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会食恐怖のパターンを知って治療に役立てよう

会食恐怖とは、人前で食事をすることに対してその状況に合致しないほどの強い不安や恐怖を感じ、日常生活や社会参加に大きな支障をきたしてしまう心の病気です。

人前で食事ができないことは食事の機会そのものを避けてしまうことに繋がっているため、結婚式や送別会など大切な行事に参加したくてもできなかったり、人との出会いのきっかけとなる場が限られてしまったりと人生の質の低下という面から考えても会食恐怖を侮ってはいけません。

また会食恐怖を抱える人は往々にして、修学旅行をやむを得ず回避した経験、どこかで昼食や夕食を食べなければいけないという理由から旅行ができない経験など、周囲に話さないだけでいくつもの辛い経験があることでしょう。

ところで会食恐怖は核家族化に伴う食生活の変化、家族とのふれあいが少なく子どもが一人で食事する孤食の増加といった、一昔前の食行動とは様変わりした現代社会の食行動に関連して現れた現代病ではないかと思う人も多いと思います。

もちろん近年、対人関係のストレスが急増していますのでそうした側面も少なからずあるでしょう。

しかし会食恐怖そのものについては、ここ10年の間に突然現れたものではなく、40~50年前から見られていた恐怖のひとつなのです。社交不安障害に関連する書籍の中にもその記述が残されています。

ところが当時は、社交不安障害(社交不安症)という名称ではなく神経症(神経質症)や対人恐怖症に含まれる恐怖のひとつとして語られてきた部分があり、会食恐怖そのものは見過ごされてきた可能性があるように思います。

会食恐怖については、今日では社交不安障害(社交不安症)のひとつとして考えられることが多いと思います。私自身も会食恐怖は社交不安障害の一部だという認識をしてきました。

しかし「会食が困難になる」という状態にもう少し焦点を当ててみると様々なパターンがあることが分かりました。そして症状にも千差万別であり、会食恐怖を抱いてしまった経緯や境遇も様々であることから、単一的な治療法では難しく、いくつかの治療法を組み合わせて治療に取り組むことが症状をより改善し、ひいては克服に繋がると言えます。

会食恐怖のパターン

会食恐怖の症状は人によって様々で断定できるものではないですが、会食恐怖を自覚している人の多くは以下のような症状が表れることを訴えています。

  • レストランやカフェなどの公共スペースでの食事の機会に強い恐怖を感じる
  • 周りの人やその場の雰囲気が気になって食事ができない
  • 目の前に食事が運ばれてきた瞬間に「残さず食べなければいけない」という思考に陥る
  • 過度の緊張から「気を失って帰れなくなるのではないか」という不安に駆られる
  • 食事中に「吐くのではないか」、「腹痛になるのではないか」という強迫的な観念に襲われる
  • 箸やフォークを持つ手が震える
  • 会食を考えるだけで急な吐き気や下腹部の不快感、胃がムカムカする

会食恐怖に関して、明確に精神医学的な診断名が決められているというわけではありません。『DSM-5』や『ICD-10』にも「会食恐怖」あるいは「会食恐怖症」という診断名や病名は存在していません。

そのため症状や現象として会食恐怖が存在しており、そのような症状に当てはまるものとして「社交不安障害」や「限局性恐怖症」という診断名で説明されることが多いです。

食行動について問題が表れるものとして「摂食障害」という病気があります。特に女性に多く見られる病気ですが稀に男性でも発症することがあります。

摂食障害では当事者の中に存在する自己に対する嫌悪や拒絶が中核となり、少しでも太ることに対する過剰な恐れが繰り返されて、衝動的な過食と嘔吐が症状として表れます。そしてそういった行動を誰かに見られたくないことから他者との食事を避ける傾向にあります。

摂食障害のケースを会食恐怖と呼べるのかどうかという点については様々な見方があると思いますが、会食恐怖はあくまでも一次的な問題として考えられていることが多いです。そのため何か別の主症状があって二次的な問題で会食恐怖に陥っている場合は、また違った捉え方をすることがあります。

ただ診断名や病名に囚われすぎてはいけません。重要なのは症状を改善・克服するのであって、診断名や病名は治療のプロセスを組み立てるための存在です。

しかしながら一般的に会食恐怖というのはあまり馴染みがないもので、第三者に恐怖の存在を知ってもらうためには診断名というのは武器になりますし、治療法においても何も分かっていない状況の中から手さぐりで探すよりも、ある程度、筋道ができている状態から自分に適した治療法を選択できるほうが効率もいいのではないかと感じます。

