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社交不安のメカニズムを詳しく

社交不安というのは程度の差はありますが、誰しもが感じうる感情のひとつです。

今回は、社交不安がどのような状態を指し示すのかという概念的な話よりも、どのようなメカニズムで起きるものなのかということを中心的に見ていきたいと思います。

もし、社交不安の概念や定義について知りたい方は、以下の記事でまとめていますのでご覧ください。

社交不安のメカニズムについて

健康な人であっても不安という感情に苛まれるのは、ごくごく自然な働きです。

自分自身の健康や将来のこと、仕事や人間関係など、様々な事柄が不安を生むきっかけになります。

数ある不安の中で社交不安というのは、専門家の間でも様々な定義づけがされていますが、概ね言葉通り、社交的な場面において不安を感じることが「社交不安」と言えます。

そして、この社交不安に従属するような形で対人不安であったり、聴衆不安(スピーチ不安)であったり、さらにはシャイネス(shyness)やあがり(stage fright)などの用語が存在しています。

ところで、どうして社交不安というものが起きてしまうのでしょうか。

理論的に言われているのは、人間が持つ<学習>という機能と深く結びついているからです。

学校の授業でパブロフの犬について習った人もいると思いますが、ある出来事から学び、そこから学んだことを生かす仕組みが<学習>です。

学習は、自分がした経験や体験によって今までとは違う新しい行動様式を得るということなので、言うなれば行動の変容を表していますが、そうした行動が変わる基礎に古典的条件付けとオペラント条件付けの過程があると言われています。

古典的条件付け

古典的条件付けの系統的な実験を初めて行ったのがPavlovです。条件付けと言えば「パブロフと犬」と思い浮かぶくらい有名な人ですよね。

通常、イヌはベルの音を聞いただけでは唾液を分泌することはなく、餌を与えられることで分泌します。

そこでベルの音を利用して、イヌにベルの音を聞かせた後に餌をあげるように躾けると、やがてイヌはベルの音を聞いただけで唾液を分泌し、体験を通じて新しい行動を獲得したことになるのです。

この古典的条件付けは、自律神経系が支配する様々な反射にも当てはまると考えられていますが、それ以外にも嫌悪や恐怖といった情動にも影響を与えると言われています。

1920年にアメリカの心理学者Watsonは、人間の恐怖に関する実験を行いました。被験者となったのは小児病院で乳母をしていた女性の生後11カ月のアルバートという名の子どもです。

アルバートは特に大きな金属音を怖がり、その音を聞くと怯えて泣き出してしまいます。一方で、ネズミやウサギ、イヌなどの動物には怖がる素振りを見せません。

実験は、アルバートの前にネズミを置き、彼が触ろうとした瞬間、背後で鋼鉄の棒をハンマーで叩くというものです。最初は大きな金属音に驚いたものの、彼は再びネズミに触れようとします。次にもう一度大きな音を鳴らすと、今度は大声で泣き出してしまいました。

1週間後に、もう一度同じ実験を5回繰り返し、それから5日後に実験しようとしたところ、アルバートはネズミを見るだけで逃げ出すようになってしまいました。

もともとネズミに恐怖心を抱いていなかったのに、大きな金属音とともにネズミを認識することで、ネズミに対しても恐怖心を感じるようになってしまったのです。実験後、アルバートはウサギや毛皮のコートなど、ネズミに似た特徴のあるものまで怖がるようになってしまいました。

Watsonはこの結果をうけて「人間が抱く不安や恐怖の多くは、この実験のように幼少期の経験に由来している」と主張し、また、恐怖や嫌悪感などの感情は本能的なものではなく、ある種の刺激によって情動的反応が生まれ、繰り返し学習されることで身につくことを証明しました。

この実験は「アルバート坊やの実験」と言われることが多いですが、乳児に意図的に恐怖を与える行為は倫理的な問題であり、人間性を冒涜する行為として非難され、現在ではこうした実験は行われることはありません。しかし行動療法の研究に大きな影響を与えたのは事実です。

なお、実験の被験者であったアルバートは、実験が行われた5年後に髄膜炎が原因で水頭症にかかり亡くなっています。もし彼が大人になっていたらどういう大人になっていたのか、この分野の研究に携わっている人たちや、この実験を知っている人たちは少なからず興味があるのではないかと思います。

オペラント条件づけ

古典的条件付けは、ある刺激に誘発される反射や情動が対象になっていました。しかし行動の多くは特定の刺激がなくても自発的に行われることがあります。

アメリカの心理学者B.F. Skinnerは、自動販売機の仕組みを改良して、レバーを押し下げると目の前に餌が落ちてくる箱を作成し、その箱にネズミを入れて実験を行いました。

箱に入れられたネズミは当初レバーの存在を知りません。しかし箱の中で動き回っていると、偶然レバーを押すことで餌が落ちてくることを知ります。ネズミがレバーを押すことで餌がもらえることを学習すると、その後は、自発的に空腹状況に応じてレバーを押す回数に変化が見られました。

餌を得るためにレバーを道具として利用していることから道具的条件付けと呼ばれることがありますが、自発的に行動する(operate)ことが基本となっているのでオペラント条件付けとも呼ばれます。

ちなみにオペラント条件付けの実験は、アメリカの心理学者Thorndikeが行った実験が始まりで、その後、B.F. Skinnerによって体系的な実験が行われ、今日までに様々な分野や領域での実験に引き継がれています。

オペラント条件付けでは、自発的な行動が増加すること強化、減少することを罰もしくは弱化といい、また自発的な行動の頻度を高める働きをする環境の変化を強化子、低める変化を嫌悪刺激といいます。

