不安障害に関する症状や原因、治療法などについて、その当事者や家族、また不安障害を知らない人に向けての正しい理解を目指した特化サイトです。

不安障害ラボ

不安障害に関する症状や原因、治療法などについて、その当事者や家族、また不安障害を知らない人に向けての正しい理解を目指した特化サイトです。
>>当サイトの詳しい説明はコチラ

  1. 不安障害ラボ
  2. パーソナリティ障害
  3. 自己愛性パーソナリティ障害とはどんな病気!?

自己愛性パーソナリティ障害とはどんな病気!?

人間が一人ひとり違うのは、その人自身を表すパーソナリティ(人格)と呼ばれる特徴を持っているからです。

パーソナリティ(人格)は、性格よりももう少し広い意味で捉えることができ、例えば言葉づかい、振る舞い、モノの見方、感情表現の仕方、他者との関わり方などは、その人のパーソナリティというものが大きく関わっています。

また、たとえ同じ両親から生まれてきた子どもたちであっても、兄弟や姉妹で性格や行動がまるっきり違うということもあるので、パーソナリティというのはその人らしさの象徴と言えるのではないでしょうか。

そのため本来であれば無理に変える必要はないのです。

しかし場合によっては、各々が持つパーソナリティが極端に偏ってしまい、それが原因で社会の中で生きていくには邪魔になってしまうケースがあります。それがパーソナリティ障害というものです。

パーソナリティ障害はいくつも種類がありますが、今回はそのなかでも自己愛性パーソナリティ障害に焦点を当てたいと思います。

2種類の自己愛について

「自己愛」という言葉についてですが、単に「自分を愛すること」を表す言葉として捉えられると思いますが、実は思いのほか奥が深くて、KohutやGabbard、Stolorowなどがこのテーマについて色々な研究実績を残しています。

Stolorowによれば「自己像がまとまりと安定性を保ち、肯定的情緒で彩られるように維持する機能」を自己愛の定義としています。

自己愛は健全な精神を保つうえで必要な要素ではありますが、それが大人になる過程で発達が未熟のままになってしまうということが往々にしてあります。

自己愛と言うと、きっと多くの人が「ナルシスト」や「自己顕示欲の塊」といった誇大化している自己愛を想像すると思いますが、その一方で周囲を気にしすぎる自己愛というのもあるのです。

Gabbardの理論が有名ですが、直線上にある両極端な自己愛は、それぞれ「誇大型」と「過敏型」という名称で呼ばれ、どちらも精神的健康を阻害する可能性を示唆しています。

Gabbardが示す「誇大型」、「過敏型」はそれぞれ以下のような特徴を示すことが知られています。

最初に示すのが誇大型の自己愛に見られる特徴です。

  • 他の人々の反応に気づくことがない
  • 傲慢で攻撃的
  • 自己に夢中
  • 自分が注目の中心にいる必要がある
  • 自分から発信する人であるが、受け手の人ではない
  • 明らかに他の人に傷つけられたと感じることに鈍感である

次に示すのが過敏型の自己愛に見られる特徴です。

  • 他の人々の反応に敏感である
  • 抑制的で、内気で、あるいは自己消去的
  • 自己よりも他の人々に注意を向ける
  • 注目の的になることを避ける
  • 侮辱や批判の証拠がないかどうか注意深く他の人に耳を傾ける
  • 簡単に相手から傷つけられたという感情を持つ

このようにそれぞれの特徴を見ていくと、「自己愛」と言っても内容が両極端になっていることが分かります。

自己愛性パーソナリティ障害とは何か

自己愛には、タイプとして「誇大型」と「過敏型」がありました。同様に自己愛性パーソナリティ障害においてもサブタイプとして「誇大型」と「過敏型」が確認されています。

ただ過敏型に関しては、同じパーソナリティ障害群に属する回避性パーソナリティ障害と類似する点も多く、例えば、「他者から注目されることを避ける」、「抑制的で自分自身の存在を消したいと感じる」、「容易に他者から傷つけられたという感情を持つ」といった特徴はほぼ同じです。

そのため、こうした様子が見られる場合は、自己愛性パーソナリティ障害という診断名よりも回避性パーソナリティ障害という診断名が優先されたり、あるいはそれ以外の精神疾患が候補に挙げられたりします。

また『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』を見ると以下のような基準を持って自己愛性パーソナリティ障害と診断されますが、内容を確認する限りは誇大型の特徴が主となっています。

