不安障害に関する症状や原因、治療法などについて、その当事者や家族、また不安障害を知らない人に向けての正しい理解を目指した特化サイトです。

不安障害ラボ

不安障害に関する症状や原因、治療法などについて、その当事者や家族、また不安障害を知らない人に向けての正しい理解を目指した特化サイトです。
>>当サイトの詳しい説明はコチラ

  1. TOP
  2. 不安障害
  3. 不安障害と生まれ持った気質の関係性について

不安障害と生まれ持った気質の関係性について

顔つきや背の高さといった外見、特定の病気のなりやすさ、お酒の強さなどの体質、私たちには生まれ持った特徴が存在します。

中学や高校で習った「親から子どもへとその特徴が伝わる」というメンデルの法則を知っている人も多いと思いますが、親の特徴が子どもにも伝わるというのは想像しやすいことだと思います。

ただ植物の遺伝よりも人間の遺伝というのは複雑であり、そう単純に説明できるものではありません。

現に身長を決定付ける遺伝子というのは数百個も存在すると言われており、それらの遺伝子が組み合わさって身長の高さというのが決まります。

しかしながら人の外見や血液型、特定の病気のかかりやすさというのは、遺伝という側面を切り離して考えることはできず、それは不安障害をはじめとした心の病気にしても同様で、親が発症リスクを高める気質を持っていたり、兄弟(姉妹)が似たような症状に悩まされていたりすることから、無視できないと思っている人も多くいるのではないかと感じます。

今回は、遺伝子と生まれ持った気質の関係性を背景にしながら、不安障害を患ってしまう要因は「生まれ持った気質によるもの」なのか、あるいは「生まれ育った環境によるもの」なのかを考えていこうと思います。

遺伝子と生まれ持った気質の関係性について

ある物事に対して悲観的に考えてしまう人もいれば楽観的に考える人もいます。

こうした心が不安定になりやすい傾向を示す人もいれば、そうではない人もいるというのは、少なからず遺伝的な影響を受けている可能性があることが確認されています。

裏付けるものとして有名なのがアメリカの精神医学者であるCloningerが発表したパーソナリティ理論です。人間のパーソナリティ形成(人格形成)には、遺伝的な影響を受けているものと環境的な影響を受けているものがあり、合計で7つの因子に分類できるという理論です。

詳しいことはリンク先のページを見てください。

Cloningerの研究以外にも、遺伝子と生まれ持った気質について強い関係性を示すものはいくつか存在しています。

「攻撃性」という性格と遺伝子の関係性について、オランダの遺伝学者であるHan Brunnerの研究があります。

Han Brunnerは、放火やレイプなどの衝動的な行動や攻撃的な振舞いをする人が多くいる家系について遺伝子を調べてみたところ、その家系の中からMAOA(モノアミン酸化酵素A)というタンパク質をつくる遺伝子に異常があり、MAOAがまったく作られない複数の男性が存在することを突き止めました。

このMAOAというのはセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質を酸化させる作用があり、酸化してしまうと神経伝達物質はその機能を失ってしまいます。

例えば、ドーパミンという神経伝達物質は「衝動性」や「攻撃性」と密接に関わっています。そのため脳内において異常にドーパミン量が増えてしまうことで、自分の行動に歯止めが利かなくなってしまったり、相手に対して暴言を吐きやすくなったりすることがあります。

先ほどの研究の話に戻りますが、やはりと言いますかMAOAを作ることができないタイプの男性全員が攻撃的な性格だったのです。

この研究結果からも分かる通り、遺伝子が人の性質、性格に関与しているということは少なからず事実としてあるということでしょう。

その他にも、セロトニンの働きを調節する役割を持っているセロトニントランスポーターに関しても遺伝的な要素が強く表れていると言われています。

セロトニンと言えば心身の安定や安らぎといった人間の精神面をつかさどる重要な役割を果たす神経伝達物質です。

このセロトニントランスポーターの遺伝子タイプを見ていくと、長いタイプ(LL型)、短いタイプ(SS型)、そしてその中間型(SL型)が存在しており、長いタイプであるLL型を持つ人はセロトニンの働きが活発で比較的物事を楽観的に見るタイプで、逆に短いタイプであるSS型を持つ人は働きが弱く悲観的に物事を見るタイプであることが分かっています。

日本人の多くが短いタイプであるSS型を持っており、日本人が遺伝的に見ても物事を悲観的に捉えやすく、選択肢として冒険よりも安定や確実といったものを選びやすい傾向があるのです。

