不安障害を主なテーマに、その症状や原因、治療法などについて、当事者や家族だけではなく、不安障害そのものを知らない人に向けて正しい認識や理解を目指して情報を発信しています。

  1. 不安障害ラボ
  2. 人の特性
  3. 共感性羞恥とは何か!?観察者羞恥やHSPとの関係について

共感性羞恥とは何か!?観察者羞恥やHSPとの関係について

ドラマやバラエティー番組を見ていて、誰かが恥ずかしい思いをしてしまうシーンを目にした時、自分もなんだか恥ずかしい気持ちになり、その場から離れたり、チャンネルを変えたりした経験がある人もいると思います。

「自分が恥をかくわけではないのに、なぜか恥ずかしい気分になってしまう。」

実は、そういった心理状態にはしっかりと名前が付いており、案外、自分以外の人も同じような心理状態を経験していたりします。

今回は、こうした他者の行為を見て恥ずかしいと感じてしまう心理的な現象について確認していきたいと思います。

共感性羞恥とは何か

他者の行為を見て恥ずかしいと感じてしまう心理現象については、だいぶ前から名前がついています。

1987年にMillerがこのような現象をempathic embarrassmentと定義したことに始まり、日本では対訳として共感的羞恥、あるいは共感性羞恥という名前で位置づけられています。

Millerが示した共感性羞恥というのは、共感的に他者を見ることで自分の行動以外が原因で自ら恥ずさを感じてしまう様子を示したもので、また、恥ずかしさに対する感受性が強い人のほうが、より共感性羞恥を感じやすいといわれています。

日本ではあまり馴染みの無い言葉ではありましたが、『マツコ&有吉の怒り新党』(2016年8月24日放送回)で取り上げられたことで、瞬く間に「共感性羞恥」という言葉が広がり、Twitterなどでは、共感を示すつぶやきが多く見受けられました。

またアンケート調査によれば、10人に1人の割合で感じる人がいるということもあって、こうした恥ずかしい気持ちになることを友人や親に話しても理解してもらえないことがあるという当事者の嘆きもありました。

周囲に理解されないからこそ、番組で取り上げられたわけですが、結果的に見れば、そういう感情を抱いてしまう人が中にはいるということが世間に広まったのではないかと思います。

しかしMillerが示した共感性羞恥には、共感性を通じて羞恥感情が本当に生まれたのかどうかということは明らかにされておらず、もしかしたら、相手の行為に、行為をした本人はたいして恥ずかしがっていないものの、単に見ている側の人が恥ずかしいと感じたにすぎないという場合も十分に考えられるのです。

この点に関しては、桑村幸恵先生の研究(2010)で示されているように、「共感性羞恥は観察者羞恥ではないか」という提唱があります。

共感性羞恥は本当は観察者羞恥のことでは!?

「共感」というのは、共に感じるということなので、一方が感じてもう一方が感じていないというのは「共感」と言うことができません。

つまり相手が本当に恥ずかしいと感じているかどうか分からずに、こちら側が恥ずかしいと感じてしまっている状態というのは、共感性羞恥に該当する場合もあれば、そうではない場合もありうるということなのです。

そうしたことから、先ほども名前を挙げましたが、桑村幸恵先生が、人の行為を見て感じる恥ずかしいという気持ちは、必ずしも行為者の感情に共感しているものではないとして、「観察者羞恥」という名称を用いて現象を研究しています。

確かに、相手が本当に恥ずかしいと感じているかは、実際に相手に確認しない限りは分かりません。その一方で、相手の行為を見たことで、自分が恥ずかしいと感じてしまうことについては分かります。つまりその行為を自分が目にしたという行動に、恥ずかしさを感じる原因があるのです。

このように考えると、「共感性」という言葉を用いるよりは「観察者」という言葉を用いたほうがより適切なのではないかということなのです。

「見ている側がなぜ恥ずかしいと感じてしまうか」について、いくつか理由が挙げられており、「同類と思われる可能性がある」、「今まで築上げた自分のイメージが下るから」、「見てはいけないものを見てしまった」などがあります。またそれに加え、行為をする人と観察する人との心理的な距離が近くなるほど、恥ずかしさが起こりやすいことが確認されています。

共感性羞恥とHSPとの関連性

少し視点を変えて、「もしも相手も恥ずかしさを感じており、そのことをまるで自分も同じように感じているケース」では、HSPの特性と似通う部分があるのではないかと思います。

