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視線恐怖の原因、症状、治療法あれこれ

欧米と比べると日本人は視線を回避する傾向にあります。

文化的な背景から見ても視線回避文化と呼ばれるほど、例えば、挨拶をする際にお辞儀をするという行動も、アイコンタクトをする頻度が低いというのも、日本人らしさであり、日本の文化に根付いた仕草や振る舞いだと言えます。

しかし時に視線というのは、相手を傷つけたり自分を苦しめたりする厄介な存在になってしまいます。

今回紹介する視線恐怖もその厄介な存在のひとつでしょう。

視線恐怖は道端ですれ違う人の視線がとても気になる、「自分の視線が相手を不快にさせているのでは」と不安になるなど、他人や自分の視線を過剰に意識するあまり、恐怖や不安で身体が正常に働かなくなってしまうのが特徴です。

日本では視線を意識する人が多いので、視線恐怖は文化と結びついた文化結合症候群(文化依存症候群)と海外からは見られていましたが、海外でも同様の症状に悩む人が表れたため、現在は社交不安障害を代表する症状、そして下位に属するサブタイプのひとつとして考えられています。

では視線恐怖が、どういった症状、どのような特徴があるのか見ていきたいと思います。

視線恐怖の種類

視線恐怖には大まかに言えば、他者から見られるという恐怖と自分が相手を見ることで不快にさせるのではという恐怖に分けることができます。

そしてそこからもう少し踏み込んでいくと4つの視線恐怖に分けることができるでしょう。

もちろん、明確に境目があるわけではないので、人によってはまたがってその症状が表れることもあります。

その4つとは自己視線恐怖、他者視線恐怖、脇見恐怖、正視恐怖です。

自己視線恐怖

自己視線恐怖は自分の視線が「相手を不快にさせているのでは」と思ったり、「自分の視線が相手を傷つけているのでは」と感じたりすることで、次第に相手を見ることに対して恐怖や不安を感じていまうのがこの恐怖の特徴です。

人は自分の暴言や暴力で相手を傷つけてしまうことがありますが、その分、理性を働かせて抑えることができます。しかし視線というのは、暴言や暴力とは違って、ある視線が相手を傷つけるかどうかは不明瞭であることが多く、理性云々の話ではどうしようもできないことがあります。

例えば、歌舞伎の世界に「見得をする」という表現があります。その時の目つきというのは一見怖そうに見えるものの、凜としていて引き込まれそうになるくらい格好いいものです。

ところが普段の生活でそのような目つき、視線を送っていたら、大半の人は近寄りがたく感じ取ってしまうのではないでしょうか。

自己視線恐怖の場合、相手に対する視線の向け方ということもそうですが、その時の目つきや目の動きということにも悩んでいるケースが多く見受けられます。

また相手に脅威や不快な気持ちを与えるかもしれないといっても、実際にそのようにしたい訳ではなく、むしろその逆の気持ちが背景にあり、だからこそ周囲と自分との間にあるズレによって当事者は苦悩してしまいます。

自己視線恐怖を感じている人は、時には相手に対する申し訳なさから、俗にいう「消えたい症候群」に陥ってしまうことがあります。

それだけ相手に対する配慮や察する気持ちというのが根底にあって、その配慮を台無しにしてしまう可能性がある視線ということに恐怖や不安を感じるのです。

他者視線恐怖

他者の視線に対して強い恐怖や不安を感じるのが他者視線恐怖というものです。

他者視線恐怖もやはり「他人から不快に思われているのではないか」、「変なふうに見られているのではないか」など、他者の視線というフィルターを通して感じ取ってしまいます。

他者視線恐怖は社交不安障害で見られる恐怖群に共通して見られるものでもあり、赤面恐怖、会食恐怖、排尿恐怖、パフォーマンス恐怖などは視線恐怖と共通する部分も多いです。

また視線恐怖に関する研究の歴史を辿れば、内沼(1977)の記述によると、視線恐怖は人見知りにはじまり、赤面恐怖へと進み、そして表情恐怖、最後に視線恐怖と症状が変化することを示唆しています。

ちなみに、赤面恐怖というのは自分の顔が赤面することに対して恐怖を感じるもの、表情恐怖というのは顔の表情がこわばることに対して恐怖を感じるものであり、共に視線恐怖よりも程度が軽いという扱いになっています。

