不安障害に関する症状や原因、治療法などについて、その当事者や家族、また不安障害を知らない人に向けての正しい理解を目指した特化サイトです。

不安障害ラボ

不安障害に関する症状や原因、治療法などについて、その当事者や家族、また不安障害を知らない人に向けての正しい理解を目指した特化サイトです。
>>当サイトの詳しい説明はコチラ

  1. TOP
  2. PTSD
  3. PTSD(心的外傷後ストレス障害)とはどんな病気!?症状、原因、治療法について

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とはどんな病気!?症状、原因、治療法について

たいていの人は一生涯のうちに自身の生命を脅かすような出来事に遭遇します。例えば、自然災害、暴行、強姦、交通事故、近親者の急死などが該当しますが、このような出来事に遭遇した際、人によってはその経験や体験が大きなストレスとなり、対処できない状態に陥ってしまうことがあります。

このような経験や体験は心的外傷的出来事と呼ばれ、心的外傷的出来事が引き金となりその後身体に異変が現れ、長期的かつ持続的な不調が続いた場合、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の可能性が疑われます。

今回はPTSDとは何か、どういう症状が見られるのかということについて具体的に見ていこうと思います。

なお、PTSDは6歳以下の小さな子どもでも発症しますが、その症状は10代の青年や成人が見せるものとはまた違っていて、独特で特異的な症状を示すことがあります。なので今回は基本的なPTSDの症状を知るということで、青年や成人のPTSDの症状を対象に見ていきたいと思います。

PTSDとは何か

今でこそPTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉は私たちにとって馴染みのある言葉になっていますが、その歴史をひも解くと、戦地に行った兵士たちが想像を絶するような出来事を体験し、それがもう何年も前のことだというのに、その光景がフラッシュバックし、さらには感情の麻痺、不安や抑うつ状態に陥ってしまう後遺症に悩まされたことから、PTSDが確立される前は戦争神経症や外傷神経症などと呼ばれていた時期がありました。

日本も戦争に参加した国なので、戦時中や終戦直後においてPTSDという言葉はなくても同様の症状に苦しんだ人も多かったのではないかと思います。

その後日本においてPTSDという言葉が盛んに聞かれるようになったのは、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件などの大きな災害や事件がきっかけでした。さらに災害や事件だけでなく、家庭内での虐待やDVなどによってもPTSDを発症することが分かり、一般的にも知られるようになりました。

『DSM-5』によると、PTSDは以下のような基準を持って診断されます。引用部分が少し長いので読みづらいと思います。後ほど症状のポイントをまとめますので飛ばし読みで構いません。

以下の基準は成人,青年,6歳を超える子どもについて適用する。

  1. 実際にまたは危うく死ぬ,重傷を負う,性的暴力を受ける出来事への,以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の形による曝露
    • 心的外傷的出来事を直接体験する
    • 他人に起こった出来事を直に目撃する
    • 近親者または親しい友人に起こった心的外傷的出来事を耳にする。家族または友人が実際に死んだ出来事または危うく死にそうになった出来事の場合,それは暴力的なものまたは偶発的なものでなくてはならない
    • 心的外傷的出来事の強い不快感を抱く細部に,繰り返しまたは極端に曝露される体験をする(例:遺体を収集する緊急対応要員)
  2. 心的外傷的出来事の後に始まる,その心的外傷的出来事に関連した,以下のいずれかの1つ(またはそれ以上)の侵入症状の存在
    • 心的外傷的出来事の反復的,不随意的,および侵入的で苦痛な記憶
    • 夢の内容と感情またはそのいずれかが心的外傷的出来事に関連している,反復的で苦痛な夢
    • 心的外傷的出来事が再び起こっているように感じる,またはそのように行動する解離症状(例:フラッシュバック)
    • 心的外傷的出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する,内的または外的なきっかけに曝露された際の強烈なまたは遷延する心理的苦痛
    • 心的外傷的出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する,内的または外的なきっかけに対する顕著な生理学的反応
  3. 心的外傷的出来事に関連する刺激の持続的回避,心的外傷的出来事の後に始まり,以下のいずれか1つまたは両方で示される
    • 心的外傷的出来事についての,または密接に関連する苦痛な記憶,思考,または感情の回避,または回避しようとする努力
    • 心的外傷的出来事についての,または密接に関連する苦痛な記憶,思考,または感情を呼び起こすことに結びつくもの(人,場所,会話,行動,物,状況)の回避,または回避しようとする努力
  4. 心的外傷的出来事に関連した認知と気分の陰性の変化,心的外傷的出来事の後に発現または悪化し,以下のいずれか2つ(またはそれ以上)で示される
    • 心的外傷的出来事の重要な側面の想起不能(通常は解離性健忘によるものであり,頭部外傷やアルコール,または薬物など他の要因によるものではない)
    • 自分自身や他者,世界に対する持続的で過剰に否定的な信念や予想(例:「私が悪い」,「誰も信用できない」,「世界は徹底的に危険だ」,「私の全神経系は永久に破壊された」)
    • 自分自身や他者への非難につながる,心的外傷的出来事の原因や結果についての持続的でゆがんだ認識
    • 持続的な陰性の感情状態(例:恐怖,戦慄,怒り,罪悪感,または恥)
    • 重要な活動への関心または参加の著しい減退
    • 他者から孤立している,または疎遠になっている感覚
    • 陽性の情動を体験することが持続的にできないこと(例:幸福や満足,愛情を感じることができないこと)
  5. 心的外傷的出来事と関連した,覚醒度と反応性の著しい変化。心的外傷的出来事の後に発現または悪化し,以下のいずれか2つ(またはそれ以上)で示される
    • 人や物に対する言語的または身体的な攻撃性で通常示される,(ほとんど挑発なしでの)いらだたしさと激しい怒り
    • 無謀なまたは自己破壊的な行動
    • 過度の警戒心
    • 過剰な驚愕反応
    • 集中困難
    • 睡眠障害(例:入眠や睡眠維持の困難,または浅い眠り)
  6. 障害(基準B,C,DおよびE)の持続が1カ月以上
  7. その障害は,臨床的に意味のある苦痛,または社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている
  8. その障害は,物質(例:医薬品またはアルコール)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない

