不安障害に関する症状や原因、治療法などについて、その当事者や家族、また不安障害を知らない人に向けての正しい理解を目指した特化サイトです。

不安障害ラボ

不安障害に関する症状や原因、治療法などについて、その当事者や家族、また不安障害を知らない人に向けての正しい理解を目指した特化サイトです。
>>当サイトの詳しい説明はコチラ

  1. 不安障害ラボ
  2. 社交不安障害
  3. 社交不安とは何か!?あがり症から回避性パーソナリティ障害まで

社交不安とは何か!?あがり症から回避性パーソナリティ障害まで

心の病気はその性質上、なった本人にしか分からない辛さや苦しみがあり、それゆえ周りにいる人の誤った見方によって本人が二重の苦しみを抱えてしまうことが少なくありません。

これは社交不安障害においても同じことです。社交不安障害の場合、誰しもが感じる社交不安との間に明確な境目が存在しておらず、連続性を持っているため、「社交不安障害は甘えているにすぎない」、「社交不安障害なんて単なる性格の問題だから根性で治せる」など、社交不安障害を性格のひとつとして見なす人が数多く存在します。

今回、社交不安障害にも関わる話として、<社交不安>というキーワードに着目したいと思います。

社交不安という大きな枠組みを知ることで、社交不安障害について、さらにはあがり症や人見知り、回避性パーソナリティ障害についても理解しやすくなるのではないかと思います。

社交不安という大きな枠組みの存在

社交不安とは何か

概ね、精神医学や心理学の分野では、対人関係がもとになって不安を感じることを総称して<社交不安>と呼ばれます。

この社交不安に従属するような形で対人不安であったり、聴衆不安(スピーチ不安)であったり、さらにはシャイネス(shyness)やあがり(stage fright)などの用語が存在しています。

ちなみにですが、社交不安障害という名称について、この名称は2008年に日本精神神経学会が新しく付けたもので、それまでSAD(Social Anxiety Disorder)にあたる対訳は社会不安障害という名前でした。

そのため書籍などでは社会不安と記載されている場合もありますが、社会不安と社交不安の内容自体には違いは見られません。

むしろ社会不安では、現代社会における社会的な事柄、例えば、経済状況やライフスタイルに対する将来的な不安を指し示すことが多いため、名称を変えることで認知度を高めるきっかけになるのではないかと思います。

社交不安を感じやすい人というのは、「他人からどのように見られているのか」、「目の前の相手からどう思われているのか」ということに対して意識が向きやすい傾向があります。

ところで、対人関係が不安に感じてしまうのは何も社交不安障害だけではありません。

かなりの割合の日本人が持っている「あがり症」、そして幼少期の頃に見られる「人見知り」といったものもまた、対人関係で不安を感じてしまうことにより起こる現象でもあります。

しかし世間一般では、あがり症や人見知りを病気として考える人はまずいないと思います。その一方で、医学的に見れば社交不安障害、さらには人に対して著しい恐怖を感じる「回避性パーソナリティ障害」は病気として認知されています。

回避性パーソナリティ障害とは、パーソナリティ障害のひとつであり、「自分は社会的に不適切である」、「人間として長所がない」、「他の人よりも劣っている」などの気持ちが強いことで対人関係を築けなかったり、何か新しい活動に取りかかることに対して異常なほど引っ込み思案になったりするのが特徴です。また常に回避的な行動を取ってしまうことにより、日常生活に大きな支障をきたしてしまい、人生の質を大きく低下させてしまう可能性がある心の病気です。

回避性パーソナリティ障害については、専門家の間でも色々な見解があり、社交不安障害が重症化することで回避行動が強まるため、重度の社交不安障害を回避性パーソナリティ障害と捉える人もいたり、一方でパーソナリティ障害の一種であるため、パーソナリティ障害として捉えた方がいいとする人もいたりします。

ただ社交不安障害と回避性パーソナリティ障害の違いを強いて挙げるなら、その回避行動を正当化する点にあります。

社交不安障害の場合、当事者が回避行動に対して罪悪感を覚えながらもがき苦しんでいるケースが大半です。逆に回避性パーソナリティ障害は、回避行動が自分の正しい行動であるというふうに正当化してしまう部分があるため、回避行動自体に罪悪感を抱きにくくなっています。

突き詰めて考えれば違いはありますが、社交不安障害にしろ回避性パーソナリティ障害にしろ症状を放っておけば自然に治っていくものではないので、できる限り早期の治療介入が求められます。

話を社交不安に戻しますが、社交不安という大きな枠組みの中では、あがり症や人見知りは病気としてよりも気質的なもの、社交不安障害や回避性パーソナリティ障害は気質的なものから一歩進んで病態化したものと考えられています。

ただこのように考えられるのは、社交不安障害や回避性パーソナリティ障害というものがどういったものなのかを知り、その本質や本態(=本当の様子)を理解しているからであり、知らない人にとってみれば、これらの病気は単にあがり症や人見知りと変わらないものとして考えてしまうことでしょう。

