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【まとめ】社交不安障害に分類される恐怖一覧

他人からの視線が怖い、人前で話すことが怖い、誰かと一緒に食事をするのが怖い、人前で何か行動を起こすのが怖い、こうした恐怖感情が極めて強く感じる場合、不安障害のひとつである社交不安障害(社交不安症)と呼ばれる心の病気の可能性があります。

社交不安障害にはいくつかの特徴的な恐怖対象があり、今回はその中でも比較的多く見られる恐怖についてまとめていきたいと思います。

もちろんここで挙げた恐怖がすべてではありません。また程度によっては誰しもが感じる恐怖もありますが、該当する恐怖が長期間続き、日常生活や社会参加に支障をきたしているのであれば社交不安障害を疑った方がいいということなので、該当する恐怖があったからといってすぐに社交不安障害に繋がるというわけではありません。

もし可能性がある場合は自己診断で終わりにするのではなく、できる限り医師の診察を受けて適切な治療に結び付けてほしいと思います。

対人恐怖について

社交不安障害は人と接するような場面や機会で著しい恐怖感情を抱いてしまいます。

そうした人との接触で恐怖を感じる場合、「対人恐怖(対人恐怖症)」というもので呼ばれることが多く、社交不安障害という言葉よりもむしろこちらの言葉のほうが馴染み深く、また自分が病気と意識していなくても性格的な意味として対人恐怖という言葉を使うこともあるのではないかと思います。

ところで、そもそも対人恐怖とは何を指し示すのでしょうか。

専門家の間でも対人恐怖に関する定義については様々であり、概念的なものが曖昧になっていますが、森田療法で有名な森田正馬先生の言葉を借りれば、「恥ずかしがることをもって自らふがいないことと考え、恥ずかしがらないように苦心する負け惜しみの意地張り根性である」という言葉で解説しています。

もう少し明確にすると「恥ずかしさがあることで他者からの評価を著しく気にしてしまい、自分の中にある矛盾や葛藤が引き起こすマイナスの感情」と言えるのではないでしょうか。

また人の評価を気にするということは少なからず「人から好意的に見られたい」という心理の表れでもあり、そういったことを考えると、対人恐怖は、人そのものに対する恐怖というよりは対人(場面)恐怖、対人(機会)恐怖のように、人を嫌う意図というのは全く無く、あくまでも状況や状態に依拠した恐怖と考えることができます。

しかし対人恐怖というのは必ずしも病的な水準だけの人に当てはまるものでもなく、実は病的な水準にある人以外にも見られ、その割合もかなりいることが分かっています。そのため病気と性格の境目がとても曖昧になっています。

特に日本人では文化的な背景も相まってその割合が比較的高く表れており、それゆえ対人恐怖そのものは、ある特定の国や地域の文化的背景が原因となって起こる文化結合症候群と見られていたこともありました。

対人恐怖を病気と見るか性格と見るかという議論は今もなお続いていますが、『DSM』という精神疾患の分類を定めるガイドラインが登場し日本でも導入され、また対人恐怖は日本だけではなく欧米でも見られることから、その名称を「社交不安障害(社交不安症)」に変えて今日に至っています。

これはあくまでも個人的な見解ですが、社交不安障害という精神疾患が社会的に認知されるにつれ、対人恐怖という言葉は性格的な特徴を示す言葉として残り、社交不安障害は病気として、対人恐怖は性格的傾向や特性を表すものとしてそれぞれの言葉が使われるのではないかと感じています。

社交不安障害に見られる恐怖の特徴

社交不安障害(社交不安症)という新たな言葉が生まれ、実際のところ、対人恐怖(対人恐怖症)と社交不安障害(社交不安症)はどう違うのかと疑問に思っている人も多いと思います。

厳密には社交不安障害は対人恐怖以外の要素も含んでいるので、全く同じというわけではないものの、今日、社交不安障害に見られる特徴には対人恐怖の特徴が含まれていることは事実です。

ただ病気の概念は時代と共に移り変わっていくもので、『DSM』が改訂されるたびに社交不安障害の要素も変化しており、最新版では、かつて対人恐怖と言われてた症状は社交不安障害と強迫性障害にそれぞれ分けられ、かつての対人恐怖の概念が少しずつ失われているように感じます。

対人恐怖には、赤面恐怖、視線恐怖、表情恐怖、自己臭恐怖、会食恐怖などの亜型が存在しており、その亜型も含めて対人恐怖あるいは対人恐怖症という言葉があてられているケースが多く見受けられます。