-American Psychiatric Association(高橋三郎、大野裕、染矢俊幸ほか訳)『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』医学書院より引用-

『DSM-5』になってからは、PTSDは心的外傷およびストレス因関連障害群のひとつとして位置付けられています。

急性ストレス障害や適応障害という言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、これらもストレスが大きく関わって発症する病気なのでこのグループに属します。

その中でも急性ストレス障害はPTSDとほぼ同じ症状が見られますが、心的外傷的出来事を経験した後、3日~1カ月以内であれば急性ストレス障害、1カ月経っても症状が持続的だった場合はPTSDと診断されます。つまり時間的な視点からPTSDと急性ストレス障害は区別されます。

PTSDを患う人の中には一生涯症状に苦しむ人もいますので、早期的な治療介入が求められるのです。

PTSDの三大症状

PTSDに見られる症状はその人の感じ方やストレス耐性の状態によって変わってくるものの、大まかには以下の3つの症状が確認できます。

心的外傷的出来事の再体験

フラッシュバックという言葉を聞いたことがあると思いますが、心的外傷的出来事が再び起こっているように感じたり、あるいは思い出させたりする現象をフラッシュバックといいます。

フラッシュバックの他にも繰り返される悪夢や幻覚に襲われ、『ハリーポッターシリーズ』に登場するディメンターのように日常生活の中に侵入してくる感覚に陥ってしまい、時には幸福感さえも奪ってしまうことがあります。

心的外傷的出来事を想起させることの回避

心的外傷的出来事を想起させるモノ、人、場所を避けるようになり、症状が深刻になるにつれて社会的な活動さえも回避するようになります。

回避的な行動が強まることで、人生そのものについて諦めてしまうような生き方や人生観に傾いてしまい、未来への希望を狭めてしまうこともあります。

過覚醒症状

過覚醒により神経が過剰に緊張し高ぶった状態になってしまい、交感神経と副交感神経のバランスもまた崩れてしまいます。そして入眠や熟睡の困難、イライラや怒りの爆発、集中力の散漫、音に対する過敏な反応などが見受けられます。

特に、イライラや怒りはPTSDによる緊張や不安を表現する手段となり得るため、「自分だけがこのような目に遭うのは理不尽である」という思いから怒りの矛先が周囲に向いてしまい、人間関係に亀裂を生んでしまうこともあります。

PTSDの症状により当事者は生活の質、他者との関わり方、社会的な活動などに対して様々な問題が生じ、それが不安を増長させたり抑うつ状態を招いたりすることにもつながります。

PTSDになってしまう原因

自身の生命を脅かすような出来事に遭遇しても、そのことが心的外傷的出来事になる人もいればならない人もいます。

その違いは何でしょうか。

なるならないについては非常に個人的なもので、生まれつきの気質、価値観、文化的背景、行動スタイルなどが関係しています。そしてそれらが反映して各々の物事の受け止め方に違いが生まれ、PTSDのなりやすさに影響を及ぼします。

戦争に行く屈強な兵士でさえもPTSDになる可能性があることを考えると、誰にでもPTSDを引き起こすような心的外傷的出来事となることは存在すると言ってもいいでしょう。

またPTSDの前段階に急性ストレス障害が見られますが、急性ストレス障害であってもそこからPTSDへと発展していくかは、当事者の置かれている環境が影響している可能性が考えられます。

例えば、心的外傷的出来事を想起させるような環境に絶えず囲まれていたり、さらなる生命の危機に直面するような環境であったり、PTSDの発症リスクを高めるような環境ではPTSDを引き起こしやすくしてしまいます。

本来人間は、周囲に起きている情報に対して理解しようとする働きを生まれつき備えています。しかし心的外傷的出来事になるようなことは、本人にとって圧倒されるような経験であり、また受け入れにくく理解しがたい情報を含んでいるゆえ、通常の出来事よりもその情報を処理する過程において強い苦悩が伴い、PTSDに見られる侵入的な思考、感情の麻痺、回避的な思考が起こりやすくなります。

