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社会不安とは何か!?あがり症から回避性パーソナリティ障害まで

社交不安障害は甘え、単なる性格のひとつであるから根性で治せる、そういった見方をする人がいます。むしろそういう見方のほうが大半だと実感しています。

心の病気はなった本人にしか分からない辛さや苦しみの部分があり、周りにいる人の誤った見方によっては本人が二重の苦しみを抱えてしまうこともあります。

ましてや社交不安障害の場合、他人からどのように思われているのかということが根底に存在するため、周りの気持ちに対してとても敏感で苦しみを人一倍感じやすいものです。

社交不安障害が理解されにくいのは、病気と正常の境目が曖昧になっていることが第一に考えられます。

今回、社交不安障害という精神疾患について、<社会不安>というキーワードに着目して一緒に見ていきたいと思います。

社会不安という大きな枠組みを知ることで、社交不安障害について、さらには回避性パーソナリティ障害についても理解しやすくなるのではないでしょうか。

社会不安という大きな枠組みの存在

社会不安とは何か

日常会話で使われる<社会不安>という言葉は、現代社会における社会的な事柄、例えば経済状況やライフスタイルに対する将来的な不安を指し示すと思います。

精神医学や心理学の分野においては、対人関係がもとになって不安を感じることを総称して<社会不安>といいます。対人恐怖や対人不安、対人緊張という言葉もありますが、学問的にはこれらの言葉は社会不安という言葉に従属する形と言えるでしょう。

ところで社交不安障害という名称についてですが、この名称は2008年に日本精神神経学会が新しく付けられたもので、それまでSocial Anxiety Disorderにあたる対訳は社会不安障害という名前でした。最近では子どもに配慮して障害という言葉ではなく病気のニュアンスが強い社交不安症と呼ばれることが増えてきています。

社交不安障害は他人からどう見られるか、どう思われているかが根底にあって発症する病気なので、まさに社会不安の枠組みに含まれることが分かると思います。

しかし対人関係がもとになっているものは何も社交不安障害だけではありません。ほとんどの日本人が持っているのではと言われているあがり症、そして幼少期の頃に見られる人見知りというものも対人関係の中で起こります。

ただしあがり症や人見知りを病気として考える人はまずいないと思います。一方で社交不安障害、さらには人に対して過剰な恐怖心を感じる回避性パーソナリティ障害は病気として認知されています。

回避性パーソナリティ障害とは、自分は社会的に不適切である、人間として長所がない、他の人よりも劣っているという気持ちが強いことで対人関係を築けなかったり、何か新しい活動に取りかかることに対して異常なほど引っ込み思案になったりするのが特徴。そして本人もそのことを自覚しながらも回避行動を取り続けてしまい、日常生活に大きな支障をきたすパーソナリティ障害のひとつ。

回避性パーソナリティ障害についてですが、専門家の間でも色々な見解があり、社交不安障害が重症化すれば回避行動が強まるため、重度の社交不安障害と回避性パーソナリティ障害との間に明確な違いは見られないと主張する方もいます。

ただ社交不安障害と回避性パーソナリティ障害の違いを強いて挙げるなら、その回避行動を正当化する点だと思います。

社交不安障害の場合、当事者が回避行動に対して罪悪感を覚えながらもがき苦しんでいるケースが大半です。その一方で回避性パーソナリティ障害は回避行動が自分の正しい行動であるというふうに正当化してしまう部分があるので罪悪感を抱きにくいです。

社交不安障害にしろ回避性パーソナリティ障害にしろ症状を放っておけば自然に治るというものではないので、早期の治療介入が必要になります。

話を社会不安に戻しますが、社会不安という大きな枠組みの中では、あがり症や人見知りは病気としてよりも気質的なもの、社交不安障害や回避性パーソナリティ障害は気質的なものから一歩進んで病態化したものと考えられています。

でもこのように考えられるのは、社交不安障害や回避性パーソナリティ障害というものがどういったものなのか、その本質や本態(=本当の様子)を理解しているからであり、社交不安障害や回避性パーソナリティ障害を知らない人にとってみれば、これらの病気は単にあがり症や人見知りと変わらないものとして考えてしまうことでしょう。

また社会不安は程度の差はあっても誰しもが感じるものです。面接で顔が熱くなって汗が止まらなくなったり、人前で何かを話したり演奏したりする時に頭が真っ白になってしまったり、他人と何かしらの関わり合いを持って生活している以上はどうしても社会不安を感じてしまいます。