これまで研究論文や当事者の経験談を基に、会食恐怖を呈するものとして以下のパターンを挙げてみました。

社交不安障害に該当する会食恐怖

会食恐怖に関心がある人は社交不安障害についてもよくご存じだと思いますが、社交不安障害の根底には「他人に対して不快な思いをさせるのではないか」、「自分が恥をかいて恥ずかしい思いをしてしまうのではないか」といった思考があります。

そのような思考があることで他人からの視線が過度に気になったり、食事を残すことへの罪悪感を抱いたりするのが特徴です。

また社交不安障害による会食恐怖の場合、会食恐怖だけを抱えていることは稀で、その他の特異的な恐怖や不安感情を抱えていることが多いと言われています。

例えば、会食恐怖に加えて視線恐怖や振戦恐怖、自己臭恐怖などを持ち合わせており、その結果として人が多いレストランやカフェなどの雰囲気が苦しかったり、食器を持つと震えてしまうのでテーブルマナーを必要とするお店が辛く感じたりします。

また社交不安障害による会食恐怖の場合、自宅なら家族と食事ができるけれど一歩外に出たら、たとえ家族と一緒であっても食事ができないと悩む人が多いように感じます。もちろん症状によってケースバイケースではありますが、多くの人が集まってくる状況に対する嫌悪感は少なからず持っており、会食の場面もそのような類として捉えていると言えます。

人間は緊張や恐怖から自律神経における交感神経が優位となり胃や腸の働きが抑制されてしまいます。そのため会食場面に対する恐怖心が強いと交感神経が強く作用し食欲自体も失われ、なおさらご飯が食べられなくなってしまうのです。

可能性の域の話ではありますが、社交不安障害のケースでは会食恐怖だけではなくその他の恐怖も持ち合わせていることから、症状の発症が食事行為そのものよりももう少し広い範囲の状況で起こると言えます。

さらに会食恐怖の背景として「食事を残すことに対する申し訳なさ」、「食べないと変に思われてしまうのではないかという心配」、「楽しい雰囲気を自分が壊してしまうかもしれないという自責感」などがあって会食場面を回避してしまい、症状をより一層強めていると考えられます。

限局性恐怖症に該当する会食恐怖

限局性恐怖症に該当する会食恐怖は会食恐怖だけを抱えている状態と言えるしょう。

会食恐怖を抱えている人の中には、食事の時に限って他人の目が気になったり、著しく緊張して全く食べられなかったりするケースが往々にしてあります。

人と接することに何の問題もなく、むしろ他人との会話を楽しみ、人が集まるところにも好んで行くことができるのに、いざ食事をするとなった時に条件反射のように恐怖を感じてしまうのがこのタイプの特徴とも言えます。

この限局性恐怖症に該当する会食恐怖は、便宜的に「会食恐怖症」とも呼ばれ海外では「Deipnophobia」といった名称で解説されています。

このタイプの会食恐怖では、「会食場面に対する著しいトラウマ体験」、「食事マナーについての厳しいしつけ」など、食事とネガティブイメージが結び付けられてしまい、条件反射のように常に会食場面で思い出してしまい発症している傾向にあります。

また誰かが嘔吐している姿があまりにも強く印象に残ってしまい、それが原因となって自他問わず嘔吐している姿に恐怖心を感じる嘔吐恐怖症も限局性恐怖症として考えられており、この嘔吐恐怖症は会食恐怖症と併発することも珍しくありません。

症状が会食恐怖だけなので、社交不安障害や強迫性障害、場面緘黙症(選択性緘黙)などよりも生活に対する影響は限定的であるものの、食べるという行為は生きる為に必要不可欠であり、また会食機会を避けてしまうことで相手から「付き合いが悪い」と受け止められてしまい、人間関係が上手くいかなくなったり、そのことで自己嫌悪に陥ったりすることがあるため、また新しい苦しみを生んでしまいます。

もちろん程度にもよりますが限局性恐怖症による会食恐怖は、状況次第では症状を上手に隠すことができるため、自分から相手に打ち明けない限り周囲の人に知られることもなく生活することが可能で、それがかえって症状を慢性化させる要因になることもあります。

身体表現性障害に該当する会食恐怖

身体表現性障害というのは、本人の自覚症状に見合う身体的な異常や検査結果がないにもかかわらず、吐き気や痛みなどの身体的な症状が長期間にわたって続く病気です。

なお「身体表現性障害」は『ICD-10』における診断名であり、『DSM-5』では「身体症状症」、その病気が含まれるグループを「身体症状症および関連症候群」として位置付けています。