HSP(Highly Sensitive Personの略称)という言葉は、アメリカの心理学者Elaine N. Aronが生みだした言葉で、日本語に訳せば「とても敏感な人」となります。

HSPの人がどのくらい存在するかというと、日本ではだいたい5人に1人が持っていると言われています。アンケート調査にて、共感性羞恥を示す人の割合が10人に1人ということでしたので、割合的にはHSP気質の人のほうが多くなっています。

HSPの特徴としては、以下のような特徴が見受けられます。

  • 自分の外の世界に対して注意深くなる
  • 感情的な反応が強く、共感力が高い
  • ほんの些細な刺激に対しても察知する
  • 物事に対する深い洞察力がある
  • 慎重さ、正確さ、小さな違いを見つける作業が得意
  • 自分についてあれこれ考えることが多い

主な特徴にもあるように、洞察力が高く注意深い、共感力もある点は、まさに共感性羞恥を引き起こす土台となっているのではないかと考えることができます。

例えば、大勢の前でひとりの人が叱られているシーンがあったと思います。

大勢の人の前で叱られるというのは、羞恥心を抱きやすいシチュエーションとして有名なのですが、大勢の人のなかには、「うわー、叱られてるよアイツ」と他人事のように軽蔑した目で見る者がいたり、まるで自分が叱られているかのように胸が痛み、恥ずかしさを喚起しながら見ている者がいたりします。もちろんそれ以外に、ほぼ無関心という目で見ている者もいることでしょう。

その中で、まるで自分が叱られているかのように胸が痛み、恥ずかしさを喚起しながら見ている者というのは、気質的に見ればHSPに該当する可能性が高く、そして共感力や感受性の高さが災いして精神的なダメージを被りやすいのです。

またHSP気質を持つ人はそうでない人と比べて、ミラーニューロンシステムを含む共感を司る脳領域が活発に働いていることが確認されています。

このミラーニューロンシステムというメカニズムは、まるで鏡に映したかのように相手の感情を自分の感情のように捉える反応を示す脳機能システムと言われているものです。

ミラーニューロンシステムが活発に働くことで、相手の感情に対して深い共感が生まれ、気持ち的にも同調してしまう傾向にあります。

つまり相手が抱く恥ずかしいという感情は、自分もまた恥ずかしいという感情を抱き、こうした関係性は共感性羞恥と類似すると言えるでしょう。

ただ厳密に言えば、この話は仮説的な部分を含んでおり、科学的な観点で両者を関連づける確たる証拠というのは見つかっていませんし、一方で反論する証拠も見つかっていません。

しかしながら、科学的に明らかにされているミラーニューロンシステムを元に、共感性についてもっと色々なことが分かってくれば、両者の結びつきは明確なものになってくるのではないかと思います。

今回は「共感性羞恥」という心理現象について見ていきました。

今のところの研究状況で言えば、「共感性羞恥」を感じる人というのは、どちらかと言えば「観察者羞恥」を感じる人と言い換えることができるのではないかと思います。

また仮説的な話ではありますが、観察者羞恥を感じやすい人というのはHSP気質を兼ね備えている可能性が高いのではないかと思います。

まるで自分が恥をかいたかのような感覚に陥ってしまう心理的な状態は、割合的に見れば理解されづらい現象です。自覚している人が少ないぶん、周囲に対してなかなか口にできないということもあるでしょうし、理解されないことを認識しているからこそ、自分の中で収めてしまっていることもあるでしょう。

ただ共感性であろうと観察者であろうと、相手を見て自分がどう感じるかをしっかり認識できているというのは、自分の状態を理解している、自分の中にいるもうひとりの自分を客観視できているということだと思います。

そうした自分をつぶさに観察できる力は、素晴らしい能力でもあると言えます。

他人には感じにくいものではありますが、そうした能力を大切にし、自分のプラスに働くよう心掛けていけたらいいなと思います。

スポンサードリンク

アーカイブ

月別一覧
年別一覧

profile

管理人:ミヤシタソウジ

プロフィールについて

当サイトについて

Twitter:@soji_miyashita

当サイトに関すること、その他個別の問い合わせがありましたらメールにてお願いします。

Gmail:soji.miyashita★gmail.com
(迷惑メール防止のため、送る際は★を@に変えてください)

スポンサードリンク

PAGE TOP