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アサーション・トレーニングとは!?手順、効果、特徴について

皆さんは、「アサーション」という言葉を聞いたことがありますか。

コミュニケーションという言葉は頻繁に聞くのに、一方でアサーションという言葉はほとんど聞かないというのが大半の人の感想なのではないでしょうか。

今回、アサーションとは何か、アサーションを身につけるアサーション・トレーニングとは何かについて見ていきたいと思います。

アサーションとは

アサーションとは、自分を大切にしながら同時に相手のことも尊重し配慮した対応のことを指します。

根底には、誰しもが異なる価値観や考え方があり、そうした価値観や考え方を表現することを基本的な人権として大切にするという思いがあります。

そのためアサーションは自己表現の意味合いを持っているものの、自分の気持ちや考えを素直に、正直に相手に伝えるのと同時に、相手もまた同様の権利を持っており、相手の言い分も聞き入れようとする態度が必要になってきます。

しばしばアサーションは自分の思い通りに相手を動かす手段と誤解されることもありますが、そうではなく自他調和、自他尊重の精神で、自分も相手も大切にする表現する方法なのです。

互いに自分の気持ちを表現すると、時には意見が合わなかったり、考え方の相違があったりしますが、そうしたことが起こる前提としていますので、違いが生まれた瞬間から、アサーションの本領が発揮されると言ってもいいでしょう。

例えば、こんな状況があったとします。

Aさんと映画を見に行く予定があったBさん。しかしそこにCさんが現れ、Bさんに「カラオケに行こう」と提案します。

ところがBさんはもともとAさんと約束があったので、Cさんの提案を断らなければいけません。

でもBさんとCさんは深い仲なので、Cさんの提案を無下にできません。Aさんとの約束もあるし、Cさんとの関係もあります。

この例に限らず、板ばさみ状態になってしまうことは日常生活のあらゆる場面で遭遇するのではないでしょうか。そんな時にアサーションが役に立ちます。

まずBさんには先約があることをCさんに正直に伝える必要があります。もし正直に伝えなければ、Cさんのことを信頼せず疑ってみていると問い詰められてしまう可能性があるので、できるだけ素直に正直が大切です。

ここでCさんの返答が、「それなら仕方が無い、わかったよ」とBさんの言い分を受け入れてくれるのか、それとも「Aさんと一緒に映画に行くよりも、カラオケのほうが楽しいよ」とBさんの言い分を受け入れてもらえないか、肯定か否定かの二通りのパターンが想定されます。

もし受け入れてもらえれば話はすんなりと解決するのですが、そうでない場合は、Bさんはさらなる対応が必要になります。

Aさんとの約束を守るのか、それともAさんに断りを入れてCさんの提案に乗るのか、ここで仮にBさんの気持ちが「Aさんとの約束を守り、映画を見に行く」とした時、ここでも自分の気持ちを大切にして、今回はCさんの提案を受け入れられないことを正直に話す必要があります。

正直に話した結果、それでもCさんが「カラオケのほうがいい」と言う事もあるでしょう。

そうした場合、その場に相応しい柔軟な対応で協力的に話し合うことが求められ、双方ともに歩み寄った満足のいく解決策を導き出すのです。

自分の意見を尊重し、かつ相手の意見も尊重してこそ本当のアサーションができるのです。

BさんとCさんのやり取りに戻って、Cさんの意見を尊重して、BさんはAさんと約束した日時を変更する案を提案することになるかもしれませんし、CさんBさんに対して、Bさんの意見を尊重して、Aさんとの映画の後にカラオケに行く案を提案することになるかもしれません。

いずれにしても双方が結果的に満足のいく解決案が求められます。

こうしたお互いが納得して結論を出すことは、お互いの違いを認めて大切にし合ったことで生まれたものなので、双方の親密さをより深めるためにエネルギーを使ったことになります。

無益な争いではなく、双方に利益になるようなやり取りになっているという意味でも、アサーションを主体としたやりとりは私たちが他者とより良い人間関係を形成するうえで大切な要素になってきます。

正しいコミュニケーションスタイルと誤ったコミュニケーションスタイル

アサーションを全て理解できなくても、双方に利益がでるようなコミュニケーションスタイルというのが正しいと思えるのではないでしょうか。

ところが実際にコミュニケーションを行ってみると、時には相手に遠慮して言いたいことが言えなかったり、逆に相手に意見を言う機会を与えず、一方的に自分の言いたいことだけを言ったりと、アサーションのようなコミュニケーションスタイルとは程遠いものになってしまっていることが往々にしてあります。

自分の意見を言えないようなスタイルを非主張的表現、相手に意見を言えないようなスタイルを攻撃的表現と呼ばれていますが、非主張的表現では、他人本位で自己否定的、卑屈で引っ込み思案の傾向を示す人に見られますが、とりわけ不安障害のひとつである社交不安障害を患う人に見られるコミュニケーションスタイルでもあります。

一方で、攻撃的表現では、自分本位で他者否定的、尊大で強がりの傾向を示す人に見られますが、こちらはパーソナリティ障害である境界性パーソナリティ障害や自己愛性パーソナリティ障害を患う人に見られるコミュニケーションスタイルでもあります。

あくまでもコミュニケーションスタイルから見てということなので、そうしたスタイルを持っているから病気であるということではありません。

ただ、誤ったコミュニケーションを続けていくと、そのうちに自分へのダメージが蓄積され病気になってしまいますので、アサーションのような適切な表現方法を身につける必要性が高く、そのためのトレーニングも大切になってくるでしょう。