なので以降の自己愛性パーソナリティ障害に関する説明については、誇大型の話を中心に見ていきたいと思います。

  • 誇大性(空想または行動における),賛美されたい欲求,共感の欠如の広範な様式で,成人期早期までに始まり,種々の状況で明らかになる。以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される
      • 自分が重要であるという誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する,十分な業績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待する)
      • 限りない成功,権力,才気,美しさ,あるいは理想的な愛の空想にとらわれている
      • 自分が”特別”であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達(または団体)だけが理解しうる,または関係があるべきだ,と信じている
      • 過剰な賛美を求める
      • 特権意識(つまり,特別有利な取り計らい,または自分が期待すれば相手が自動的に従うことを理由もなく期待する)
      • 対人関係で相手を不当に利用する(すなわち,自分自身の目的を達成するために他人を利用する)
      • 共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない
      • しばしば他人に嫉妬する,または他人が自分に嫉妬していると思い込む
      • 尊大で傲慢な行動,または態度

    -American Psychiatric Association(高橋三郎、大野裕、染矢俊幸ほか訳)『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』医学書院より引用-

    自己愛性パーソナリティ障害の人は「自分は特別な存在である」と思っており、周囲からの過剰な賞賛を求めるというのが特徴です。

    自分が特別な人間であることを証明するために、地位や権力、ある種のステータスを持っている人に接近し、その人たちを上手に利用して自分の存在を際立たせるという行動を取ります。また「天才」、「ナンバーワン」、「日本一」などの言葉を好み、会話の中で多用する傾向にあります。

    しかしその一方で批判や非難にめっぽう弱い、あるいは自分の非を全く認めないという特徴もあります。

    場合によっては、非難されることで自分の弱さが露呈してしまうことを恐れ、社会的なひきこもりに繋がってしまうケースも少なくありません。テレビ番組などで、ひきこもり本人が家で王様のような振る舞いをして、家族を召使いのように扱っているシーンがありますが、その背景には自己愛性パーソナリティ障害が関係していることもあります。

    自己愛性パーソナリティ障害の主な原因

    全てのパーソナリティ障害に共通することですが、パーソナリティというのはその人自身を表す特徴でもあるので、生まれ持った気質と生まれ育った環境が大きく関係しており、そしてその二つの要因にこれまで生きてきた中で経験した出来事が相互に組み合わさって、パーソナリティに偏りが生まれてしまいます。

    とりわけ自己愛性パーソナリティ障害に見られる要因としては、当事者と養育者との間で生じたアンバランスな愛情関係が考えられます。

    Kohutの理論を参考にすると、親から離れ、一人の人間へと成長する4、5歳ぐらいの時期が、成熟した自己愛を形成する大切な時期だと言われています。

    しかしこの時期において、顕示欲求や承認欲求が親によって程よく満たされていないと、いつまでも本人の中に残ってしまいます。しばしば自己愛性パーソナリティ障害の人の幼少期というのは、最も愛情を感じていた人との別れを経験していたり、あるいは別の人に奪われていたりします。

    親から程よく褒められるという行為は承認欲求を満たすものですが、こうした経験が不足していた可能性が高いのです。

    また幼い子どもにとって母親というのは、全てを受け入れてくれて、優しさに溢れているという理想的な存在に映ります。

    しかし現実の母親の姿と理想の母親の姿を比べて裏切られるような形になってしまうと、その理想像が過剰すぎる形で本人の中に存続し、支配し続けてしまうのです。

    結果的には自己愛が肥大化し、自己愛を守ろうする表れから、傲慢で自分を特別な存在と捉えるようになるのです。また自分が抱いている理想と現実との間に大きなギャップを抱き、自分の小さな世界に閉じこもってしまうこともあります。

    自己愛性パーソナリティ障害を持つ人への接し方

    自己愛性パーソナリティ障害に対するイメージについて、多くの人がネガティブな印象を抱いており、「できることなら関わりたくない」というのが大方の本音だと思います。

    尊大で傲慢な行動や態度、他者に対する共感性の欠如を考えるとそれも仕方無いことなのかもしれません。

    また本人のためと思って助言しようとしても、自分は偉く特別な存在であることを疑わないので聞く耳を持たず、逆に激しい叱責を受けたり、無理やり筋を通そうとしたりして不毛な争いになってしまいます。

    ただ自己愛性パーソナリティ障害の人が持つ根拠のない自信というのは、未開な分野を切り拓いていくうえで素晴らしい能力として発揮されます。

    独創的で奇抜なアイデアで成功した人のなかには、このタイプのパーソナリティ障害を抱えていた可能性があります。岡田尊司先生の著書『パーソナリティ障害―いかに接し、どう克服するか (PHP新書)』では、ファッションブランド「シャネル」の創業者であるココ・シャネルが自己愛性パーソナリティ障害の可能性を示唆しています。

    人に頭を下げることを嫌い、傲慢な態度を示し、非社交的で孤独であったココ・シャネル。彼女が亡き今も「シャネル」というブランドがトップブランドとして世界中に認知されている背景には、彼女の傲慢さがあったからなのかもしれません。