つまり対人恐怖と一言に言っても様々な種類と特徴があるということです。

対人恐怖に詳しい笠原敏彦先生は、対人恐怖の流れから社交不安障害に見られる恐怖を大きく3つのグループに分類しています。

社交不安障害に見られる恐怖は、「不安喚起状況」、「不安の身体的表出」、「本人の主観による身体的欠点」のどれかに該当します。

不安喚起状況

不安喚起状況に該当する恐怖は以下のようなものがあります。

  • 演説恐怖…人前で演説する状況を恐れる
  • 談話恐怖…他者と会話する状況を恐れる
  • 電話恐怖…他者と電話する状況を恐れる
  • 会食恐怖…他者と食事をする状況を恐れる
  • 正視恐怖…他者の目を見るという状況を恐れる
  • 権威恐怖…権威ある人と同席する状況を恐れる

特徴としては、不安となりやすい状況に対する恐怖がここに含まれることが多いです。

不安の身体的表出

不安の身体的表出に該当する恐怖は以下のようなものがあります。

  • 赤面恐怖…人前で顔が赤くなることを恐れる
  • 表情恐怖…人前で顔がひきつり表情が可笑しくなることを恐れる
  • 吃音恐怖…人前で言葉を流暢に話すことができないことを恐れる
  • 振戦恐怖…人前で身体が震えることを恐れる
  • 腹鳴恐怖…人前でお腹が鳴ることを恐れる

特徴としては、不安となりやすい状況に直面したときに表れる身体反応や身体症状そのものに対する恐怖がここに含まれることが多いです。

本人の主観による身体的欠点

本人の主観による身体的欠点に該当する恐怖は以下のようなものがあります。

  • 自己臭恐怖…自分の体臭が人に迷惑をかけているのではないかと恐れる
  • 自己視線恐怖…自分の視線が人に迷惑をかけているのではないかと恐れる
  • 自己音恐怖…自分の身体が発する音が人に迷惑をかけているのではないかと恐れる

特徴としては、自分の強い思い込みや主観によって引き起こされる自身の身体的欠点が相手を不快な思いにさせてしまうことを恐れるものがここに含まれることが多いです。

「不安喚起状況」、「不安の身体的表出」、「本人の主観による身体的欠点」の3つのグループはそれぞれ重なる部分もあり、そのため該当する恐怖もまた両方に属することもありますが、ここでは明確にするためにひとつの恐怖がひとつのグループに属するような書き方をしています。

さらに特徴を理解してもらいたいという意味でピックアップしていますので、当然、リストに書いていない恐怖も存在します。

社交不安障害に分類される恐怖一覧

これまでに行われてきた社交不安障害に関連する考察や研究を踏まえて、現代に即した形でなおかつ比較的多く見られる恐怖を中心に紹介していきたいと思います。

パフォーマンス恐怖

パフォーマンス恐怖というのは、人前で話をしたり何かしらの動作をしたりすることによって著しい恐怖や不安が引き起こされるというものです。

かつての演説恐怖やスピーチ恐怖はここに含まれることが多く、社交不安障害を患っている人の中では比較的多く見られる恐怖でもあります。

そのためこのタイプの恐怖だけは、『DSM-5』において、パフォーマンス限局型の社交不安障害として区別されています。

視線恐怖

道端ですれ違う人の視線がとても気になる、周りの視線が気になって仕事ができないなど、他人の視線を過剰に意識するあまり、恐怖で身体が正常に働かなくなってしまうのが視線恐怖です。

視線恐怖になってしまうきっかけは様々ですが、考えられる理由としては、過去に他人からの暴力や嫌がらせを受けて自分を守る防衛反応の結果というものもあれば、自分の目つきが悪くて相手から指摘されたことで自分の視線そのものに対して著しい罪悪感を覚えてしまったことなど、多岐に渡ります。

一言に視線恐怖といってもいくつかの種類があって、大まかに他者視線恐怖、自己視線恐怖、脇見恐怖、正視恐怖に分けることができます。

簡単に解説すると、他者視線恐怖は他者の視線に対して恐怖を感じるもの、自己視線恐怖は自分の視線が人に迷惑をかけているのではないかと恐れるもの、脇見恐怖は自分の視界に人が入ってくるとその相手を見続けてしまい不快を与えているのではないかと恐れるもの、正視恐怖は他者の目を見ることを恐れるもの、とそれぞれ微妙に異なっています。

一言に視線恐怖と言っても、どういう理由でどういうものに対して恐怖を抱くかは違いますので、治療方法も症状や悩みに応じて変わってくると言えます。

赤面恐怖

人前で顔が赤くなることを恐れたり、人前に立つと顔が赤くなってしまうことから、そのような状況を恐れるのが赤面恐怖の特徴です。

顔が赤くなる状況をできる限り回避するので、それゆえ本来であれば楽しく幸せな結婚式の披露宴や宴会を欠席せざるを得ない状態になる人もいらっしゃいます。

世の中には目立ちたがり屋で注目を浴びたい人もいれば、その対極として浴びたくない人もいます。もしかしたら浴びたくない人の原因にひとつに赤面恐怖が隠れている可能性があるのではないでしょうか。

