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不安障害と生まれ持った気質の関係性について

顔つきや背の高さなどの外見であったり、特定の病気のなりやすさ、お酒の強さなどの体質であったり、私たちには生まれ持ったともされる特徴が存在します。

中学校などで習った親から子どもへとその特徴が伝わるというメンデルの法則を知っている人も多いと思うので、親の特徴が子どもにも伝わるというのは想像しやすいのではないかと思います。

ただ人間の遺伝というのは中学校で習ったメンデルの法則よりは複雑であり、単純に説明できるものではないとされています。

現に身長を決定付ける遺伝子というのは数十個から数百個ほど存在されると言われており、それらの遺伝子が組み合わさって身長の高さというのが決まります。

私たちが思っている以上に人間の遺伝というのは、複雑性を持っているということですね。

しかしそれでも人の外見や、血液型、特定の病気のかかりやすさというのは遺伝という側面を切り離して語ることはできず、不安障害をはじめとした心の病に関しても同様で、親がそういった気質を持っている、兄弟(姉妹)が似たような症状に悩まされているといったケースから、無視できないのではないかと思う人も多くいると感じています。

今回、遺伝子が生まれ持った気質にどのように関わってくるのか、また不安障害を患ってしまうのは生まれ持った気質によるものなのか、あるいは環境によるものなのかを見ていこうと思います。

遺伝子と生まれ持った気質の関係について

物事に対して悲観的な人もいれば楽観的な人もいます。落ち込みやすい人もいれば、何事もなかったように平然としている人もいます。

このように心が不安的になりやすい傾向を持っている人もいれば、そうではない人もいるというのは、実は遺伝的な影響を受けているとされています。

このことを裏付ける理論としてアメリカの精神医学者であるCloninger氏が、人のパーソナリティというのは遺伝的な影響を受けているものと環境的な影響を受けているものに分けられるとして、その要因となるものを7つに分類したパーソナリティ理論を用いて説明することができます。

詳しいことはリンク先のページを見てください。

このCloninger氏の研究以外にも、遺伝子と生まれ持った気質について強い関係性を示すものはいくつか存在しています。

科学雑誌にも取り上げられることが多い、”攻撃性”という性質と遺伝子の関係性について、オランダの遺伝学者であるHan Brunner氏の研究があります。

Han Brunner氏は、放火やレイプなどの衝動的な行動や攻撃的な行動を取る人が多くいる家系について遺伝子を調べてみたところ、その家系の中からMAOA(モノアミン酸化酵素A)というタンパク質をつくる遺伝子に異常があり、MAOAがまったくつくられない複数の男性が存在することを突き止めました。

このMAOAはセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質を酸化する働きがあり、酸化された神経伝達物質はその機能を失ってしまうので、神経細胞(ニューロン)の外に排出されてしまいます。

そしてMAOAを作ることができないタイプの男性全員が、攻撃的な性格であったことが分かりました。

この研究結果からも分かる通り、遺伝子が人の性質、性格に関与しているということは少なからず事実としてあるということです。

その他にも、セロトニンの働きを調節する役割を持っているセロトニントランスポーターに関しても遺伝的な要素が強く表れていると言われています。

セロトニンと言えば心身の安定や安らぎといった人間の精神面をつかさどる重要な役割を果たす神経伝達物質です。

このセロトニントランスポーターの遺伝子タイプを見ていくと、長いタイプ(LL型)、短いタイプ(SS型)、そしてその中間型(SL型)が存在しており、長いタイプであるLL型を持つ人はセロトニンの働きが活発で比較的物事を楽観的に見るタイプで、逆に短いタイプであるSS型を持つ人は働きが弱く悲観的に物事を見るタイプであることが分かっています。

特に日本人の多くが短いタイプであるSS型を持っており、日本人が遺伝的に見ても物事を悲観的に捉えやすく、それにより冒険よりも安定や確実といったものを選択しやすい傾向があるのです。