ただし程度が軽いといっても、放っておけば赤面恐怖にしても表情恐怖しても視線恐怖に発展していくので、程度が軽い段階で治療介入が求められます。

また人見知りを起点に症状が変化していくケースの他にも、もともと活発であったのに、いじめなどの対人トラブルをきっかけに自己防衛反応として他者の視線を過度に意識するようになり、結果として他者視線恐怖になってしまうケースもあります。

いずれの場合であっても他者視線恐怖を抱えると、その恐怖心の強さ、不安感の強さから著しく活動範囲が狭まってしまい、ひいてはひきこもり状態を招くこともあります。

脇見恐怖

脇見恐怖は自分の視界に入った人や物を、自分の意思に反してついつい見てしまい、「相手を不快にさせているのではないか」、「変に思われているのではないか」と思い込み、相手を見ることに対する恐怖や不安を感じてしまうのが特徴です。

例えば、授業中に隣の人に視線を注いだり、道を歩いているとすれ違う人に視線を向けたりする行動が見受けられます。自然と視線が向いてしまうことを自分でも理解しているので、前髪を長くして視線を遮ったり、終始下を向いて生活したりする人もいらっしゃいます。

また症状が重たい場合には、対象が人ではなく物になることもあります。

脇見恐怖は他の視線恐怖と併存していることもありますが、単独で脇見恐怖を持っている人というのは少なく、なおのこと周囲の理解が得られにくいものです。

それはこの視線恐怖が、何かを見てしまうことが恐怖となるので、なかなか第三者的な視点からは理解しづらいからです。

正視恐怖

正視恐怖は他人の目を見ること自体に不安や恐怖を感じてしまうというのが特徴です。

最近では、正視恐怖は自己視線恐怖と重なる点が多いことから、両方を含めて自己視線恐怖と言われることが多くなっていますが、ここでは自己視線恐怖と正視恐怖は異なる部分もあるということで分けて考えています。

ところで正視恐怖については、相手の目を見るということに対して恐怖を感じるので、トライポフォビア(Trypophobia)と類似するのではないかと私は考えています。

トライポフォビアとは、別名、集合体恐怖症や斑点恐怖症とも言われ、穴やブツブツした集合体に対して著しい恐怖を感じる限局性恐怖症のひとつではないかと言われています。

例えば、カエルの卵、水玉模様や斑点に対して恐怖や嫌悪を感じるのが特徴的です。

このトライポフォビアの特徴をふまえると、ゲゲゲの鬼太郎に登場する百目という妖怪に強い恐怖を覚えるのではないかと推測できます。その流れから目そのものに強い恐怖を感じることがあっても不思議ではないでしょう。

『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』を発行しているアメリカ精神医学会はトライポフォビアの存在を認めておらず、「不安障害に属する恐怖症とはまた違ったものとして捉えられる」と、研究者や専門家の間でも意見が分かれていますが、著しい恐怖によって日常生活に支障をきたすようであれば限局性恐怖症と言えるのではないかと思います。

ただ私たちの認知的なものとして、黄色と黒の組み合わせが危険な存在に映るように、人間の生命維持の役割として、穴の集合やブツブツへの反応が死に繋がる感染症を警戒し、直観的に回避するための機能として考えると、また別の見方になるかもしれません。

現に、穴の集合やブツブツしたものの画像を見ると気味が悪く、嫌悪感を覚えるのはよく理解できます。

トライポフォビアについてはまだまだ研究の余地があるので、もっと研究が進めば今以上に分かってくるのではないかと思います。

視線恐怖の原因

視線恐怖は社交不安障害に見られる症状のひとつです。

社交不安障害については直接的な原因は未だ知られていません。同様に視線恐怖についても、原因は断定できていません。

しかし視線恐怖が社交不安障害の症状として考えられることから、発症のリスクを高める因子として、生まれつき不安や恐怖を感じやすい気質、生まれ育った環境やこれまで生きてきた中でのネガティヴ体験、文化的な背景などが考えられます。

特に気質的な部分は見過ごすことができず、親や兄弟が社交不安障害を患っていた場合、その発症リスクが倍以上になることが知られています。

なお社交不安障害には全般性と非全般性(限局性)のタイプがあります。そのため社交不安障害には視線恐怖以外の症状が表れることがあり、発症のきっかけが多岐に渡ることを理解しておく必要があるでしょう。