特に嫌悪刺激を複数回繰り返すと、その状況からすばやく回避することを学習します。

こうした現象は動物だけではなく、人間にも当てはまり、例えば人から褒められればそれが強化子となって、褒められるような行動を取りやすくなり、一方で叱られればそれが嫌悪刺激となり、叱られるような行動が減っていきます。

では古典的条件付けやオペラント条件付けの原理が社交不安にどのように当てはまっていくのでしょうか。

社交不安障害ではなく、誰しもが感じうる社交不安ということに目を向けて考えると、例えば、人前で何か話をしなければいけない状況を想定します。

人前で話さなければならないときに、自分が思うほど上手に話せなかったことが過去にあり、それから人前で話すような場面が億劫になってしまったという人も多いと思いますが、その背景には過去に自分が上手に話せなかったという場面と、それに伴う日常生活では感じたことの無い緊張、恥ずかしさ、恐れなどの感情が結びついているからです。

つまり人前で話すという一種の刺激と自分の感情が結びついてしまうという、古典的条件付けの原理が働いているのです。またこのような反応は条件性情動反応とも呼ばれます。

そして、人前で話すことに苦手意識を持ってしまうことで、そうした状況から回避しようとする気持ちになり、実際に回避できると嫌な気持ちが軽減されます。

回避的な行動が、不安や恐怖を軽減するものとして働くため、次も同じような場面や状況に遭遇すれば、同じような行動を取りやすくなります。

こうした回避的な行動の背景にはオペラント条件付けの原理が働いています。そして次第にそうした場面を経験することが乏しくなってしまい、人前であがってしまうことで「あがり症」という認識を強めていってしまうのです。

社交不安は誰にでも起こりうるもの

条件性情動反応や回避的な行動というのは、人間が持つ環境に対する適応システムの過程で起こることなので、むしろ機能的な面で言えば正常な反応を示していることになります。

つまり、程度の差はあれ社交不安というのは誰にでも起こりうるものだと言えます。

しかし社交不安が慢性化し、不安が拡大していきコントロールできずに日常生活に支障をきたすようになってしまうと、これは正常範囲から離れた状態として考えられるため、そうなってしまうと「社交不安障害」という診断名のもと適切な治療介入が求められます。

また社交不安と社交不安障害の間には明確な境界線が存在しておらず、連続性を持っているため、しばしば社交不安障害が甘えと認識されてしまい、周囲の理解が得られにくい理由のひとつでもあります。

さらに感じている恐怖や不安そのものも本人にしかわからない面もあるので、なおさら理解するのが難しく、社交不安障害が病気なのか性格なのかという議論が起こってしまうのも無理もありません。

今回、社交不安のメカニズムについては、<学習>という行動的な側面から見ていきましたが、その行動を取るに至った認知的な背景として脳内のどの部位が働いているのか、あるいはどのような神経伝達物質が関与しているのかなど、実際のところは人間の脳の働きについても大きく関与してきます。

事実、脳内には様々な神経伝達物資が存在していますが、社交不安障害に関して言えば、その中でもモノアミンと総称されるドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンが大いに関係しており、モノアミンの働きが低下することで不安をより一層感じやすくなってしまいます。

そのため近年では、社交不安障害の治療法として、シナプス間隙でのセロトニン濃度を上昇させ、神経細胞のネットワークを活性させることを目的に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が処方される機会が増えています。

行動的な側面、認知的な側面を司っているのは脳の働きによるもので、脳の研究に関しては人体に残された最後の謎として、多くの研究者が日々研究に取り組んでおり、この分野に関しても今後新しくわかってくることがあるでしょう。

また社交不安を感じる人が必ずしも社交不安障害になるわけではなく、位置づけ的には社交不安という大きな枠組みのひとつに社交不安障害の症状が見られるということです。

当然、社交不安のなかにはあがり症や人見知りもありますし、回避性パーソナリティ障害といった病気も見受けられます。

社交不安は特に思春期と呼ばれる13~15歳にかけて多く見られる感情です。この時期は、自分の中で自我が芽生え、自分とは何かを分かり始める時で、他者との関わりを強く意識することで感じやすくなります。

また『精神疾患・メンタルヘルスガイドブック: DSM-5から生活指針まで』によれば、社交不安障害を発症する平均年齢は13歳で、75%の人が8~15歳までに発症すると言われています。

つまり社交不安障害もまた発症しやすい時期としては思春期が最も多く、社交不安を強く感じ、それによって日常生活に支障をきたしてしまうようになってしまうと社交不安障害の可能性が強まります。

程度の差はありますが、誰しもが「人からどのように思われているのだろう」と不安になった経験があると思います。

そうした不安は「社交不安」と呼ばれるもので、人間が持つ環境に対する適応システムの過程で生まれます。

そして社交不安によって行動が著しく制限され、さらには不安の対象があらゆる対人場面や機会で引き起こされてしまい、日常生活に支障をきたしているような場合、可能性として社交不安障害が考えられます。

社交不安障害に関して言えば、その症状を病気と捉える人もいれば、社交不安の状態を呈したひとつの現象として捉え、個性の一部と見なす人もいて、見解の相違があるものの、それにより人生の質が著しく低下しているのであれば、適切な治療介入が求められます。

周囲からは「気にしすぎ」、「気持ちの問題」と軽く考えられがちですが、社交不安そのもののメカニズムを考えた場合、そのような言葉をかけるだけでは何も解決せず、場合によっては症状をより強めてしまう可能性が十分にあります。

社交不安の背景にあるものを理解して、周囲の人たちが正しい対応をとって頂けると、当事者が抱えている辛さを和らげられるのではないでしょうか。

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