ところで「ヒステリー球」という言葉を聞いたことはありますか。咽頭部にかたまりがある感じを抱き、飲み込みを阻害しているものです。

実際に咽頭部に病気があるわけではないのに感覚異常があることで、水や食べ物を飲み込むのが困難になってしまいます。また症状次第では呼吸困難を招いてしまうこともあります。そしてその結果として会食恐怖を抱いているケースも少なからずあります。

このケースでは明らかな感覚異常を抱いているので、感覚異常を取り除くことで会食恐怖の改善に結びつくことが期待できます。

「ヒステリー球」のような咽頭部の感覚異常に対してはお薬による処方が一般的です。その中でも漢方薬である柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)や半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)の服用が奏功した事例が確認されています。

場面緘黙症(選択性緘黙)に該当する会食恐怖

場面緘黙症(選択性緘黙)というのは特定の場面において話す能力を持っているのにも関わらず話せなくなってしまう心の病気です。この病気は緘黙に注目がいきますが、その他にも緘動という特定の場面において全く動けなくなるという症状があります。

そのため学校での給食や親戚の家での食事が全く食べられなくて、その理由を聞かれても答えられないという悪循環に陥ってしまう傾向があります。

本来ならば「体調が悪くて食べられない」、「アレルギーがあって食べられない」と説明すればその場をやり過ごすことが可能でしょう。しかし病気によって阻害されてしまうことにより、周囲の誤った対応で食事の機会そのものが著しい恐怖へと変わっていってしまうのです。

場面緘黙症(選択性緘黙)は先天的に「行動抑制」という気質を抱えている可能性が高く、環境の変化に対応しきれないことが多々あります。生まれつきの気質が会食の場の雰囲気に対して敏感に反応し、脳内において警戒アラームが発信されることで症状が顕在化していきます。

また場面緘黙症(選択性緘黙)の症状が改善された後に、後遺症として会食恐怖が残ってしまうケースも往々にしてあります。

予防的な観点から考えても、早い段階で安心できる環境づくりや自己否定に陥らないためのフォローを周囲の力を借りて目指していくことが求められます。

強迫性障害に該当する会食恐怖

会食恐怖を抱えている人の中には強いこだわりを持っているケースが少なからずあります。

一例ではありますが、自分なりの食べ方や飲み方があり、そのことに対して上手にできないことをひたすら問題視することがあります。

食事中に食べ物が飲み込めているのに「上手に飲み込めず、喉に詰まったかもしれない」という不安を抱いてしまい、パニック発作が起きてしまいます。ひいてはそのことに対する保証を求める確認強迫があり、周囲を巻き込んでしまうこともあります。

強迫性障害というのは、本来であれば思う必要がないのに必要以上に思ってしまう強迫観念とそれを打ち消そうとする強迫行為から成り立っています。会食場面での強迫観念が一層強まることで、強迫行為に陥ってしまうことを恐れ、その流れで会食恐怖を抱いていることもあるでしょう。

強迫性障害は周囲への巻き込みもあるため、周囲の適切な理解が必要不可欠になります。さらに強迫行為があることで他者から好奇な目で見られてしまい、自己否定を招きより一層症状が悪化してしまうこともありますのでしっかりとした見極めが大切です。

会食恐怖の症状は千差万別で、抱えている背景にも様々なきっかけや原因があるため、紹介したパターンが単独で表れるケースもあれば重なって表れるケースもあるでしょう。

もし「会食に対する恐怖や不安を感じることなく自然にご飯をたべられること」を目標とするならば、その目標を達成するうえで実際に会食の場を経験することなく治療していくのは難しいです。ただし会食恐怖というのは苦手というレベルでは語ることができないほど苦痛や疲労感を伴うことがほとんどなので、各々の症状の見極めと治療の戦略が求められます。

時にはお薬を服用して恐怖や不安を抑制し実際に会食の場を経験したり、会食に対する恐怖や不安感情と自分がリラックスしている状態を結び付け、恐怖や不安を徐々に軽減していったりすることも必要になるでしょう。

皮肉なことに会食恐怖は回避するごとに恐怖や不安がどんどん大きくなって悪化の一歩を辿っていきます。

誰かと一緒に食事することが怖いというのは、周囲から理解が得られにくいものです。それゆえ本人も自分のことを責めてしまいがちになってしまいます。中には会食恐怖を相談したくても相談できないケースもあるでしょう。

会食恐怖は早期に治療が開始されれば生活に対する支障も少なくなり、社会参加が制限されることもなくなります。当事者の多くが自分に適した治療に結びつくことを切に願います。

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