視線恐怖の改善法・克服法について

視線恐怖は社交不安障害の中でも症状の程度が重く、また視線恐怖があることで人を避け続けてしまったこともあり、どうしても治療に時間がかかってしまいます。

まずは視線恐怖の治療の第一歩として、症状について詳しく知り、またその症状に隠れた背景を治療者と一緒に紐解いていく必要があります。

当事者の向き不向きはありますが、治療法の候補としてお薬によるものと心理療法が考えられます。

お薬によるものでは、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬を処方して不安症状を抑えていくやり方があります。

お薬は正しい使い方が前提で、たとえお薬を服用し続けて症状がなくなったとしても、症状がぶり返さない為にも、最低でも1年以上は飲み続ける必要があると言われています。

心理療法では、認知行動療法や曝露療法(エクスポージャー法)、対人関係療法、そして森田療法などが候補になります。

認知行動療法という言葉を一度は耳にした人も多いと思いますが、認知行動療法というのは、モノの捉え方や考え方の歪みを直していくことを目的とする心理療法です。そしてその治療プログラムの一環として曝露療法(エクスポージャー法)があります。

曝露療法(エクスポージャー法)では、あえて自分の恐怖や不安となっているものに身を置き、慣れさせて成功体験を獲得することを目的とします。小さな不安から徐々に大きな不安へと段階的に不安を感じる状況を作り上げて不安に対する免疫力をつけていく段階的曝露、不安に対する曝露は一度だけでは効果が期待できないので何度も同じ状況を繰り返す反復曝露、この2つのタイプの曝露をベースに行っていきます。

対人関係療法というのは、発症のきっかけとなっている対人関係上の出来事を把握して、そこからどのような影響を受けているのかに着目して治療を行う心理療法です。

森田療法とは、不安や恐怖そのものは誰もが抱く感情であることを知り、そのような感情を抱くのは異常なことではなく、むしろ、そういう感情を含めてあるがままの自分を受け入れることを目指す心理療法です。

どの治療法にも一長一短はあります。また当事者一人ひとりの背景が違うため、適宜治療を組み合わせてオーダーメイドのような治療がベストになると思います。

また社交不安障害は自然に歳を重ねれば良くなるものではありません。必ず何かしらの治療法が求められるでしょう。

視線恐怖と似ている病気

視線恐怖は社交不安障害に見られる症状ではあるものの、別の精神疾患と類似していることも往々にしてあります。

例えば自己視線恐怖について別の見方をすれば、自分の視線が相手を傷つけているということでもあり、強迫性障害に見られる加害恐怖の傾向を示しているのがわかります。

他にも他者の視線を過剰に怖がる背景に自分の容姿に欠陥があり醜いと思い込む醜形恐怖症の可能性もあるでしょう。

また「誰かから見られているかもしれない」、「監視されているかもしれない」という妄想があり、その妄想に強い確信を持ってしまう場合は統合失調症や妄想性障害の可能性が出てきます。

ただ視線恐怖では、目の前にいる他人の言動や態度を自分と関連づけるに留まり、それ以上の範囲を超えることはないので、想像によって創りだした誰かによって見られているように感じるのであれば統合失調の様相に近く、医療機関での適切な診断が求められます。

視線や目の動きというのは文化や風習にも根付いており「都は目恥ずかし田舎は口恥ずかし」や「目は口ほどにものを言う」などのことわざにも使われています。

また視線というのは使い方次第では人に対する抑止力にもなります。人によっては視線を気にしない人もいますが、気にする人にとってはとても厄介なものと言えるでしょう。

今回、自他問わず視線について著しい恐怖や不安を感じる視線恐怖というものの特徴や原因、治療法などを見ていきました。

もちろん症状や深層心理については一人ひとり異なったものがあり、視線恐怖そのものをひとまとめにして語れるものではありませんが、視線恐怖に関する共通理解として、ここで述べたことが参考になるのではないかと思います。

視線恐怖は社交不安障害の中核になっている症状でもあり、視線恐怖によって日常生活に支障をきたしているのであれば何かしらの治療は必要になってきます。

日本人は文化的な背景から考えても視線に対して恐怖や不安を感じるのは自然な反応と思われがちで、結果として治療が後手後手になってしまい人生の質を著しく低下させている人も少なくないと思います。

どうしても視線恐怖を抱えていると、「周囲におかしいと思われるのではないか」という不安から相談できないケースがあります。相談できる環境を整えるという意味でも、視線恐怖の存在を多くの人に知っていただきたいです。

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