アサーション・トレーニングの特徴

アサーション・トレーニングは適切なコミュニケーションの根幹に関わるので、様々な職域や年齢層に向けて行われているのが現状です。

医療や介護などの援助職に従事している人とそのサービスの受け手となる人とのコミュニケーション、企業における管理職の人と部下との職務上のコミュニケーション、さらには親子や夫婦関係、学校における教師と生徒の関係など、様々な立場や状況でコミュニケーションが存在しており、それぞれの年齢や目的に応じたプログラムが開発されています。

またアサーション・トレーニング自体は、それだけを単独で行う場合もあれば、SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)の一部として行われる場合もあります。

SSTの一環として行われる場合、これまでに体験したことや経験したことの中で身についた不合理な考え方、狭まった捉え方を修正し、社会技能や生活技能を身につけることを目的とするので、言語的なコミュニケーションだけではなく、対人関係そのもののやり取りや、社会的な状況での適切な対応なども学び、一連の流れとして正しいコミュニケーションスタイルを習得することが期待できます。

どのような方法であっても、本人がどのようなコミュニケーションを望んでいるのか、日常生活でどういう困りごとがあるのかを把握したうえで行われる必要があるでしょう。

アサーション・トレーニングの手順

アサーション・トレーニングの内容は、職域や年齢に応じて様々なので固定されているものではありません。

ただアサーションそのものは、「自分の気持ちや考えを表現してみること」から始まりますので、老若男女問わず、自分の気持ちや考えを正確に捉えるスキルを身につける必要があります。

当然のことですが、自分の気持ちや考えが分からない時は自分の意見が言えず、また相手の問いかけに対しても曖昧な回答になってしまい、適切なコミュニケーションを図ることができません。

自分の素直な気持ちを捉えるためにも、あらゆる物事に対して、常に主語を「私」にして、「私は○○だと思う」、「私は○○と考える」というような感じで、自分の気持ちを明確にします。

また適切なアサーションを導くためにも、自分の周囲の状況や相手の観察というのを疎かにしてはいけません。

周囲の状況を見誤って、自分勝手な判断になり相手と諍いになっては、相手を尊重するということが難しくなりますし、相互理解も失ってしまいます。

そもそも相互理解を促すためにコミュニケーションがあり、コミュニケーションを円滑に進めるためにアサーションがあります。

相手と理解を深めたい、そんな時こそ冷静になって客観的な視点で相手を観察する練習が必要なのです。

自分の気持ちや考えを正確に捉えるスキルや、周囲の状況を把握し相手を観察するスキルというのは普段の生活の中でできることなので、やろうと思えば個人的に行うことができます。

ただし自己理解に歪みを抱えていると他者理解を歪めてしまう可能性が高く、アサーションを困難にさせてしまうため注意が必要です。

例えば、自分のことをダメな人間だと思っている人というのは、自分よりも権威がある人、肩書きがある人に出くわすと自分の特徴を見失ってしまい、相手に屈したような形となり自分の気持ちを正直に伝えることが困難になってしまいます。

その一方で、自分を過剰なほど高く評価している人というのは、モノの見方が偏りがちなので、正当な意見を軽視して強引にことを運ぼうとします。当然、相手のことなどお構いなしなので自然と嫌われたり、避けられたりするようになってしまいます。

それゆえ、自分が他者からどのように見られているのかを正しく理解し認識するうえでフィードバックが必要になります。

フィードバックだけはさすがに自分だけでやるということはできないので、訓練の実施者と一対一のやり取りの中で行ったり、あるいはひとつのグループを形成して、参加者が互いに指摘し合ったりすることが望ましいです。

アサーション・トレーニングの流れとしては、SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)の一部に組み込まれていることもあり、SSTと同様の流れになることもありますが、一応基本的なものとしては、ロールプレイ形式で、様々な状況に応じて自分の気持ちを正直に伝える練習を繰り返し行い、その都度、フィードバックを受けて自分自身の中でアサーションの感覚を身につけていきます。

場合によっては、ロールプレイの前に、どのような会話や感情表現をしたらいいのかなどの模範的な行動や表現について見て学ぶモデリングが行われることもあります。

いずれにしても、本人がどのような場面においても適切に自己表現できるまで繰り返し行われます。

日本は各国と比べても、非常に空気を読むことを強いるハイコンテクスト文化であり、あれこれ言わなくても済むような風土が根付いていますが、時代の移り変わりやインターネットなどのツールの発展に伴い、一昔前よりも自分の意見や考えを発言する人が増えてきています。

ただし、自分の意見や考えを発言する人が増えたと言っても、実際に相手を前にして面と向かって何かを言うというよりは、インターネットを活用して、匿名性を保持した形で発言している人が多いような気がします。SNSもその典型的な例でしょう。

自分の意見や考えを率直に言える姿は一見するとアサーションに見えますが、相手から鋭い指摘を受けても、相手と自分の違いを認めず自己を正当化し、他者を蔑むような言動を繰り返しているケースも多々見受けられ、明らかに相手を尊重し配慮する姿勢がないのは、残念ですが、アサーションとは言えないものになってしまいます。

様々なコミュニケーションスタイルを見ると分かりますが、アサーションは思っている以上に難しいものです。

またそもそも、コミュニケーションというのは身近な人を真似ることから始まるケースが圧倒的に多いため、それゆえアサーションについて学ぶ機会もなければ、そうした訓練をすることもないと言えます。

今回、アサーションについて色々と見てきましたが、特に不安障害のひとつである社交不安障害や、パーソナリティ障害である境界性パーソナリティ障害や自己愛性パーソナリティ障害などは、適切なコミュニケーションが取れていないことが往々にしてあります。

もちろんアサーション・トレーニングは、様々な症状や問題に対処するひとつの方法に過ぎませんが、こうしたアプローチの仕方もあることを知っていただけたら嬉しく思います。

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