次に説明する治療法に繋がる話ですが、PTSDが回復していく過程で家族や友人の適切なサポートがあることで回復しやすくなるケースがあります。心的外傷的出来事を経験した後、ひとりでは情報の対処が難しい状況の中で、周囲のサポートが受け入れ難い情報を細分化する役目があるのではないでしょうか。

PTSDの主な治療法

PTSDには抑うつや不安が伴うこともしばしばあり、抗うつ薬や抗不安薬を処方されることがありますが、それはあくまでも対症療法に過ぎず根本的な治療には至りません。

そのためお薬以外の治療法が選択肢として考えられます。ただ正直なところ、PTSDに対する治療法はこれといった単一の治療法が存在するわけではなく、当事者本人の心的外傷(トラウマ)の状況によって様々な治療が考えられます。

代表的なものとしては、曝露療法(エクスポージャー法)や系統的脱感作法、眼球運動による脱感作を目的としたEMDRなどがあります。

また意外かもしれませんが、ヨガが心的外傷を癒す効果があることが研究結果(van der Kolk BA,2014)から分かっています。

単一の治療法に固執することなく様々な治療法を実践していくことが求められるでしょう。

それと適切な治療法も大切ではありますが、それ以上にサポートする側の姿勢も大切になってきます。PTSDを持つ人は心的外傷的出来事を思い出したくないのが本当のところなので、無理に思いだそうとすればフラッシュバックに襲われたり、衝動的な行動に出たりする可能性があるため、周囲のサポートが逆効果になってしまうこともあります。

サポートの仕方や接し方も治療法以上に重要な役目となることを理解しておく必要があります。

心的外傷(トラウマ)についてもっと知りたい人のために

先ほどもトラウマという言葉が登場しましたが、今日においてはトラウマは日常の様々な場面で頻繁に聞かれるようになったと思います。

トラウマのことを心の傷と呼ぶ人もいると思いますが、もう少し専門的に言うと「心的外傷」という言葉で表されます。冒頭から何度も「心的外傷的出来事」という言葉が登場していますが、この言葉は「トラウマとなる出来事」と言っても意味的には変わりません。

しかしトラウマという言葉が軽い意味として使われることもあり、また本人以外の人に自身が抱えているトラウマの存在を証明することが難しいため、心的外傷的出来事さらに言えばPTSDそのものを軽く考えてしまう人もまだまだいらっしゃいます。

心的外傷について自分以外の人にも理解してほしい、また自分自身のトラウマ体験がどういうメカニズムで起こっているのか詳しく知りたい、そう思っている方に役立つ1冊として『身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法』があります。

著者自身がトラウマにまつわる諸問題に対して30年間もの長きにわたって格闘してきた第一人者であり、神経科学の知見からトラウマが私たちの身体にどのような痕跡を残すのか、また科学的根拠に基づいたトラウマの治療法の紹介など、少々分厚い本であるもののこの一冊でトラウマに関する知識を身につけることが可能です。

この本を探しに図書館に行ったら、ちゃんと置いてありました。もし機会があれば手に取って読んでみてください。

ある出来事が心的外傷的出来事になるかどうかはその人次第です。それゆえ自然災害や人的災害、ありとあらゆる出来事や現象がその対象になりうることを知っておく必要があるでしょう。

心的外傷を負った人はフラッシュバックを恐れ体験した出来事を話さないことがあったり、そういった体験を周りの人が経験していないという理由で、周囲の人を信頼することができなかったりするケースが往々にしてあります。

しかしながらPTSDは早期に治療が施されなければ、その症状が一生涯続く可能性があるため看過することはできません。

そもそもトラウマ体験によって脳の警報システムが誤作動を起こしている状態にあり、日常生活の中で何気ないことに対しても過剰に脅威を感じやすく、当たり前の生活を送るのが難しくなります。時には生きている感覚、感情を表現することさえも失われてしまうこともあります。

PTSD当事者の背景にどのようなトラウマ体験があるのかは各々によって違うため、どの治療法が最適かは実際に様々な治療法を試してみるしかありませんが、何かしら症状の改善に繋がる治療法はあるはずです。

今回、PTSDについて症状の特徴や治療法、参考になる書籍について紹介しました。

もしかしたら身近にPTSDに苦しんでいる人がいるかもしれません。あるいは将来、自分自身がPTSDで苦しむことになるかもしれません。PTSDで苦しむ人が少なくなるためにも、PTSDについて一人でも多くの人が関心を持ってほしいと切に思います。

参考文献

アーカイブ

月別一覧
年別一覧

profile

管理人:ミヤシタソウジ

プロフィールの詳細はコチラ

当サイトの説明はコチラ

Twitter:@soji_miyashita

当サイトに関すること、その他個別の問い合わせがありましたらメールにてお願いします。

Gmail:soji.miyashita★gmail.com
(迷惑メール防止のため、送る際は★を@に変えてください)

PAGE TOP