このように遺伝子と生まれ持った気質の関係性について見ていくと、自分の意思ではどうしようもできないものがあって努力や経験という要素は意味をなさないように思われますが、実はそうとも言い切れません。

確かに親から受け継ぐ遺伝子の組み合わせで決まる特徴というのは存在しており、それはほぼ一生変わることなく経験や環境の影響を受けないものも存在しています。

しかし一方で、遺伝子の影響力が環境や経験次第で変化することもあるのです。

環境が遺伝にどう作用するのか

双生児に詳しい慶應義塾大の安藤寿康教授は、双生児研究を進めて行く過程で外向性、神経質さ、知能テストの成績などの特徴に関しては、親から受け継ぐ遺伝の影響が少なからず関与していることを明らかにしていますが、言語性の認知能力や学業成績そのものについては、遺伝の影響だけではなく家庭環境の影響も無視できないと述べています。

その理由は、言語的なものというのが家庭内で用いられる話し言葉であったり書き言葉であったりを情報源として、言語に対する認知能力の鍛錬に繋がるからであり、学業成績というのも両親が勉強熱心であれば学業をしやすい環境を整えやすいというものが大きく関わっているからです。

こうした研究成果は子育てと不安障害の関係を語るうえでも参考になると思います。

不安障害の発症リスクを高める要因として、子どもの不安に対する感受性を強めてしまう子育てが強く関係していることが指摘されています。

代表例が過保護や過干渉です。

過保護や過干渉になってしまうのはその背景に親の隠れた不安感情が存在し、結果的に子育てという形で表れたものであり、また子どもというのは親をよく観察しているもので、そのような親の不安感情が子どもにも容易に伝わってしまうのです。

過保護や過干渉の対極にある虐待や育児放棄も同様です。こちらも批判的に育てられることで自己肯定感や自尊心が低くなってしまい子どもを絶えず不安な状態にしてしまいます。

現在、人間の心や行動選択につながるメカニズムの全てには、各々が持つ遺伝的要素が関わっているもののメカニズムがどのように機能するかということについては環境も少なからず関わっているとされています。

「エピジェネティクス(後天的に決定される遺伝的な仕組み)」と呼ばれますが、もともとの遺伝情報がどのような生活環境、どういった育てられ方なのかによって遺伝子の発現パターンに変化が生まれます。

その証拠に、3歳半から4歳にかけての幼児の感情変化に及ぼす遺伝と環境の影響を調べたところ、不安を強く感じさせたり、落ち込んだりといった感情変化は、親のしつけが厳しすぎたり接し方にムラがあったりするほど個人差が大きくなることが示されています。

つまり生まれながらにして不安を感じやすい、心配しやすいタイプであっても、その後の環境次第では小さくできる可能性があるということです。もちろんその逆も然りで、不安を増長させるような環境であれば、もっと不安を感じやすくなってしまい、結果的に不安障害を発症してしまうこともあるでしょう。

私たちは、往々にして遺伝と環境を別にして考えてしまうことがあります。

しかし実際のところは遺伝と環境は密接に関わっており、さらに環境の影響というのは同じような環境にいる人に同じような効果を与えるということではなく、各々が持つ遺伝的な要素によって効果は様々です。

不安障害についても、生まれ持った気質として不安を感じやすい人というのは存在していて、そして環境によって発症するかどうか決まってしまう部分はあると言えるでしょう。

だからこそ一人ひとり異なる遺伝的な要素をしっかりと理解し、一人ひとり違う生まれ持った気質を最大限活かす環境があるということもまた理解していかなければいけません。

今もなお不安障害に苦しんでいる人というのは、もしかしたら現在置かれている環境が症状をより一層ひどくしている可能性があるかもしれません。

残念ながら生まれつきの気質は変えることはできません。どうしても不安になりやすい人はなりやすいのです。しかしその不安になりやすい傾向を最小限にとどめることは、環境を変えることによって達成することは可能です。

遺伝的な部分と環境的な部分、両方を正しく捉えることが不安障害の症状を改善していくために求められるでしょう。

アーカイブ

月別一覧
年別一覧

profile

管理人:ミヤシタソウジ

プロフィールの詳細はコチラ

当サイトの説明はコチラ

Twitter:@soji_miyashita

当サイトに関すること、その他個別の問い合わせがありましたらメールにてお願いします。

Gmail:soji.miyashita★gmail.com
(迷惑メール防止のため、送る際は★を@に変えてください)

PAGE TOP