だからこそ社会不安のひとつに含まれる社交不安障害を病気として認識することが難しいと言えるのかもしれません。

さらに言えば、いくら線引きできるといっても、それは言葉上での線引きであって、実際にその不安に対する程度、質を見て第三者が線引きすることはとても難しく曖昧になりがちで、人それぞれの感じ方が違うこともあってなおさら容易ではないと思います。

しかし現実には、なった者にしか分からない苦しみがそこには存在し、なおかつ日常生活や職業選択に大いに支障をきたしている人もいます。程度の差はあっても支障をきたしているのであれば病気という意味合いも強くなってくるのではないでしょうか。

社交不安障害とあがり症の違い

さきほど社交不安障害を病気として捉えることができ、あがり症は気質によるものだと言いましたが、それを裏付けるものについて述べていこうと思います。

例えば、多くの人が「あがる」という状態を経験する時といえば人前で何かを発表することだと思います。大勢の人を前にして心臓はバクバク、発汗や震えを感じる人もいるでしょう。

毎回そういった機会であがってしまうことで自分はあがり症であるという認識を持ち、あがるのは生まれつきのものであるという結論を出すことでしょう。

一方で社交不安障害には人前でスピーチすることに対して恐怖を感じるスピーチ恐怖というものが存在しますが、これも「あがる」という状態が大きく関わっています。

見方しだいではあがり症も社交不安障害もそんなに違いはありませんね。

しかし注目しなければいけないのがその発表までに取る行動、そしてその後に感じる気持ちなのです。

どういうことかというと、あがり症の場合は人前で何かを発表する直前に強い不安を感じることはありますが、話している最中は意外にもしっかりと話せていることが多いです。本人は声の震えやボリュームについて心配しているかもしれませんが、周りの人は意外と気にせずに話の内容を聞いているもので、話し終えた時に周りから賞賛されることもあります。

話し終えた後は気持ちがふと楽になって、いつもと変わらない状態になっています。そしてその後に続く人の話をしっかり聞けるくらい心は落ち着いているのではないでしょうか。

ところが社交不安障害の場合、あがり症と同様、直前にも強い不安を感じますが、人前で発表することが決まったその瞬間からずっと強い不安を感じます。

厳密にいえば予期不安が強すぎて、発表するまでの間に不安がふつふつとわきあがってしまい、その不安のタネが解消されるまで不安に苦しむのです。

話している最中も不安のせいでパニックに陥ってしまい、ひいては話を最後まで続けることが出来なくなってしまいます。結果的に、話し終えたときには恥の意識が強く残り、その後に続く人の話は頭に入らずにへとへとに疲れきっている状況であることが多いです。

ただあがり症だった人も、社交不安障害に近い症状が表れた時には、軽視することは出来ないので注意が必要だと思います。

そして社交不安障害とあがり症の何よりの違いは、実は社交不安障害を発症する前までは人前で何かをすることが好きで活発に行動していたことが挙げられます。ここが私が思うあがり症との最大の違いだと思います。

これは私がSNSで行った当事者アンケートなのですが、やはり当事者の大半が社交不安障害とあがり症は別物であることを示しています。

この違いを生む背景には社交不安障害の人が、小学校の頃はとても活発だったのに発症してから人が変わったように、人前に出ることを回避するような行動を取っていたということがかなり見受けられるからでしょう。

社交不安障害には強い回避行動がつきものです。回避行動を続けてしまうことで自己肯定感も乏しくなり、周りから否定的な視線で見られているのではという歪んだ見方をするようになっていきます。この状態になってしまうと対人関係に強い不安を抱いて、人と関わるあらゆることに対して回避行動を取るようになり悪循環に陥ってしまうのです。

さすがにあがり症といわれる人であっても、あらゆる対人関係のシチュエーションで回避行動を取ることは考えにくいと感じます。

社交不安障害の症状の表れ方は人によって様々ですが、よく混同されるあがり症との違いは以下のようにまとめることができます。

あがり症 社交不安障害
相違
  • その状況にさらされる直前に強い不安を感じる
  • 話し始めると意外にも不安がおさまっていく
  • 話し終えた後は気持ちが楽になる
  • 不安に慣れることが可能
  • 特定の場面で症状が表れることが多い
  • 人前で話すという経験不足に起因するところがある
  • その状況にさらされるずっと前から強い不安を感じる
  • 話し始めても不安がおさまらず絶えず不安がつきまとう
  • 話し終えた後は恥ずかしさがこみあげる
  • 不安に慣れずむしろ過敏になってしまう
  • あらゆる場面で症状が表れることが多い
  • 人前で話す経験があっても発症するところがある

