不安障害を主なテーマに、その症状や原因、治療法などについて、当事者や家族だけではなく、不安障害そのものを知らない人に向けて正しい認識や理解を目指して情報を発信しています。

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電話恐怖の原因、症状、治療法のあれこれ

社交不安障害の症状が表れる恐怖対象のひとつに電話恐怖というものがあります。

呼んで字のごとく電話に対する恐怖が著しく、日常生活において電話が出来ない状態に陥っているというのが特徴です。

比較的若い世代で見られる電話恐怖ですが、ただ単純に「電話が苦手」というだけでは電話恐怖とは言えない部分があります。

ではどういった状態が電話恐怖なのか、電話恐怖によって引き起こる様々な問題、そして原因や治療法などについても見ていきたいと思います。

「電話が苦手」という意識は誰にでも起こりうる

主な連絡手段が電話という時代から、現在ではメールやチャット風のトークアプリなど様々な連絡手段、コミュニケーションツールの登場により、以前と比べれば電話そのものの機会が減っているように感じている人も多いと思います。

実際、マイナビが2018年卒の就活生を対象に実施した「ライフスタイル調査」において、友人とのコミュニケーションに使用するツールは9割がLINE、一方で電話はたった1.3%と、電話の使用頻度が極端に少ないことが明らかになっています。

そうした状況から、社会に出るまでに電話でのやり取りがあまりなかったという若者が仕事での電話応対や営業のアポ取りに躓き、そこから電話のやり取りそのものが苦手になっているケースが目立つようになってきています。

人によっては、電話応対の失敗経験から電話が鳴るたびに心臓がバクバクし、受話器を取るのが億劫でそのたびに恐怖心が沸いてくる人もいるでしょう。

また企業側としても、電話応対自体がコミュニケーションスキルのひとつという認識を持っており、仕事の評価対象として電話のレスポンスの速さという対応力を評価し、電話に苦手意識がある人にとっては業務評価という面で不利になってしまうことがあります。

電話応対が過剰なストレスを呼び体調不良になってしまった人、あるいは電話応対がない仕事に転職せざるを得ない状況になった人、電話のやり取りがその人の人生に悪影響を及ぼしてしまうケースも少なからずあるために、見過ごすことが出来ない問題でもあると言えるでしょう。

とは言っても、普段から電話をあまり使用しない人が、すぐに電話応対がうまく出来るわけではありません。さらに言えば、世代間の認識の違いからか、「電話が出来て当たり前」と思っている人も少なからずいるために、「どうして電話が苦手なのか」という理由や原因の話がなく、無理やり電話応対をやらせて、より一層、当事者の苦手意識を強めてしまっている節もあるのではないかと思います。

もともと電話に対して苦手意識がある人が多い世代では、その分、文字だけによるコミュニケーションには慣れている面もあり、文章でのやり取りにはさほど苦労していないので、電話に対する苦手意識というのは、コミュニケーションのツールが変わったことによる弊害が顕在化した結果でもあると言えます。

しかしながら、「電話が苦手なのでその業務はできません」という状態では明らかに仕事に差し支えるので、電話の苦手意識が電話そのものの恐怖へと変わってしまう前に、日頃から電話によるコミュニケーションを心掛け、意識的に回数を増やし成功体験を積み重ねていくことも必要でしょう。

そしてもしも苦手が恐怖へと変わってしまったのならば、日常生活への影響や症状の程度によっては医療的な介入が求められると思います。

電話恐怖とは何か

ここで言う電話恐怖というのは、電話で話す、電話をかける、電話に出るといった状況に対する恐怖であり、電話から出る電波を怖がるような状態を指しているものではありません。

また、もう少し細かく見ていくと、電話恐怖を感じている人というのは、電話で話している相手や自分が電話をかけている際の自分の姿を見ている人に対して恐怖を感じています。つまり人に対して恐怖を感じているので対人恐怖と似通う点があると言えます。

なお、電話恐怖という診断名はないものの、もし電話恐怖によって著しく生活が脅かされているのであれば、限局性恐怖症あるいは社交不安障害といった診断を下されるケースがあります。

電話恐怖を自覚している人の多くは以下のような症状が表れることを訴えています。もしあてはまるようであれば可能性として高いと言えるでしょう。

  • かかってきた電話に出る事が困難である
  • 自分から電話をかけることが出来ない
  • 電話で話しているのを誰かに聞かれるのが怖い
  • 電話で話している姿を誰かに見られるのが怖い
  • 電話を持つ手が著しく震える

ここに挙げたもの以外にもあるとは思いますが、おおむね電話恐怖の症状を呈する人というのはこうした症状や認識を抱えています。

また中には、自分の声が嫌いで電話が苦手、上手に言葉を発音できないから電話したくないなどの理由で電話に対する嫌悪感を持っているケースもあると思いますが、自分の声や発音に対して不安を感じている場合は、また違った病態として捉えられることがあります(例えば吃音など)。

そのため特に発音も問題なく、相手が聞き取れる声にも関わらず、電話の受け答え、また電話しているのを聞かれたり見られたりすることに恐怖を感じている場合が電話恐怖の特徴的な病態と言えるでしょう。

電話恐怖を感じてしまう背景には、相手が見えない分、電話をしている相手に対してどのように思われているのか、不快を与えているのではないかという不安があるケースもあれば、以前に執拗に電話口でクレームや脅しを受けたことによる嫌な体験が基になっているケースなどがあります。