    とは言うものの、やはり身近に自己愛性パーソナリティ障害の人がいることで、周囲にいる人たちが疲弊してしまう可能性があるため、何かしらの対応は必要になります。

    ではどのように接すればいいのでしょうか。

    このようなタイプの人は表向きの態度とは裏腹に、愛に餓えていたり傷つきやすかったりします。

    だからこそ、自分が傷つかないように自分の気に食わない意見に反発したり、自分を特別扱いして守りに入ります。

    相手の嫌な面ばかり見てしまうと批判したくなってしまうので、相手の抱えている背景を理解したうえで立場的には賞賛する側に回り、上手に持ち上げて接することが望ましいと言えます。

    また自己愛性パーソナリティ障害の人は基本的に気が小さく、嫉妬心が強いので、競争心をくすぐると強い動機付けになります。このタイプでの社会的ひきこもりには有効策のひとつになるでしょう。

    どうしても特性が特性だけに、このタイプを持っている人と付き合うのは容易なことではありません。場合によっては絶交してしまう可能性も十分にあります。

    相手が自由に付き合う人を選ぶことができるように、自分もまた同じ権利があります。世の中には波長が合う人、合わない人がいますので、本当に心の底から大切な人ということでなければ、深入りせず適度な距離を保って接したほうが心の健康には好ましいと思います。

    自己愛性パーソナリティ障害を克服する方法

    パーソナリティ障害全てに言えることですが、本人の行動自体が正当化されているために、自らの人格を治したいと病院を受診するケースというのはほとんどありません。

    多くの場合、うつ病や適応障害などの他の精神疾患と診断され、その背景としてパーソナリティ障害の可能性が指摘されることが多いです。ただ指摘されるだけであり、そのことを主訴としてまた第一診断名として挙げられるかどうかは医師の技量に大きく左右されます。

    また本人が自己愛性パーソナリティ障害であることを認めないことが往々にしてあります。そのため本人が受け入れることが克服するための最初のステップとなります。

    さらに受け入れたとしても、その特性上、他者からあれこれ指示されることを極端に嫌がるため、誰が言うのかという部分も重要になってきます。

    例えば、権威ある専門医が諭したり、あるいは本人が特別視している人から言われたりすることで聞く耳を持ってくれるかもしれません。

    また自己愛性パーソナリティ障害の人は他者に対する共感が欠如しているのが特徴でもあります。

    誰かと一緒に協力して、協力し合うことの素晴らしさというものを知ることが克服のきっかけになります。

    自己中心的な行動から自分を犠牲にして誰かのアシストにまわるという、今までの行動スタイルとは違った行動を取ることで、人から喜ばれる体験やチーム一丸となって目標を達成することの充実感を経験し、今までの価値観とは違った価値観を得ることが期待できます。

    克服の方法はひとつではありません。自己愛性パーソナリティ障害は様々な要因が絡み合っていることが多いため、本人の訴えや生活環境に応じて臨機応変に対応を変えていくことが良い結果を生むと言えるでしょう。

    自己愛性パーソナリティ障害は、周囲からの過剰な賞賛を求め、そのうえ傲慢で自分勝手な態度や他者に対する共感の欠如などの特徴があり、周囲の人が接したくないタイプとしてしばしば挙げられます。

    しかし当事者の過去をたどれば、愛情を必要とする時期に十分な愛情を受け取れなかった、満たされなかったという被害者の側面を持っています。

    また昨今、自己愛性パーソナリティ障害とまではいかないものの、TwitterやInstagramでやたらと自慢する人たち、自分の充実したシーンをアップロードして承認を求める人たち、自分の非を認めず他の人を罵倒する人たちなど、こういった人たちの心理的構造には誇大型の自己愛が大きく関係していると言えます。

    自己愛というのは精神的に安定を保つため、自尊心を構築するためには必要な要素です。また健全な自己愛があることで、他人を受け入れ愛することができます。

    しかし病的な自己愛は現実の等身大の自分を愛せず、理想的な自分を愛し続けるあまり、他人を容易に受け入れることができなくなってしまいます。

    自己愛性パーソナリティ障害に関しては正常と病気の境目が曖昧になっており、他の精神疾患の治療の過程でその疑いが表れることも多く、また無知から生まれる、この病気に対するスティグマ(負の烙印)が適切な治療介入を遅らせてしまっていることも少なくありません。

    どの病気にも共通して言えることですが、自分ひとりで問題を解決しようとすると逆に悪循環にはまり抜け出せなくなってしまうケースも多いので、少しずつ理解してくれる人が増え、当事者の克服に繋がっていってほしいと思います。

    参考文献の紹介

    スポンサードリンク

    アーカイブ

    月別一覧
    年別一覧

    profile

    管理人:ミヤシタソウジ

    プロフィールの詳細はコチラ

    当サイトの説明はコチラ

    Twitter:@soji_miyashita

    当サイトに関すること、その他個別の問い合わせがありましたらメールにてお願いします。

    Gmail:soji.miyashita★gmail.com
    (迷惑メール防止のため、送る際は★を@に変えてください)

    PAGE TOP