在で、もう一度届け直さなければいけなかったり、そういう労働環境の中で自分を顧みず真面目に働き、さらに環境に無理に適応しようとすることで適応障害を引き起こしてしまうこともあるのです。

日本人は他の国民から見ても勤勉で真面目だと言われます。だからこそ敗戦後、驚異的なスピードで国を立て直すことができたのでしょう。ところがその経済成長に陰りが見えた時、社会は効率化を求めるようになり、次第に一人ひとりの心に余裕を持ちにくい雰囲気が漂うようになります。

適応障害はしばしば「現代の文明病」とも呼ばれていますが、与えられた状況や環境に適応せざるを得ないという現代社会の雰囲気が病気を引き起こしていると言っても過言ではない部分もあります。

もちろん、同じ環境下であっても適応障害になる人もいればならない人もいます。そのため外的要因ばかりに視点を向けるのではなく、内的要因についてもしっかり把握することが大切で、特に自分自身の性格傾向を理解しておくことは適応障害を未然に防ぐことに繋がります。

適応障害と不安障害そしてうつ病との関係性

冒頭にも柴崎選手が不安障害の可能性を指摘する報道について書きましたが、確かに適応障害と不安障害は近縁関係にある疾患で似ている部分も多いです。

適応障害の症状の中には抑うつ気分、不安感、心配、またそれらが合わさった混合型などがあり、不安障害もまた不安を主体とした病気なので、強い不安感が伴うことは当たり前のようにあります。

そのため適応障害の症状次第では不安を伴う適応障害というのもあり、症状が似ている分、不安障害と診断されてしまうこともあるのではないかと個人的には思います。

また診断に用いられるガイドラインとして現在、アメリカ精神医学会が発行する『DSM-5』とWHOが発行する『ICD-10』がありますが、柴崎選手を診察した医師はスペインの方だと思いますので、『DSM-5』よりは『ICD-10』を採用しているのではないかと思います。

仮に『ICD-10』で見た場合、混合性不安障害(F41.3)の診断基準を満たすかもしれないが、混合性不安障害に分類されるほど重くない場合に適応障害が当てはまります。つまりそれだけ適応障害と不安障害の症状が似ていて、結果的に不安障害の可能性が高かったということではないかと推測されます。

ただ適応障害の場合、不安障害と違って、ストレス因が特定できることが多くそのストレス因から避けることで症状が改善されたり、通常見られる症状の持続性も低いため適切な治療を受ければ回復までの期間も短く済んだりします。

しかしながら適応障害の症状を甘く見てはいけません。適応障害は移行性が高いので、症状が表れているのにも関わらず我慢し続けていると軽症うつ病、大うつ病へと発展していく可能性があります。

大うつ病になってしまえばその分だけ治療期間も長引き、回復まで時間がかかってしまいますので、適応障害の段階で治療することが望ましいでしょう。

適応障害の治療法

適応障害に対する治療法は不安障害と同様、お薬によるものと心理療法によるものが挙げられますが、適応障害はその原因が外的要因に起因することも多く、抗うつ薬や抗不安薬などの服用では根本的な部分から改善することは期待できないこともあります。

むしろストレス源となっているストレッサーの軽減に努めることで症状の改善に繋がります。例えば仕事関係のストレスであれば苦手な上司との距離を置いてみたり、自分ひとりで仕事を抱え込むのではなく周囲に相談してみたり、可能であれば休職するというのもひとつの手です。とにかくストレス源となるものから離れることが何よりも大切です。

また認知行動療法を用いて物事の捉え方や考え方を変える訓練を行い、ストレスと上手に付き合う方法を身につけるのも効果的です。

適応障害になりやすい人は、一様に「~しなければいけない」、「~すべきである」といった具合に、べき思考に囚われていたり、0か100の中間が無い考え方をしていたりします。このようないわゆる認知の歪みを抱えている人ほど適応障害に苦しんでいます。

生まれ持った気質的なものはありますが、育った環境や経験を通じて身につけてしまった偏りのある認知を修正していくことで、ストレスの影響を受けにくくすることができます。

その他にも、もともと自律神経の調節機能が働きにくい人は体質的に見ても適応障害にかかりやすい傾向にあります。普段から規則正しい生活、栄養バランスのとれた食事、自分なりのリラックス法などを活用して、自律神経を乱れさせない工夫もまた効果的でしょう。

今回、適応障害について不安障害と比較しながら見ていきましたが、適応障害は不安障害よりもなりやすいことが理解できたのではないかと思います。

現代社会にはストレス因となる要素が蔓延っており、正直なところ適応障害は誰がなってもおかしくない病気だと言えます。しかし誰もがなりうるからといって軽視できるものではなく、放っておけば完治するまでに長い時間を要することもあります。

適応障害を引き起こす外的要因となる学校や職場、家庭など、これらは自分で変えようと思っても簡単に変えられるものではありませんが、内的要因となるものについては自ら変えることが可能です。

現在、働き方改革や育児負担を軽減するような動きはあるものの、必ずしもその恩恵を全ての人が受けられるというわけではないので、適応障害を予防するという観点からも自分自身の性格傾向やストレス耐性を把握することが求められるでしょう。

もしかしたら身近なところで適応障害に苦しんでいる人がいるかもしれません。本人もまた周囲に心配かけたくないと自分の症状を隠しながら、環境に適応しようと頑張り続けているかもしれません。

そんな時、家族や周囲のコミュニケーションが当事者を救うきっかけになります。「少し休んだらどうかな」こういった言葉をかけるだけでも状況は変わってくると思います。

今後も適応障害やそれに近い症状を訴える人が増えていくと予想されますが、対策できる病気でもありますし完治する病気でもあります。もし該当するような症状があれば早めに診察を受けて休養に努めてほしいと思いますし、可能であれば環境を変えて自分本来の姿で過ごせるような場所を見つけてほしいと切に思います。

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