会食恐怖

レストランやカフェなどで自分の食事姿を誰かに見られること、あるいは料理を残してはいけないという思考から、人前で食事が喉を通らなかったり、緊張や不安から箸やフォークが震えて食事が困難になったりしてしまうのが会食恐怖です。

社会に生きる私たちは食事が必要不可欠であり、また誰かと一緒の場面や空間で食事を求められることもあるため、会食恐怖は社交不安障害の中でも比較的日常生活に及ぼす影響が大きい恐怖でもあります。

身体的症状が重い人は誰かと外で一緒に食事をすることを極力避けるため、様々な社会的損失を被ることになってしまいます。

会食恐怖のきっかけは様々でありますが、色々な人の体験談を見聞きすると、小学生の時の給食で残してはいけないという認識であったり、食事の機会でおう吐してそれがトラウマになっていたり、食事に対して嫌なイメージを持ち続けていることが多く挙げられます。

権威恐怖

目上の人との会話がつらいために面接が受けられない、先生や上司になかなか相談できないなど、年齢、社会的地位などが自分よりも上にある者と一緒にいる状況に対して極端に恐怖を感じてしまうのが権威恐怖です。

権威恐怖の背景には親子関係が大きく関わっていると言われています。自分の身近で立場も年齢も上というと両親が該当しますが、その両親との距離感、これが適切に築くことができないと権威恐怖を招いてしまうと考えられます。

また権威恐怖に関連して排尿恐怖というものがあります。

この排尿恐怖とは比較的男性に見られる恐怖で、職場のトイレで上司や目上の先輩が入ってきて自分の横に並ばれた時に緊張から排尿に困難をきたすというものです。

排尿恐怖はひとりならおしっこが可能なのですが、このように上司や目上の先輩がいることでおしっこが困難になり、ひいてはトイレを我慢しすぎて慢性的な排尿障害になることも報告されています。

電話恐怖

電話をしている姿を誰かに見られるのが恥ずかしい、話している内容を誰かに聞かれているのではないかという不安から、電話をかけたり受け取ったりするのがつらいというのが電話恐怖です。

また電話応対で酷いクレームに遭ってしまったり、電話する時の自分のしゃべり方やイントネーションを相手に笑われたりした経験がトラウマとして残っている場合も、電話恐怖を誘発させ、電話の受け答えに恐怖を感じてしまうこともあります。

今の世の中、電話以外にもメッセージを伝える手段は多岐にあります。しかし大事な要件やすぐに連絡を取らなければならない話などはどうしても電話を使わなければいけない場合もあります。

さらに言えば、社会的スキルのひとつとしても電話応対が求められますので、電話恐怖であることを周りの人に言えずに悩んでいる人も多く見受けられます。

振戦恐怖

振戦恐怖という言葉だけを見ると、どういった恐怖なのか疑問に思ってしまいますが、振戦とは簡単に言えば震えのことです。

例えば、職場で来客した人のためにお茶を出す際に手が震えてしまい、これが次もまた同じようなことが起きるのではという不安や緊張に駆られることで、震えることに恐怖を感じてしまうのが振戦恐怖です。

他にも相手を前にして文字を書く時に手がふるえて文字が上手く書けない書痙という症状も振戦恐怖の典型的な症状のひとつです。

この振戦恐怖は人に見られることも恐怖を増長させますが、それに加え震えることに対して意識すること自体が緊張を呼んでしまい、その結果、身体の震えを大きくしてしまいます。

振戦恐怖に陥ってしまうと人一倍震えに対して身構えてしまいますので、普段の何気ない行動、例えばお金や書類の受け渡しといった動作が辛く、そのたびに嫌になってしまうのです。

自己臭恐怖

自分のにおいが相手に不快な思いをさせているのではという考え方が行き過ぎてしまい、自分のにおいに過度に反応し辛く感じてしまうのが自己臭恐怖というものです。特に女性に多く見られる恐怖です。

自己臭恐怖は強迫性障害の一種とも捉えることができますが、社交不安障害の側面も含んでいるため、社交不安障害に含まれる恐怖のひとつとして、ここでは掲載しています。

自己臭恐怖のきっかけは、過去において自分の体臭に対して周りの人からひどいことを言われたり、体臭がきっかけでいじめにあったりと、自分自身の体臭のことで嫌な思いをしたことが挙げられます。