様々なケースがあると思いますが、その根底に「他人に不快な思いをさせるのではないか」、「自分が恥をかいて恥ずかしい思いをしてしまうのではないか」という思考があるのであれば、社交不安障害に該当する電話恐怖の可能性が高く、執拗なクレームや脅しを受けたことによって電話自体が怖いという認識を持っている、誤った条件付けがなされてしまった場合であれば限局性恐怖症に該当する電話恐怖の可能性が高いと言えます。

もちろん両方に該当している場合もあるので、明確な線引きができるわけではないですが、電話の内容に関わらず自分が電話をしている姿を見られることが辛いということがあれば社交不安障害における視線恐怖の症状にも大きく関係する話なので、自覚している症状がどのようなものなのかを確認することが大切です。

なお、これ以降は社交不安障害として考えられる電話恐怖について見ていきたいと思います。

電話恐怖の原因

電話恐怖は社交不安障害に見られる症状のひとつでもあります。

その社交不安障害についてですが、まだ直接的な原因は知られていません。同様のことが電話恐怖についても言えるでしょう。

しかし電話恐怖が社交不安障害の症状として考えられることから、発症のリスクを高める因子として、生まれつき不安や恐怖を感じやすい気質、生まれ育った環境やこれまで生きてきた中でのネガティブ体験、文化的な背景などが考えられます。

そうした様々な要因が相互作用しあって症状を引き起こしていると言えるでしょう。

また社交不安障害には全般性と非全般性(限局性)のタイプがあります。電話恐怖以外の症状が表れることもあり、一概に電話にまつわることで恐怖体験を受けているとは言い切れない部分もあります。

一例ですが、誰かから見られることに対する恐怖が著しく強く、その結果、派生的に自分が電話をしている姿を見られることが辛く日常生活に支障をきたしてしまっていることもあります。

また幼少期の頃から感受性が強く、他者配慮が強い行動をとってきた人ほど、相手の表情が見えず言葉にしか頼ることができない電話に対して、「相手を不快にさせていないだろうか」という思いが強く表れてしまい、電話することに不安や恐怖を覚えてしまうこともあります。

電話恐怖の改善法・克服法について


電話恐怖の治療の第一歩として、症状について詳しく知り、またその症状に隠れた背景を治療者と一緒に紐解いていく必要があります。

当事者の向き不向きはありますが、治療法の候補として、お薬によるものと心理療法が考えられます。

怖くて電話できないことに対してお薬を使う必要があるのかという疑問の声もあるかもしれませんが、電話恐怖に苦しみ、著しく日常生活に悪影響が出ている場合は、最初のステップとしてお薬によって不安症状を抑えて、徐々に電話に出たりかけたりといった行動に移していくという方法も十分に考えられるため、治療法の候補として挙げられるのです。

ちなみに、お薬によるものでは、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬を処方されることが多いです。

お薬は正しい使い方が前提で、たとえお薬を服用し続けて症状がなくなったとしても、症状がぶり返さない為にも、最低でも1年以上は飲み続ける必要があると言われています。

一方、心理療法では認知行動療法や曝露療法(エクスポージャー法)、対人関係療法、そして森田療法などが候補に挙げられます。

認知行動療法という言葉を一度は耳にした人も多いと思いますが、認知行動療法というのは、モノの捉え方や考え方の歪みを直していくことを目的とする心理療法です。そしてその治療プログラムの一環として曝露療法(エクスポージャー法)があります。

曝露療法(エクスポージャー法)では、あえて自分の恐怖や不安となっているものに身を置き、慣れさせて成功体験を獲得することを目的とします。小さな不安から徐々に大きな不安へと段階的に不安を感じる状況を作り上げて不安に対する免疫力をつけていく段階的曝露、不安に対する曝露は一度だけでは効果が期待できないので何度も同じ状況を繰り返す反復曝露、この2つのタイプの曝露をベースに行っていきます。

対人関係療法というのは、発症のきっかけとなっている対人関係上の出来事を把握して、そこからどのような影響を受けているのかに着目して治療を行う心理療法です。

森田療法とは、不安や恐怖そのものは誰もが抱く感情であることを知り、そのような感情を抱くのは異常なことではなく、むしろ、そういう感情を含めてあるがままの自分を受け入れることを目指す心理療法です。

もちろんどの治療法にも一長一短はあります。また当事者一人ひとりの背景が違うため、適宜治療を組み合わせてオーダーメイドのような治療がベストになると思います。

電話という伝達手段は私たちの生活には欠かすことができない存在です。

しかし世の中には電話に出たりかけたりすることに対して恐怖を感じている人もいるのです。

大多数の人から見れば、そこまで電話のやり取りにとらわれすぎて生活にまで影響が及んでしまうことについて理解しづらい面があるかもしれません。

ところが実際には、電話が出来ないことで病院の予約ができない、年金や健康保険のことで行政に聞けないなどの支障が出てきてしまうケースが往々にしてあります。

また近年では、ITリテラシーの高い若い世代ほど非通知設定の電話には出ない、スマホの電話帳に登録されている連絡先以外からの電話には出ないといった、自己防衛の行動を取る傾向にあり、電話に対する苦手意識から恐怖感情の芽生えと繋がってしまう可能性も否定できないため、今後、電話恐怖がひとつの社会的な問題になってくるかもしれません。

それでも、苦手意識がありつつも電話できている状態ならば過度に病気扱いにする必要もないと思います。少しずつでもいいので、出来る範囲で電話に出たりかけたりを繰り返しながらイメージを変えていくことで、状況が変わっていくのではないかと思います。

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