人見知りと社交不安障害の違い

続いて人見知りと社交不安障害の違いを考えていきたいと思います。人見知りも社交不安障害と同様、人と接することに対して何かしらの不安を感じることは同じですね。

人見知りと類似する言葉に、内気や引っ込み思案がありますが、人見知りというのは具体的にどういうことを指し示すかというと、初対面の人に対して気遅れしたり、人と会話する際にもじもじして受け答えがぎこちなかったりする様だと思います。

また人見知りは幼少期からその傾向を表すことが多いので遺伝的な要因が強いとされますが、そのことがすべてではなく育ってきた環境も大きく関わってきます。

ところで人見知りの人が絶えず人に対して不安を感じるかというとそうではなく、とりわけ初対面の人に対して強い不安を感じやすいというのはあると思います。なので何度も会っているうちに少しずつ不安が軽減されることがあります。

さらに人見知りの心理的背景には、他人に自分の存在を受け入れてほしい、他人から無視されるのが怖いというのが存在します。

実は人見知りである人ほど自己観察力に秀でて、それでいてやり取りする相手に対してその相手が自分を受け入れてくれるかどうかを瞬時に判断します。

だからこそ、内心では相手に自分の存在を受け入れてほしいと思いながらも、その相手が果たして本当に自分を受け入れてくれるのか、もしかしたら無視されるのではないかという気持ちが入り混じっていて、それが行動として表れます。

特に初対面の人に対しては探知センサーのように心が反応して、相手を探る形になってしまいますので会話がぎこちない感じになってしまうことが多いのです。

なので人見知りの人は、一度相手が自分を受け入れてくれる人だと感じた時は、初めて出会った時より会話のやり取りが軽快で初対面のイメージを覆すことが多々あるのです。

一方で社交不安障害の場合、社交不安障害を発症する要因としては遺伝的なもの、環境的なもの、社会的なものなどがあり、もちろん社交不安障害を抱える人の中には昔から人見知りでそのまま大人になってしまいましたという人もいると思います。

しかしあがり症のところでも言いましたが、社交不安障害は思春期の頃に発症するケースが多く、小学校の頃はとても活発だったという方も少なくありません。人見知りという言葉は子どものひとつの様子を表す言葉でもあることから、社交不安障害と人見知りにはその症状が見られる時期にずれが見られるのが分かります。

しばしば社交不安障害の人は、関わった相手に対して恥をかきたくないという思いから自分の存在を忘れてほしいという気持ちが見受けられるので、他人から親しくされると自分を受け入れてくれたという安心感よりも、むしろどこか疑いの目で見てしまい不安を感じてしまうことがあります。

他人に自分の存在を受け入れてほしいという人見知りの根底にある思考と恥をかきたくないが故に自分の存在を忘れてほしいという社交不安障害の思考とでは、逆であることが分かります。

だからこそ人見知りよりも社交不安障害の方が人と接する場面や機会を回避するという行動が強く見られるのではないかと思います。

あがり症の時と同様、人見知りと社交不安障害を対比させると以下のようにまとめることができると思います。

人見知り 社交不安障害
相違
  • 他人から無視されるのが怖い
  • 他人に自分の存在を受け入れてもらいたい
  • 初対面の人に対して強い不安を感じやすい
  • 他人に親しげに接してもらえると安心する
  • 他人から侮辱されるのが怖い
  • 他人に自分の存在を忘れてもらいたい
  • 初対面に関わらず何度あっても強い不安を感じやすい
  • 他人に親しげに接してもらえると逆に困惑する

対人関係における不安を表す社会不安は、程度の差はあっても誰しもが感じるものです。

その社会不安に含まれるものとしてあがり症や人見知り、そして社交不安障害や回避性パーソナリティ障害があり、あがり症や人見知りは病気ではなく気質として、一方で社交不安障害や回避性パーソナリティ障害は病気としてその違いについて見てきました。

一般的に社交不安障害というもの自体の認知度が低く、あがり症や人見知りという言葉の方が馴染みがあるので、どうしても社交不安障害を病気としてではなく気質としてみなす人が多いと思います。

しかし社会不安というものを細かく見ていけば、社交不安障害があがり症や人見知りとはまた違ったものであることは理解できると思います。そして理解が進むと、社交不安障害というのは心の病気であり当事者が苦しんでいることは容易に分かることでしょう。

また社交不安障害を病気と位置付ける理由には病気というものは治るものである、良くなっていくものであるという認識から、当事者自身が治そうという気持ちを持つためでもあると感じています。

ただし治すためには、その治療ができる適切な環境が求められます。もちろん周りのサポートや正しい理解も当然必要になってきます。

今回示した社会不安という大きな枠組み、その中に含まれる性質の異なるタイプの存在、そして各々の違いについて正しく理解するにあたって役に立てればいいなと思います。

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