そのため自己臭恐怖に陥っている人は、大勢の人が集まるところや誰かと密着する狭い場所を自然と避ける傾向にあります。また外出時は自分の臭いを消すために香水を大量につけたり、自分の臭いを防ぐために季節に問わず必ずマスクをつけたりと、人一倍自分の臭いに対して敏感になっています。

さらに誰かに相談しようにも、臭いの話だけに相談しづらく恥ずかしい悩みなので、相談をためらい自分でなんとかしようと試みるものの、逆にそれがさらなる臭いに対して敏感になってしまうこともあります。

自己臭恐怖に関連した恐怖でおなら恐怖や発汗恐怖というのも存在しています。

おなら恐怖は自己臭恐怖同様、学校や職場など周りに人が大勢いるような状況で、自分があたかもおならが出ているかのように感じ、周りの人を不快な思いにさせているのではないかと思ってしまいます。

発汗恐怖もまた、自分の汗の臭いで相手を不快にさせているのではという思いや、緊張で汗をかいていることに周りから変に思われているのではという不安があります。

おならも、汗をかくことも人間の生理現象ですし誰にでもあることです。ところが一度そのことで嫌な体験をしてしまうと、また同じ思いをしてしまうのではないかと強く感じるようになり、自分自身でもどうしたらいいのか分からず、パニック発作を引き起こす可能性があるのです。

自己音恐怖

自分の身体が発する音が人に迷惑をかけているのではないかと恐れるのが自己音恐怖です。

自己臭恐怖同様、自身が発する音に過敏になってしまい、社交不安障害の側面と強迫性障害の側面、両方考えられます。

自己音恐怖に関連するものとして、唾液嚥下恐怖や腹鳴恐怖があります。

唾液嚥下恐怖はとりわけ静かな場所で、自分の飲み込むつばの音が周囲に嫌な思いをさせているのではないかと感じてしまうのが特徴で、腹鳴恐怖もまた自分のお腹が鳴ることを恐れ、そのことで周囲に嫌な思いをさせているのではないかと感じてしまうのが特徴です。

人間の生理現象が一度恐怖対象に変化してしまうと、日常生活を円滑に送れなくなってしまうため早期の対応が必要になってきます。

吃音恐怖

吃音恐怖というのは、言葉を流暢に話すことができず(本人がそう思い込んでいる)、恥ずかしい姿を相手にさらしてしまうのではないかという不安によって、一対一の会話や複数人での会話に恐怖を感じてしまうというものです。

気をつけたいのが吃音(小児期発症流暢症/成人期発症流暢症)と吃音恐怖は違います。吃音恐怖は客観的に見て全く問題ではないのに、当事者自身が話す際に言葉の詰まりや吃りを強く意識してしまう部分にあります。吃音の場合は、客観的に見ても発音に困難さがあります。

吃音恐怖に関連するものとして、雑談恐怖というものがあります。一対一や複数人で雑談することに恐怖や不安を感じてしまうのが特徴です。

雑談恐怖の場合は、自分の言葉づかいや発音、話題のズレなど、自分が会話に参加することでその場をしらけさせてしまったらどうしようとか、話がつまらなくなってしまったらどうしようという不安が背景にあります。

今回、社交不安障害(社交不安症)に含まれる恐怖についてまとめてみました。

根本的にはどの恐怖も「他人からどのように見られているのか」、「相手からどう思われているか」ということを過度に考えてしまうために起こるものという共通点があり、これが社交不安障害を決定付けるものになっています。

誰にでも周りの人からどのように思われているのだろうと気にした経験があると思います。特に思春期と呼ばれる13~15歳にかけては、自分の中で自我が芽生え、自分とは何かを分かり始める時なので、その時に感じることが多いのではないでしょうか。

『精神疾患・メンタルヘルスガイドブック: DSM-5から生活指針まで』によれば、社交不安障害を発症する平均年齢は13歳で、75%の人が8~15歳までに発症すると言われています。

つまりは思春期特有の多感な時期に何かしらのきっかけで発症してしまい、結果としてはそれが大人になっても続き辛い思いをしているのがこの病気の厄介なところなのでしょう。

病気なのか性格なのかという曖昧さから、残念ながら社交不安障害というのは周りの人からは理解しにくい心の病気だと思います。また感じている恐怖そのものも本人にしかわからない面もあるので、なおさら理解するのが難しいと言われています。

だからこそ当事者の周りに理解者がどれだけいるかというのも、この障害を改善していくポイントになるのではないでしょうか。

ここに挙げた恐怖はほんの一部分でしかありませんが、ここに挙げた恐怖によって日常生活や社会参加に悪影響を及ぼしているのであれば、一度医師の診察を受けて、適切な治療を行ってほしいと思います。

参考文献

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