また社交不安は程度の差はありますが誰しもが感じるものです。面接で顔が熱くなって汗が止まらなくなったり、人前で何かを話したり演奏したりする時に頭が真っ白になってしまったり、他人と何かしらの関わり合いを持って生活している以上はどうしても社交不安を感じてしまいます。

だからこそ社交不安に含まれる社交不安障害を病気として認識することが難しいと言えるのかもしれません。

さらに言えば、いくら線引きできるといっても、それは言葉上での線引きです。実際にはその不安に対する程度、質を見て第三者が線引きすることはとても難しく、また曖昧になりがちで容易ではありません。

ところが現実には、なった者にしか分からない苦しみがそこには存在し、なおかつ日常生活や職業選択に大いに支障をきたしている人もいます。程度の差はありつつも支障をきたしているのであれば、病気という意味合いも強くなっていくのではないかと思います。

社交不安障害とあがり症の違い

さきほど社交不安障害を病気として捉えることができ、あがり症は気質によるものだと言いましたが、それを裏付けるものについて述べていこうと思います。

例えば、多くの人が「あがる」という状態を経験する時といえば、人前で何かを発表することだと思います。大勢の人を前にして心臓はバクバクして、さらに発汗して震えを感じる人もいるでしょう。

毎回そういった機会であがってしまうことで「自分はあがり症である」という認識を持ち、あがってしまうのは性格や気質的なものという結論を出すことでしょう。

その一方で、社交不安障害には人前でスピーチすることに対して恐怖を感じる演説恐怖やパフォーマンス恐怖というものが存在しますが、これも「あがる」という状態が大きく関わっています。

見方しだいではあがり症も社交不安障害もそんなに違いはありません。

しかし注目するべきところは、その発表までに取る行動、そしてその後に感じる気持ちなのです。

どういうことかというと、あがり症の場合は人前で何かを発表する直前に強い不安を感じることはありますが、話している最中は意外にもしっかりと話せていることが多いです。本人は声の震えやボリュームについて心配しているかもしれませんが、周りの人は意外と気にせず話の内容を聞いているもので、話し終えた時に周りから賞賛されることもあります。

話し終えた後は気持ちがふと楽になって、いつもと変わらない状態になっています。そしてその後に続く人の話をしっかり聞けるくらい心は落ち着いているのではないでしょうか。

ところが社交不安障害の場合、あがり症と同様、直前にも強い不安を感じますが、人前で発表することが決まったその瞬間からずっと強い不安を感じます。

厳密にいえば予期不安が強すぎて、発表するまでの間に不安がどんどん大きくなってしまい、そして不安のタネが解消されるまでずっと不安に苦しむのです。

話している最中も不安のせいでパニックに陥ってしまい、ひいては話を最後まで続けることが出来なくなってしまいます。結果的に、話し終えたときには恥の意識が強く残り、その後に続く人の話は頭に入らず、へとへとに疲れきっている状態であることが多いです。

ただあがり症と自覚している人でも、社交不安障害に近い症状が表れた時には軽視することはできません。

これは私がSNSで行った当事者アンケートなのですが、やはり当事者の大半が社交不安障害とあがり症は別物であると捉えています。

この違いを生む背景には社交不安障害の特徴とあがり症の性質が似ているものの、両者の間に行動様式の違いが明確に現れているからだと推測できます。

とりわけ社交不安障害には強い回避行動がつきものです。回避行動を続けてしまうことで自己肯定感も乏しくなり、周りからは「否定的な視線で見られているのではないか」という歪んだ認識をするようになっていきます。そうした状態が続くことで、絶えず対人関係において著しい不安を抱き、同時に回避行動を取りやすくなって悪循環に陥ってしまうのです。

さすがにあがり症といわれる人であっても、あらゆる対人場面や対人機会で回避行動を取ることは考えにくいです。

社交不安障害の症状の表れ方は人によって様々なので一緒くたにすることは難しいですが、混同されがちなあがり症との違いは以下のようにまとめることができます。

あがり症 社交不安障害
違い
  • その状況にさらされる直前に強い不安を感じる
  • 話し始めると意外にも不安がおさまっていく
  • 話し終えた後は気持ちが楽になる
  • 不安に慣れることが可能
  • 特定の場面で症状が表れることが多い
  • 人前で話すという経験不足に起因するところがある
  • その状況にさらされるずっと前から強い不安を感じる
  • 話し始めても不安がおさまらず絶えず不安がつきまとう
  • 話し終えた後は恥ずかしさがこみあげる
  • 不安に慣れずむしろ過敏になってしまう
  • あらゆる場面で症状が表れることが多い
  • 人前で話す経験があっても発症するところがある

人見知りと社交不安障害の違い

続いて人見知りと社交不安障害の違いを考えていきたいと思います。人見知りも社交不安障害と同様、人と接することに対して何かしらの不安を感じることは同じです。

人見知りと似た言葉に、内気や引っ込み思案という言葉もありますが、人見知りというのは具体的にどういうことを指し示すかというと、「初対面の人に対して気遅れしたり、人と会話する際にもじもじして受け答えがぎこちなかったりする仕草や様子」だと思います。