このように遺伝子と生まれ持った気質の関係性について見ていくと、性分というものが前提に存在するので努力や経験という要素は意味をなさないように思われますが、そうとも言い切れないものがあります。

確かに、親から受け継ぐ遺伝子の組み合わせで決まる特徴というのは存在していて、それはほぼ一生変わることなく、経験や環境の影響を受けないものもあります。

しかし一方で遺伝子の影響の大きさが環境や経験次第で変化することもあるのです。

環境が遺伝にどう作用するのか

双生児に詳しい慶應義塾大の安藤寿康教授は、双生児研究を進めて行く過程で、外向性、神経質さ、知能テストの成績などの特徴に関しては、親から受け継ぐ遺伝の影響が少なからず関与していることを明らかにしていますが、言語性の認知能力や学業成績そのものについては、遺伝の影響だけではなく家庭環境の影響も無視できないとしています。

その理由は、言語的なものというのが家庭内で用いられる話し言葉であったり書き言葉であったりを情報源として、言語に対する認知能力の鍛錬に繋がるからであり、学業成績というのも、両親が勉強熱心であれば学業をしやすい環境を整えやすいというものが大きく関わっているからです。

また子育ての傾向に関しても同じようなことが言えるのではないかと思います。

不安障害を抱える人の子どもにそうではない人と比較して不安障害が起こりやすいのは、子どもが強い不安を感じやすくしてしまう子育ての傾向が強くなってしまうからです。

過保護に育ててしまうというのは子どもを不安にしてしまう例として挙げられますが、この過保護の背景には親の不安というのが見え隠れしているのです。

過保護の対極にある虐待や育児放棄も同様です。こちらも批判的に育てられることで、自己肯定感や自尊心が低くなってしまい子どもを絶えず不安な状態にしてしまいます。

ただ先程述べたように、遺伝的な要素によって生まれ持った気質が決まるものも存在します。

そして現在、人間の心や行動選択につながるメカニズムの全てには、その人一人ひとりの遺伝要素が関わっているものの、そのメカニズムがどのように機能するかということについては環境も少なからず関わっているとされています。

その証拠に、3歳半から4歳にかけての幼児の感情の変化に及ぼす遺伝と環境の影響を調べたところ、不安を強く感じさせたり、落ち込んだりといった感情の変化は、親のしつけが厳しすぎたり、親の気分次第で接し方にムラがあったりするほど、個人差が大きくなることが示されています。

つまり生まれ持った気質で不安を感じやすい、心配しやすいタイプであってもその後の環境次第では、そういった傾向を小さくできる可能性があるということです。もちろんその逆で不安を増長させるような環境であれば、もっと不安を感じやすくなってしまい不安障害を発症しやすくなってしまうと言えるでしょう。

私たちは、往々にして遺伝と環境を別にして考えてしまうことがあります。

しかし実際のところは、遺伝と環境は密接に関わっており、また環境の影響というのは同じような環境にいる人に同じような効果を与えるのではなく、その人の遺伝的な要素によって効果は異なっています。

そしてそういった意味で決して遺伝と環境は切り離されるものではなく相互作用が存在しているのです。

かくいう不安障害についても、生まれ持った気質として不安を感じやすい人というのは存在していて、そして環境によって発症するかどうかが決まってしまう部分はあると言えるでしょう。

だからこそ、一人ひとり異なる遺伝的な要素をしっかりと理解し、そして一人ひとり違う生まれ持った気質を最大限活かす環境があるということもまた同じように理解していかなければいけないのです。

今もなお不安障害に苦しんでいる人というのは、もしかしたら現在置かれている環境が症状をより一層ひどくしている可能性があるのかもしれません。

残念ながら生まれつきの気質は変えることはできません。どうしても不安になりやすい人はなりやすいのです。しかしその不安になりやすい傾向を最小限にとどめることは、環境を変えることによって達成することはできるのです。

遺伝的な部分、環境的な部分、両方を正しく捉えることが不安障害の症状を良くしていくためには必要不可欠なのかもしれませんね。

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