また人見知りは幼少期からその傾向を表すことが多いので遺伝的な要因が強いとされますが、そのことがすべてではなく、育ってきた環境も大きく関わっていることが確認されています。

ところで人見知りの人が絶えず人に対して不安を感じるかというとそうではないと思います。とりわけ初対面の人に対して強い不安を感じやすいというのはあるものの、何度か会っているうちに少しずつ不安が軽減されてくるのではないかと思います。

さらに人見知りの心理的背景には、「他人に自分の存在を受け入れてほしい」、「他人から無視されるのが怖い」という状態が存在します。

実は人見知りである人ほど自己観察力に秀でて、それでいてやり取りする相手に対してその相手が自分を受け入れてくれる人なのかどうかを瞬時に判断します。

だからこそ、内心では相手に自分の存在を受け入れてほしいと思いながらも、その相手が果たして本当に自分を受け入れてくれるのか、もしかしたら無視されるのではないかという気持ちが入り混じっていて、それが行動として表れます。

特に初対面の人に対しては探知センサーのように心が反応し相手を探る形になってしまいますので、会話がぎこちない感じになってしまうことが多いのです。

なので人見知りの人は、一度相手が自分を受け入れてくれる人だと感じた時は、初めて出会った時より会話のやり取りが軽快で初対面のイメージを覆すことが多々あるのです。

一方で社交不安障害の場合、社交不安障害を発症する要因としては遺伝的なもの、環境的なもの、社会的なものなどがあり、もちろん社交不安障害を抱える人の中には、生まれて間もない頃から極度の人見知りで、そのまま大人になってしまったという方もいると思います。

しかし社交不安障害は思春期の頃に発症するケースが最も多く、実は小学校の頃はとても活発だったという方も少なくありません。

人見知りという言葉は子どものひとつの様子を表す言葉でもあります。それゆえ社交不安障害と人見知りの時期的な違いというのは大きな違いでもあるでしょう。

しばしば社交不安障害の人は、もちろん相手に対する恥ずかしさというものはあるものの、その恥ずかしさが過剰であるあまり、相手の記憶から自分の存在を忘れてほしいという気持ちが見受けられます。

そうした気持ちが影響して、他人から親しくされると「自分を受け入れてくれた」という安心感よりも、むしろどこか疑いの目で見てしまい不安を感じてしまうことがあります。

他人に「自分の存在を受け入れてほしい」という人見知りの根底にある思考と、過剰すぎる羞恥心ゆえに「自分の存在を忘れてほしい」という社交不安障害の思考とでは、逆であることが分かります。

だからこそ人見知りよりも社交不安障害の方が、人と接する場面や機会を回避するという行動が極めて強く見られるのではないかと思います。

あがり症の時と同様、人見知りと社交不安障害を対比させると以下のようにまとめることができると思います。

人見知り 社交不安障害
違い
  • 他人から無視されるのが怖い
  • 他人に自分の存在を受け入れてもらいたい
  • 初対面の人に対して強い不安を感じやすい
  • 他人に親しげに接してもらえると安心する
  • 他人から侮辱されるのが怖い
  • 他人に自分の存在を忘れてもらいたい
  • 初対面に関わらず何度あっても強い不安を感じやすい
  • 他人に親しげに接してもらえると逆に困惑する

対人関係における不安を表す社交不安は程度の差はあっても誰しもが感じるものです。

そして社交不安に含まれるものとしては、あがり症や人見知り、社交不安障害や回避性パーソナリティ障害というものがあり、あがり症や人見知りは病気ではなく気質として、一方で社交不安障害や回避性パーソナリティ障害は病気として、各々の違いについて見てみました。

一般的に社交不安障害は認知度が低く、あがり症や人見知りという言葉の方が馴染みがあるので、どうしても社交不安障害を病気としてではなく気質としてみなす人が多いと思います。

しかし社交不安というものを細かく見ていけば、社交不安障害があがり症や人見知りとはまた違った性質を持っていることは多少なりとも理解できると思います。理解が進めば、社交不安障害というのは心の病気であり、当事者が苦しんでいることは容易に分かるでしょう。

また社交不安障害を病気と位置付ける理由には、「病気というものは治るものである」、「治療をすることで症状は良くなっていくものである」という認識を強め、当事者が治そうという気持ちを持つためでもあると感じています。

ただし治すためには、その治療ができる適切な環境が必要不可欠です。もちろん周りのサポートや正しい理解も当然必要です。

社交不安という大きな枠組みや概念、その中に含まれる性質の異なるタイプの存在、こうした各々の違いについて正しく理解するにあたり、今回の記事が参考になれば幸いです。

スポンサードリンク

アーカイブ

月別一覧
年別一覧

profile

管理人:ミヤシタソウジ

プロフィールの詳細はコチラ

当サイトの説明はコチラ

Twitter:@soji_miyashita

当サイトに関すること、その他個別の問い合わせがありましたらメールにてお願いします。

Gmail:soji.miyashita★gmail.com
(迷惑メール防止のため、送る際は★を@に変えてください)

PAGE TOP